近年、多くの教育現場で導入されている「ICT教育」は、子どもたちが情報処理能力やIT技術を身につけるための教育手法として注目されています。ITスキルの習得が当たり前となるなかで、今後はより高度な技術活用力が求められるでしょう。
本記事では、ICT教育の概要やメリット・デメリットをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
ICT教育とは?
ICTは「Information and Communication Technology」の略称で、情報通信技術を指します。
ICT教育の目的は、子どもたちが情報通信技術を活用する力を伸ばすことです。デジタルな情報を処理する能力を育み、情報を見分けたり比較したりする素質を養うことを目指しています。
文部科学省も「ICT環境は教育現場において不可欠」との見解を示し、これからの人材育成に重要な教育と位置づけています。
実際のICT教育では、パソコンやタブレットなどの電子機器を使って基本的な操作技能を身につけるなどの教育を行っています。
ICT教育が注目されている背景
近年、ICTを用いた教育が注目されているのには3つの理由があります。ICT教育の背景を読み解き、教育の必要性について理解を深めていきましょう。
■GIGAスクール構想を実現するため
ICT教育の注目度が高まっている背景の一つに、GIGAスクール構想があります。
GIGAスクール構想は、2019年に文部科学省が提唱した取り組みです。日本の将来像として、現実空間と仮想空間の情報やスキルをより多くの人が等しく備え、活用する社会を目指しています。
通称「Society5.0」とも呼ばれ、技術を身につけた国民がより多くの社会問題を解決し、経済発展に貢献する未来を目標としています。そのために、これからの未来を担う子どもにICT教育が必要不可欠です。
その最初のステップとして、1人1台のパソコンやタブレット端末を児童生徒に配布することから始めています。ICTを使った学習や情報発信に慣れさせることで、技術を活用する力を育成しています。
■新型コロナウイルス感染症拡大による影響のため
ICT教育の急速な普及は、2020年初頭からの世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大も大きな要因となっています。
同年3月には全国の学校が一斉に休校を余儀なくされ、その後も感染拡大により臨時休校の可能性が常に存在しました。
こうした状況において、子どもたちがリスクを最小限に抑えながら学習を継続する方法として、オンライン授業の需要が急増しました。
当初は2023年度を目標に進められていたICT教育の推進が前倒しで急速に進展し、全国の教育機関で推し進められました。多くの学校で、児童生徒1人につき1台の端末が配布され、ICTを活用した学習が進められています。
■教師の負担を軽減するため
ICT教育が必要な理由は、教師の負担を軽減するためでもあります。教育現場での教師の役割は授業やテストの準備から確認作業など多岐に渡り、業務は多忙を極めます。
しかしICT教育を導入すれば、情報共有が容易になるため印刷物や配布物を減らすことが可能です。ほかの業務や授業の準備に時間や手間を割けるようになるため、より効率的な教育が実現できるかもしれません。
教師の担い手も減少しているなかで、教師の業務をいかに効率化していくかは重要になってくるでしょう。
【最新版】ICT教育の現状
前倒しで進められたICT教育ですが、現時点で現場はどのような現状なのでしょうか。現在のICT教育の現状を解説します。
■パソコン1台当たりの児童生徒数は1.4人
文部科学省の「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」によると、教育用パソコン1台あたりの児童生徒数は2009年には7.2人だったのに対し、新型コロナウイルス感染症の拡大が影響し、2021年には1.4人まで低下しました。
この結果から、約10年で児童生徒1人につき1台のパソコンが配布されるようになったことが示されています。
子ども一人ひとりがパソコンを使用する状況が当たり前になりつつあると言えるでしょう。
※出典元:文部科学省「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」
■インターネットの接続率はほぼ100%
教育現場のインターネットの接続率をみて見ると、2021年3月1日時点では98.2%と、ほぼ100%の接続率であることがわかっています。
2009年の60.5%と比べると、接続率は30%以上も向上しており、教育現場におけるインターネットの重要性と必要性が増していることがうかがえます。
※出典元:文部科学省「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」
■大型掲示装置整備率は約70%
普通教室における大型掲示装置(プロジェクター、デジタルテレビ、電子黒板など)の整備率は2021年3月1日時点で70.3%でした。2009年は3.5%だったため、およそ10年で70%近く上昇しています。
新型コロナウイルスの流行後、ICT教育の推進が急速に進んでおり、今後もICT教育の整備率は増加すると予想されています。
※出典元:文部科学省「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」
ICT教育を取り入れるメリット
ICT教育を取り入れるメリットを紹介します。
■授業を効率化できる
従来の授業では教師が黒板に内容を書き、生徒がそれを書き写す形式で進んでいました。
一方、ICT教育では、電子黒板やコンピュータ、タブレットを使用し、教師は要点をまとめた内容を事前に作成し、生徒の端末に送信できます。その結果、板書の時間が不要になり、内容の共有がスムーズに行えるようになります。
加えて、プリントを印刷する手間や時間も節約できます。板書やプリント配布の手間がなくなれば、より多くの時間を授業の解説に充てられます。
また、生徒も書き写すことに集中せず、教師の説明に注力できるため、授業内容をより理解しやすくなるでしょう。
■教師の働き方改革につながる
従来の授業では、教師が都度プリントを作成し、印刷・配布することが一般的でした。しかし、ICT教育を取り入れることで、すべての資料をデジタル媒体でやり取りできるようになり、プリントは作成したデータを生徒の端末に送るだけで済みます。
また、プリントだけでなく、生徒の出席管理や健康チェックも行えます。さまざまな業務が効率化されるため、教師の働き方改革にも寄与するでしょう。
■生徒のモチベーションが向上する
ICT教育では、高品質の画像や動画などを使えるため、生徒の関心を引きやすくモチベーション向上につながります。
従来の授業では、印刷物が主な資料で単調になりがちでした。しかし、ICT教育ではデジタルな素材を使うことで生徒の興味を引く授業が可能です。
現在の子どもたちはデジタルネイティブであり、パソコンやタブレットを日常的に利用しています。子どもたちが使い慣れたツールのため、学習に活用しやすく、自発的な学習への参加も促進されるでしょう。
■安定した質の授業を実現できる
ICT教育では、教師同士が授業内容を共有することが容易になります。授業進行や資料の共有、申し送りなどもすべて端末を通して行えます。
教師同士の情報共有は、教育現場において必須です。とはいえ教師は業務に追われがちで、長時間共有する時間も取りにくいことも少なくありません。しかしICT教育が情報共有を容易にすることで、授業品質の安定化や生徒のサポート力の向上などが期待できます。
教育現場でICT教育を取り入れるデメリット
教育現場でICT教育を取り入れることは、これからのデジタル社会を生きる子どもたちに大きなメリットがあります。一方でデメリットもあり、導入に際しては留意しておく必要があります。
■導入コストやランニングコストがかかる
ICT教育を導入するには、機器を揃えるために導入コストがかかります。具体的には電子黒板や教師・生徒用のパソコンやタブレット、ICT教育向けのソフトなどです。
また、保守費用や修理・メンテナンス費などのランニングコストがかかります。
教育現場の大きさや規模によって異なりますが、総じてそれなりの費用がかかることが予想されます。
■ITリテラシーに格差がある
ICT教育を実施する側の教師のITリテラシー格差がある点も懸念されています。IT機器に不慣れな教師にとって、導入は戸惑いや負担をもたらすことがあります。また、新しいアイテムに慣れるまでの時間や、ほかの詳しい教師への依存も懸念されます。
リテラシーの差異を解消するために、マニュアルの作成やIT機器のトレーニングなど、個々の教師をサポートする施策を同時に用意することが重要です。
■トラブルにより中断するおそれがある
IT機器を使用したときに避けられないのが、予期せぬトラブルです。
ソフトがうまく動かない、端末がつながらないといったトラブルが起きる可能性があります。すぐに復旧できない場合は、授業の継続が難しいケースも考えられるでしょう。
トラブルが発生した際の対処方法をマニュアルに記載するだけでなく、完全に解決できない場合に備えて、アナログな手段での対応も考慮しておくことが大切です。
ICT教育を活用できる学習場面
ICT教育を活用できる場面はどのようなシーンなのでしょうか。ここからは実際の学習場面をご紹介します。
■一斉学習
日本では一般的な授業スタイルで、一人の教師が筆記や解説をしながら全員の生徒に授業を進める方法です。
一斉学習にICT教育を取り入れることで、高解像度の動画や画像を使用できます。拡大・縮小はもちろん、画面の書き込みも行えるため、生徒の理解を促進できます。
生徒の興味を引きつけるためには、絵や図表を使うことが効果的です。
■個別学習
ICT教育は個々の生徒の能力にあわせた個別学習にも活用できます。生徒一人ひとりが課題などを調べてまとめ、学習の結果を制作・発表する個別学習は、自主的に取り組んでもらう部分が多いと言えます。
IT機器を導入することで、学習・調査・制作などの学習過程で使用する媒体を統一できます。媒体が統一されることで、学習の各段階で情報をスムーズに移動させることができ、生徒がより取り組みやすくなるでしょう。
■協働学習
生徒同士で取り組む協働学習にもICT教育は活かせます。協働学習では、生徒同士が意見交換をする、共同で発表や制作するなど、複数人で学び合います。複数人で情報を共有するため、膨大な資料や意見に目を通しまとめなければなりません。
ICT教育を導入することで、電子黒板やタブレットを通し、個々の意見や調査結果の共有が簡単になります。まとめる作業もしやすく、また共有したい情報もデジタル媒体から直接引用できるため、伝えたいイメージを正確に捉えやすくなるでしょう。
円滑な伝達により生徒は積極的に発信しやすくなり、逆に他の生徒の意見にも耳を傾ける姿勢を学びやすくなります。
ICT教育に活用できるおすすめのプロジェクターと電子黒板
ICT教育に活用できる代表的なアイテムは、プロジェクターと電子黒板です。ここからはICT教育に活用できるおすすめのアイテムをご紹介します。
■プロジェクター
当社では、常設タイプ・スタンダードタイプ・超短投写タイプと3種類のプロジェクターを展開しています。
いずれのプロジェクターも高画質・高彩度にこだわっているのが特徴です。
教育現場の教室では、狭いスペースでの大画面投写に対応した超短投写タイプがおすすめです。電子ペンを使い、スクリーンに映した映像の上に書き込みができます。
またほかのPCやタブレットなどとワイヤレスでミラーリングも可能なため、教育現場で活躍します。
〈アイリスオーヤマのプロジェクターの詳細はこちら〉
■電子黒板
教育現場向けの電子黒板も展開しています。電子黒板は、プロジェクターと比較すると画面はやや小さくなるものの、より高画質での描写が可能です。
また、電子黒板は特に「黒板」としての性能に特化しており、次のような強みもあります。
- 画面への直感的な書き込み
- 多彩なペンでの強調や表現
- 図形ツールやメジャーによる書き込み
- 複数人での書き込み
加えて、教育現場向けとしてスクリーンショット機能やタイマー機能も実装しています。
電子黒板は生徒向けに導入したタブレットとリンクさせれば、無線通信で生徒の発表や意見も簡単に投影可能です。生徒と教師の情報の共有も双方向でスムーズに行うことができます。
なお、当社では65型と75型の2サイズを展開中です。教室の規模にあわせて、適切なサイズをお選びください。
〈アイリスオーヤマの電子黒板の詳細はこちら〉
ICT教育を通じてデジタル社会に適応した教育を提供
デジタル社会を生きる子どもたちにとって、情報通信技術(ICT)は不可欠なスキルとなります。今後ますますICT教育の普及が進み、学校や教育現場ではIT機器の活用が一般的になるでしょう。
習得し使いこなすためには、教育現場での学習が重要ですが、その方法は慎重に検討しなければなりません。実際の現場に適した導入を進めることが重要です。