資源エネルギー庁は、家庭や企業に節電を呼びかけています。また、最近は燃料価格の上昇が続くなかで、電気代も高騰しています。このような背景から、節電対策の必要性を感じている病院や関係者も増えているのではないでしょうか。
本記事では、病院の消費電力に関する現状や具体的な節電対策などを解説します。併せて、病院の消費電力が多い理由や節電対策に役立つ商品も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
病院の消費電力に関する現状
最初に、病院の消費電力に関する現状を把握しておきましょう。消費電力の現状を把握することで、具体的にどのような節電対策を講じれば良いかが見えやすくなります。
■他業種に比べて消費電力量が多い
病院のエネルギー原単位は、他業種に比べて消費電力量が多い傾向にあるのが現状です。ホテルや旅館、飲食店よりも高い数値となっています。
エネルギー原単位とは、一定期間のエネルギー消費量を同じ期間の活動量で割った値です。また、病院では夜間のエネルギー消費量も比較的高い傾向があります。
■空調と照明が約70%を占めている
医療機関の消費電力の内訳を見ると、空調が約35%、照明が約33%と大きな割合を占めています。
電力消費量の多い空調と照明に節電対策を講じれば、高い節電効果が期待できるでしょう。
■部門による消費電力の差が大きい
厚生労働省の「病院における省エネルギー実施要領」によると、病院の消費電力は部門によって差が大きいことがわかっています。
部門 | エネルギー消費量比率 |
---|---|
病棟 | 34% |
中央診療部門 | 29% |
外来 | 11% |
供給部門 | 8% |
管理部門 | 8% |
厨房 | 5% |
共用部分 | 5% |
部門別では、病棟のエネルギー消費量比率が最も高い34%でした。次に多いのは、すべての診療に欠かせない診断や治療、検査などの診療支援を行う中央診療部門の29%です。
病院の消費電力が多い理由
病院の消費電力が多い背景には、病院ならではの理由が大きく関係しています。
■24時間稼働しているため
病院の消費電力がほかの業種よりも高い理由の一つは、24時間稼働していることです。
救急指定病院や地域の基幹病院などは、いつでも患者を受け入れる準備を整えておく必要があります。入院患者のいる病院は、夜間も運営しています。
また、夜間の診療に対応していない病院でも、医薬品や品質管理のために、設備や各種機器を24時間稼働させる必要があるでしょう。
このように多くの病院は24時間稼働しているため、常に電力が使用されている状態です。
■常に稼働が必要な設備や医療機器が多いため
病院内には、患者の管理や医療に必要な多くの設備があります。たとえば、集中治療室(ICU)では生体情報モニター、人工呼吸器、除細動器などの医療機器が重要です。これらの機器は患者の命に直結するため、常に稼働させる必要があります。
また、救急指定病院では、いつでも救急患者を受け入れられるように、医療機器を待機させなければなりません。
病院はこのような医療機器を含む多くの設備を必要とするため、ほかの業種と比較して消費電力が多くなる傾向があります。
【空調編】病院でできる具体的な節電対策
病院で消費電力が多いのは、空調と照明です。空調の場合、定期的なフィルター掃除や使い方の見直しなどで節電対策をすることが可能です。
■定期的にクリーニングする
病院では空調を24時間稼働させているケースが多く、フィルターが汚れやすい側面があります。空調のフィルターは、定期的にクリーニングするようにしましょう。空調を使用し続けるとフィルターにほこりが付着し、目詰まりしやすくなります。
フィルターが目詰まりしていたり、内部コイルの汚れが固まっていたりする場合は、設定温度に達するまでに時間がかかります。その結果、余分な電力を消費するため、節電とはかけ離れることになるでしょう。
フィルター掃除の頻度は、2週間に1回が目安です。業者に清掃を依頼している場合は、定期的にフィルターを掃除してもらうよう伝えておきましょう。
■設定温度を見直す
病院の節電対策をする際には、空調の設定温度を見直しましょう。環境庁が推奨している空調の設定温度は、夏が28℃、冬が20℃です。熱源設備で消費されるエネルギーは冷暖房温度を1℃緩和すると、約10%削減できると考えられています。
ただし、病院は医療従事者だけでなく、患者も過ごす場所です。温度の感じ方は人によって異なるため、同じ設定温度でも暑く感じる人もいれば、寒く感じる人もいます。
空調の設定温度を見直す際には、患者の理解を得ながら可能な限り推奨温度に近づけることが重要です。病院のなかには、院内での張り紙や公式サイトでの掲載により、患者に理解を求めているところもあります。
■空調制御システムを導入する
空調の節電対策を実施する際は、空調制御システムの導入も選択肢の一つです。
空調制御システムとは、空調の運転抑制を自動で行い、消費電力を抑えるシステムです。病院に導入すると、すべての空調を一元管理できるため、温度設定やスケジュール管理がしやすくなるでしょう。
また、空調制御システムは1台で空調の管理が行えるため、院内すべての空調を省エネ効果の高いものに買い替えるよりも費用を抑えられます。
【照明編】病院でできる具体的な節電対策
照明は、病院の消費電力の多くを占めています。照明機器の切り替えやクリーニングなどにより、節電することも可能です。
■LED照明に切り替える
病院の消費電力の大部分を照明が占めるのは、長時間稼働しているためです。病院の照明をLEDに切り替えることで、節電効果が期待できます。
LEDは少ない電力で明るさを維持できるため、節電につながります。さらに、白熱電球や蛍光灯よりも寿命が長く、ランニングコストを削減することも可能です。
■不要な場所の照明はこまめに消す
院内には、常に照明を使用しない場所があります。
使用しない場所の照明をこまめに消すことも、節電対策の一つです。たとえば休憩室などは使用後に照明を消すよう、従業員に促しましょう。
また、日中は、自然光を積極的に活用することも節電に貢献します。自然光が入る部屋は、できる限り照明を使用しないようにすると、節電効果が期待できます。
また、人感センサー付きの照明を導入することも効果的です。使用頻度が少ない場所に人感センサー付きの照明を設置すると、センサーが人の出入りを感知し、照明を自動で点灯・消灯するため、無駄な電力消費を防げます。
さらに、無線制御システムの導入し、照明環境を最適化すれば、快適さを損なわずに大幅な省エネが可能です。当社の無線制御システム「LiCONEX(ライコネックス)」は、パソコンやタブレットなどのWi-Fi対応の端末から、最大50,000台の照明を遠隔で管理・制御できます。棟や病室が多い病院におすすめです。
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■照明器具をクリーニングする
病院に設置されている照明器具は、定期的にクリーニングすると節電効果を高めることが可能です。
電球や蛍光灯の表面には汚れが付着しやすく、掃除しなければ適切な明るさを維持できない可能性があります。照明器具のクリーニングは適切な明るさに保ち、節電効果が期待できます。
クリーニングの頻度は、年に1~2回が目安です。特に患者の目につきやすい場所の照明は、不潔感を与えるおそれがあるため、こまめなクリーニングが必要です。
天井のような手が届きにくい場所は、従業員によるクリーニングが難しいため、業者への依頼を検討しましょう。
【その他】病院でできる具体的な節電対策
空調や照明以外にもさまざまな方法で節電対策をし、効果を高めましょう。
■ボイラーの運用を見直す
ボイラーは燃料を使って水を沸騰させ、お湯や蒸気を発生させる仕組みで、燃料コストの増加につながります。
ボイラーの効率化や適正化には、ボイラーの運用方法や設置状況の見直しが必要です。たとえば、蒸気の消費量に対してボイラーの台数が多すぎると、頻繁に動作が停止し、効率が低下します。そのため、院内の蒸気消費量に適した台数かどうかを考慮することが重要です。
さらに、ボイラーの部品の故障や、蒸気が漏れていると、エネルギーの無駄が生じます。ボイラーの定期的な点検を行い、正常に機能しているかを確認することも大切です。
■太陽光発電システムを導入する
節電対策の効果を高めるためには、自家消費型太陽光発電システムを導入するのも一つの手です。自家消費型太陽光発電システムとは、太陽光を活用し、院内で生成した電力を自己消費できる仕組みです。
病院に自家消費型太陽光発電システムを導入すると、電力会社から購入する電力量を減らせるため、電気代の節約が期待できます。発電した電力が足りない場合は、これまで通り電力会社から供給されるため、電気が不安定になる心配はありません。
また、自家消費型太陽光発電システムは、災害時のBCP対策にも役立ちます。病院は大規模災害で停電が発生した場合でも、医療機器を稼働させる必要があります。自家消費型太陽光発電システムがあれば電力を確保できるため、万が一のときでも安心です。
■OA機器の省エネモードを活用する
OA機器は、使用していない状態でも待機電力を消費しています。電源をオフにする、省エネモードを利用するなどの工夫により、節電効果が期待できます。
節電タップを導入すれば、複数のOA機器の電源を一括で切り替えられ、手間を減らすことも可能です。
資源エネルギー庁のデータによると、病院におけるOA機器の消費電力は4%であり、空調や照明と比べて大きな割合ではありません。しかし、これらの小さな改善が積み重なることで、大きな節電効果を生む可能性があります。
※出典元:資源エネルギー庁「節電アクション」
病院の節電対策に役立つ商品と事例を紹介
最後に、病院の節電対策に役立つ当社の商品と事例を紹介します。
■【LED照明への切り替え】一般財団法人神奈川県警友会 けいゆう病院 様
※参考:https://www.irisohyama.co.jp/led/houjin/case-studies/87
■【無線調光照明システムに対応した照明の導入】
社会福祉法人 新潟市社会事業協会 信楽園病院 様
社会福祉法人 新潟市社会事業協会 信楽園病院 様では、照明に当社のラインルクス(LED照明)を導入しています。無線制御システム「LiCONEX(ライコネックス)」の調光により消費電力を調整し、夏や冬の電力ひっ迫時には照度を抑えて節電が可能です。
また、LiCONEXは最大50,000台の照明をWi-Fi対応端末から遠隔で管理・制御できる無線制御システムで、照明を1台ごとや、病室ごと、フロアごとにグループ管理できます。
消灯時間を設定しておけば自動で消灯するため、医療従事者の手間を省くことが可能です。
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消費電力の多い空調と照明の節電対策から始めよう
病院の消費電力がほかの業種に比べて高い理由は、24時間体制での運用や必要不可欠な医療機器の連続稼働などがあげられます。
消費電力の大部分は、空調と照明です。空調と照明に節電対策を講じれば、高い節電効果が期待できるでしょう。
本記事で紹介した具体的な節電対策を参考に、病院内の医療スタッフや従業員に周知して、大幅な節電効果を実現しましょう。