【訪問介護事業者必見】アルコールチェックの義務化の概要と準備すべきことを解説

2024.01.16
職場環境改善

道路交通法の改正により、対象事業者は2023年12月からアルコールチェッカーによるアルコールチェックが義務化されました。

対象事業者かどうかは保有する車両の数によって決まるため、これから台数を増やす予定がある場合は対象事業者に該当するかの確認が必要です。

本記事では、アルコールチェックの義務化の概要や義務化に向けてすべきことを解説します。

アルコールチェッカーをご検討の方へ
◆この資料でわかること
・アルコールチェック義務化について
・義務化対策状況のアンケート調査結果
・アルコールチェッカー導入のポイント4選
・アルコールチェックのクラウド管理について

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アルコールチェックの義務化の概要

まずは、アルコールチェック義務化の概要を確認しておきましょう。アルコールチェック義務化では、対象事業者やチェック方法などが指定されています。

■対象事業者

2011年5月1日から、一部の事業者にアルコールチェックが義務化されていました。対象は主に「緑ナンバー」の車両を保有する運送業や旅客運送業などの事業者でした。

その後、道路交通法が改正され、2022年4月以降は、白ナンバーの車両を一定台数以上保有する事業者もアルコールチェックの対象となりました。アルコールチェックの対象となった事業者の要件は、次のとおりです。

  • 乗車定員11人以上の車両を1台以上保有する事業者
  • その他の車両を5台以上保有する事業者

■対象事業所

アルコールチェック義務化の対象事業所は、その事業所が保有する車両の数によって判断されます。一つの事業所で白ナンバーの車両を一定台数以上保有する場合は、義務化の対象です。

複数の訪問介護事業所や訪問看護ステーションを展開している医療法人は、各事業所ごとに規定台数以上の車両を所有していない場合、義務化の対象外になります。

ただし、従業員が業務に使用する自家用車は「白ナンバーのその他の車両」として数えられるため、注意が必要です。

■アルコールチェックの方法

道路交通法では、アルコールチェックの方法が指定されています。2023年12月以降はアルコールチェッカーによるアルコールチェックが義務づけられるため、保有していない場合は準備が必要です。

2022年4月以降

アルコールチェックは、原則として対面での実施が必要です。2022年4月以降に義務化されたアルコールチェックの方法は、次のとおりです。

  • 運転前後のドライバーの酒気帯びの有無について目視等で確認すること
  • 確認内容を記録し、1年間保存すること

2022年4月以降、白ナンバーの車両を一定台数以上保有する事業者に対しては「目視等」での確認が義務づけられました。ドライバーの顔色や呼気の臭い、応答の声の調子で確認します。

2023年12月以降

2023年12月以降に義務化されたアルコールチェックの方法は、次のとおりです。

  • 運転前後のドライバーの酒気帯びの有無をアルコールチェッカーを使用して確認すること
  • アルコールチェッカーは常時有効な状態で保持すること

緑ナンバーの車両を保有する事業者に対しては、これまでもアルコールチェッカーによるアルコールチェックが義務づけられていました。2023年12月以降は、アルコールチェッカーによるアルコールチェックの範囲がすべての対象事業者に拡大されます。

また、アルコールチェッカーは、国家公安委員会が定めた機能を有するものを使用し、常時有効な状態で保持しておく必要があります。

アルコールチェック義務に違反した場合の罰則

対象事業者は、国家公安委員会が定めた機能を有するアルコールチェッカーを使用し、指定された方法でアルコールチェックを実施する必要があります。義務に違反した場合はドライバーだけでなく、車両提供者や同乗者などにも罰則が科せられます。

■ドライバーに対する罰則

ドライバーが酒気帯び運転をした場合の罰則は、酒気帯びの状況に応じて異なります。

【呼気中のアルコール濃度が0.15mg/l以上0.25mg/l未満の酒気帯び運転の場合】

  • 行政処分:13点の違反点数+90日間の免許停止
  • 刑事処分:3年以下の懲役または50万円以下の罰金

【呼気中のアルコール濃度が0.25mg/l以上の酒気帯び運転の場合】

  • 行政処分:25点の違反点数+欠格期間90日を含む免許停止
  • 刑事処分:3年以下の懲役または50万円以下の罰金

【呼気中アルコール濃度に関わらず客観的に酒酔いと見なされた場合】

  • 行政処分:35点の違反点数+欠格期間3年を含む免許停止
  • 刑事処分:5年以下の懲役または100万円以下の罰金

第三者から見て明らかに酒酔い状態だと判断できる場合は、呼気中のアルコール濃度に関わらず、酒酔い運転の場合よりも重い行政処分や刑事処分が下されます。

■ドライバー以外に対する罰則

ドライバーの酒気帯び運転が発覚した場合、車両提供者や酒類提供者、同乗者にも罰則が科せられます。

車両提供者に対する罰則

車両提供者に対する罰則は、ドライバーの酒気帯びの状況によって異なります。

【呼気中のアルコール濃度が0.15mg/l以上の酒気帯び運転の場合】

  • 刑事処分:3年以下の懲役または50万円以下の罰金

【呼気中アルコール濃度に関わらず客観的に酒酔いと見なされた場合】

  • 刑事処分:5年以下の懲役または100万円以下の罰金

訪問介護事業所や訪問看護ステーションのなかには、従業員の自家用車を業務に使用しているというケースもあるでしょう。

従業員がほかの従業員から借りた自家用車で酒気帯び運転をした場合、車両を貸した従業員も刑事処分の対象になるので注意が必要です。

酒類提供者または同乗者に対する罰則

酒類提供者や同乗者に対する罰則は、ドライバーの酒気帯びの状況によって異なります。

【呼気中のアルコール濃度が0.15mg/l以上の酒気帯び運転の場合】

  • 刑事処分:2年以下の懲役または30万円以下の罰金

【呼気中アルコール濃度に関わらず客観的に酒酔いと見なされた場合】

  • 刑事処分:3年以下の懲役または50万円以下の罰金

訪問介護や訪問看護は、複数のスタッフで利用者の自宅を訪問するケースも少なくありません。同乗者も刑事処分の対象になるため、複数のスタッフが同行する場合は、ドライバーの酒気帯びの有無を確認することが大切です。

安全運転管理者に対する罰則

アルコールチェックの対象事業者は、安全運転管理者を選任する必要があります。現時点(※2023年11月時点)で、アルコールチェックを怠った場合の安全運転管理者に対する直接的な罰則は設けられていません。

ただし、アルコールチェックを怠った事実が発覚すると、国家公安委員会から安全運転管理者に解任命令が下されることがあります。解任命令が下された場合、一定期間内に新たな安全運転管理者を選任しなければなりません。

解任命令に従わず、新たな安全運転管理者を選任しなかった場合は、解任命令違反と選任義務違反と見なされ、それぞれ50万円以下の罰金が科せられます。

アルコールチェックの義務化に向けてすべきこと

事業所の合併や保有する車両の増加などにより、今後アルコールチェックの対象事業者になる場合は、義務化に向けた準備が必要です。

■安全運転管理者の選任

アルコールチェックは、安全運転管理者が実施する必要があります。安全運転管理者は、アルコールチェックの対象事業所ごとの選任が義務づけられています。また、車両を20台以上保有する事業所は、副安全運転管理者の選任も必要です。

事業所で安全運転管理者を選任したら、15日以内に管轄の警察署に届け出なければなりません。

もし対象事業所でありながら、安全運転管理者を選任しなかった場合は、選任義務違反として50万円以下の罰金が科せられます。また、選任したにも関わらず未届けの場合は、選任解任届出義務違反として5万円以下の罰金が科せられます。

■アルコールチェッカーの準備

2023年12月からは、すべての対象事業者でアルコールチェッカーによるアルコールチェックが義務づけられるため、アルコールチェッカーの準備が必要です。

アルコールチェッカーは、次の国家公安委員会が定めた基準を満たすものでなければなりません。

  • 呼気中のアルコールを検知すること
  • 呼気中のアルコールの有無や濃度を警告音・警告灯・数値等で示す機能を有していること

上記の要件を満たしていれば、機能の特性は問わないとされています。

また、アルコールチェッカーはいつでもアルコールチェックできるよう、常時有効な状態で保持する必要があります。

「常時有効な状態で保持」とは、正常に作動して故障がない状態で保持することです。故障するとアルコールチェックが実施できなくなるため、定期的に状態を確認するようにしましょう。

■アルコールチェック体制の整備

道路交通法の改正により、2022年4月以降はアルコールチェックの結果を記録し、1年間保存することが義務づけられました。保存方法は紙媒体のほか、電子媒体で管理しても問題ありません。

なお、国家公安委員会からデータを求められたときは、速やかに提出する必要があるため、記録は常に整理しておきましょう。

記録を義務づけられている項目は次のとおりです。

  • 確認者氏名
  • 運転者氏名
  • 自動車登録番号
  • 確認日時
  • 確認方法
  • 酒気帯びの有無
  • 指示事項
  • その他必要な事項

記録簿のテンプレートは、国土交通省の公式ウェブサイトで入手できます。

※参考:国土交通省「アルコール検査記録簿(モデル様式)」

安全運転管理者・副安全運転管理者の資格要件

アルコールチェックの対象事業所は、安全運転管理者や副安全運転管理者の選任が必要です。ただし、管理者は誰でも選任できるわけではありません。管理者ごとに資格要件があるため、事前に確認しておくようにしましょう。

■安全運転管理者の資格要件

安全運転管理者は、次の要件を満たす従業員を選任する必要があります。

  • 年齢が20歳以上であること
  • 運転管理の実務経験が2年以上あること
  • 実務経験が2年未満の場合は、国家公安委員会の認定を受けていること

なお、車両を20台以上保有し、副安全運転管理者を選任する場合は、安全運転管理者の年齢要件が30歳以上になります。

運転管理の実務経験が2年以上ない従業員でも、同等以上の能力を有すると国家公安委員会から認定されると、要件を満たすことが可能です。

ただし、年齢と実務経験の要件を満たしていても、過去2年以内に次の違反行為をした従業員は、安全運転管理者として選任できません。

  • 無免許運転
  • 酒酔い運転
  • 酒気帯び運転
  • 麻薬等運転無免許運転に関わった車両の提供
  • 無免許運転の車両への同乗
  • 酒酔い・酒気帯び運転に関わった車両の提供および酒類の提供
  • 酒酔い・酒気帯び運転の車両への同乗
  • 酒酔い・酒気帯び運転、無免許運転、過労運転、放置駐車違反等の下命・容認
  • 自動車使用制限命令違反
  • 妨害運転

安全運転管理者を選任する際には、上記のような違反行為がないかを確認するようにしましょう。

■副安全運転管理者の資格要件

副安全運転管理者は、次の要件を満たす従業員を選任する必要があります。

  • 運転管理の実務経験が1年以上であること
  • 運転の経験が3年以上あること
  • 経験年数が上記を満たしていない場合は、国家公安委員会の認定を受けていること

運転管理の実務経験が3年以上ない従業員は、同等以上の能力を有すると国家公安委員会から認定を受けることで、要件を満たすことが可能です。

また安全運転管理者と同様に、過去2年以内に酒酔い運転や最高速度違反などを受けている従業員は、副安全運転管理者として選任できません。

おすすめのアルコールチェッカー

最後に、おすすめのアルコールチェッカーを紹介します。ここで紹介するアルコールチェッカーは、国家公安委員会が定める基準を満たしています。

■携帯型アルコールチェッカー

携帯型アルコールチェッカーは、持ち運びに便利なコンパクトサイズのアルコールチェッカーです。

訪問介護や訪問看護の従業員が自宅から直接訪問先に出向くケースもありますが、このようなケースの場合、事業所で対面によるアルコールチェックが難しいのが現状です。
しかし、携帯型のアルコールチェッカーを従業員に携行させておくと、直行直帰の場合でもアルコールチェックを行うことができます。
携帯型アルコールチェッカーは、1台で約1,000回の測定が可能です。吹きかけるだけで測定できるため、ストローやマウスピースが不要です。

また、クラウドサービス「アルピット」と連携すれば記録を自動保存できるため、効率的なアルコールチェック体制を整備できます。

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■顔認証据置型アルコールチェッカー

顔認証据置型アルコールチェッカーは、訪問介護事業所や訪問看護ステーションに設置して使用するタイプのアルコールチェッカーです。

訪問看護の現場では、利用者の急変によって緊急訪問が必要なケースがあります。顔認証据置型アルコールチェッカーは約20秒でアルコールチェックが完了するため、緊急訪問が必要な場合でも手間がかかりません。

センサーには、半導体式センサーよりも精度が高い電気化学式センサーを採用しています。顔認証を実施する際には、本人確認と同時に体温測定も可能です。

法令を遵守して安全に訪問介護や訪問看護を実施しよう

白ナンバーの車両を一定台数以上保有する事業者は、2022年4月からアルコールチェックの対象になりました。2023年12月からは、アルコールチェッカーによるアルコールチェックが義務化されました。

従業員が飲酒運転をすると人手不足になるだけでなく、利用者からの信頼を損なうおそれがあるため、運転前後には必ずアルコールチェックを実施しましょう。