食品工場でのカビ対策│カビ発生が企業に及ぼす影響や予防策を徹底解説

2024.03.12
職場環境改善

食品工場でカビが発生すると、食品事故につながるおそれがあり、衛生管理を徹底する必要があります。しかし、衛生管理を徹底していても、カビが発生するケースがあります。

カビの発生を防ぐには、原因や発生しやすい場所を把握しておくことが大切です。

本記事では、食品工場でカビが発生する原因や発生しやすい場所などを解説します。食品工場でのカビ発生が企業に及ぼす影響や具体的な対策も紹介するので、自社工場におけるカビ対策に役立ててください。

食品工場はカビが発生しやすい条件がそろっている

カビに悩む食品工場もあるでしょう。その背景には、食品工場ならではの環境が大きく関係しています。

一定の温度・湿度・影響の3条件がそろうと、カビが発生しやすくなるので注意しましょう。カビが発生しやすい条件を紹介します。

■条件1:温度

カビは、高温多湿な環境を好む微生物です。特定の温度や湿度に達すると、どの場所でもカビが発生しやすくなります。

カビが繁殖しやすい温度について、農林水産省と文部科学省の見解は次のとおりです。

  • 農林水産省の「米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン」:20~30℃
  • 文部科学省「カビ対策マニュアル」:25~28℃

※出典元:農林水産省「米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン」

※出典元:文部科学省「カビ対策マニュアル」

両者の見解に若干の違いはあるものの、いずれも20〜30℃でカビが発生しやすいことを示唆しています。

ただし、種類によっては、0~10℃の低温や60℃を超える高温な環境で繁殖できるカビもいるので注意が必要です。

食品工場は常に高温多湿な環境を維持しているため、年間を通してカビが発生しやすいと言えるでしょう。

■条件2:湿度

食品工場では、湿度がカビの繁殖を促している可能性があります。

カビは、湿度が65%を超えると繁殖しやすくなるとされています。湿度が高くなるほど繁殖スピードが上がるため、食品工場では温度だけでなく湿度管理も徹底しなければなりません。

一方でカビは、湿度が65%以下だと繁殖しにくくなると言われています。しかし、これはあくまでもカビが繁殖しにくくなる湿度の目安であり、湿度が65%以下でもカビは生存できます。また、なかには、湿度が低い環境や乾燥している環境で繁殖するカビもいます。

食品工場は水を多く使用するため、カビの繁殖を促進する環境になりやすいと言えるでしょう。カビを防ぐには、湿度管理も重要になります。

■条件3:栄養

カビが繁殖するためには、栄養が必要です。

カビは、さまざまなものを栄養として繁殖しますが、そのなかにはデンプンや糖分も含まれます。デンプンや糖分は食品に頻繁に使用されるため、食品工場はカビが繁殖しやすい環境にあると言えるでしょう。

繁殖を防ぐには、定期的な掃除が欠かせません。

食品工場でのカビ発生が企業に及ぼす影響

工場内でカビが発生すると、従業員や消費者、企業にさまざまな悪影響を及ぼすリスクがあります。カビによる悪影響を防ぐためには、工場内の清掃を徹底し、発生させない対策が必要です。

■食品事故につながるおそれがある

食品工場で製造した製品にカビが混入した場合、異物混入として食品事故につながります。

製品にカビが混入すると消費者からクレームが入り、担当者は対応に追われるでしょう。また、消費者が異物が混入した製品を摂取した場合、食中毒のリスクが懸念されます。

食品事故は、ニュースや新聞で広く報じられるケースがあり、近年はSNSを通じて自社の食品事故が瞬く間に拡散される可能性も考えられます。

■企業イメージが低下する可能性がある

カビによる食品事故が発生すると、企業のイメージに深刻な悪影響が及ぶ可能性が高まります。過去に食品事故を起こした企業では、グループ会社の全工場が操業停止となったケースもありました。

食品事故による影響は、それだけではありません。スーパーマーケットをはじめとする小売店の製品全撤去など、事業運営に多大な影響を及ぼします。

さらに消費者が悪い印象を持つことで購買意欲が低下し、企業の利益が減少する可能性も考えられます。ケースによっては、企業の存続にまで影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

■従業員の健康に影響する

食品工場でカビが発生すると、製品を購入した消費者だけでなく、そこで働く従業員の健康に悪影響を及ぼすリスクもあります。

企業には安全配慮義務があるため、従業員の健康を守らなければなりません。

カビの健康被害は、カビ胞子によるアレルギーや真菌感染症などさまざまです。アレルギー体質の従業員は、工場内でのカビの発生により、症状がより酷くなる可能性もあります。

アレルギー体質ではない従業員も、カビが発生した工場で働くことで、アレルギーの発症につながるケースがあるかもしれません。

食品工場で働く従業員の健康を守るためにも、企業はカビの発生を防ぎ、快適な労働環境を整備する必要があります。

食品工場でカビが発生しやすい場所

工場内のカビの繁殖を防ぐためには、発生しやすい場所を把握しておくことも大切です。

■原材料の保管庫

食品工場内を徹底的に清掃しても、必ずカビが発生しないとは限りません。カビが原材料に付着して工場内に持ち込まれるケースがあるためです。

特に原材料の保管庫では、カビが増殖するおそれがあるので慎重に管理しなければなりません。一つの食材にカビが付着していると、ほかの食材にも広がる可能性があります。そのため、原材料の保管庫では、温度や湿度の管理を徹底して行うことが重要です。

■水回り

カビは、高温多湿な環境を好む微生物です。食品工場では水を使用するケースが多く、特にシンクや水道の蛇口、排水管はカビが発生しやすいので注意が必要です。

水回りは、一般家庭でもカビが繁殖しやすい場所として知られています。これは湿度が高いだけでなく、食物残渣が付着しやすいためです。

水回りの設備にカビが繁殖すると、食品まで被害が及ぶ可能性があります。シンクや蛇口などはしっかりと洗浄し、清潔に保つよう心がけましょう。

■調理器具・各種機器

食品工場では、器具や機器を通じてカビが増殖する可能性もあります。包丁やまな板、ボウルなどの調理器具は食品に直接触れるため、食物残渣が付着しやすく、徹底的な洗浄や消毒が必要です。

また、冷蔵庫や加工機器などの機器の裏側は見えにくい場所であり、気づかないうちにカビが大量に増殖しているケースもあります。

工場内では、機器の裏側も忘れず清掃しましょう。

■冷蔵庫・冷凍庫

工場内では、原材料や製造した食品などを保管するために冷蔵庫や冷凍庫が設置されています。冷蔵庫や冷凍庫のなかは結露が発生しやすく、カビが繁殖しやすい環境となるので注意しましょう。

特に冷蔵庫や冷凍庫のサイズが大きいほど結露がたまりやすいので、こまめな清掃が必要です。

■天井

水を頻繁に使用する食品工場では、天井にもカビが発生しやすい傾向があります。

暖かい空気は上昇する性質があるため、特に水蒸気が発生する場所では天井付近に湿気が溜まりやすくなるので注意が必要です。

天井にカビが発生すると、その下で作業する従業員や製品にも影響が及ぶおそれがあります。

天井にカビが発生しにくい環境を作るためには、工場内の空気を循環させ、暖かい空気が上に溜まらないような工夫が必要です。

■空調設備

食品工場を含め、空調設備にはカビが発生しやすい傾向にあります。

空調設備を使用し続けると、内部にほこりや水分が溜まりやすくなります。ほこりや水分はカビの栄養になり、増殖を促す可能性があるので注意が必要です。

空調設備の内部でカビが増殖すると、運転時に風とともにカビが放出され、空間全体に広がるおそれがあります。そのため、空調設備の清掃はフィルターやカバーだけでなく、内部も含めて定期的に行う必要があります。

食品工場におけるカビ対策

清掃を徹底していても、工場内ではさまざまな理由でカビが発生する可能性があります。ここからは食品工場でできるカビ対策を紹介するので、ぜひ試してみてください。

■温度と湿度を管理する

食品工場でのカビの繁殖を防ぐためには、カビが繁殖しやすい環境を作らないことが大切です。カビが繁殖しやすいとされる温度と湿度は次のとおりです。

  • 温度:20~30℃
  • 湿度:65%超

カビが繁殖しにくい環境を作るには、工場内の温度と湿度を適切に管理することがポイントです。たとえば、空調機器や除湿器を積極的に活用し、工場内の湿度を一定に保つ方法があります。

ただし、一部のカビは上記の条件でも繁殖するため、完全な防止は難しい場合があります。それでも、温湿度管理を徹底することで、多くのカビの繁殖を抑制できるでしょう。

■清掃を徹底する

カビは、ごみやほこりなどのさまざまなものを栄養分として繁殖します。工場内が不衛生な状態だと、カビの繁殖を促してしまうおそれがあります。カビの繁殖を防ぐには、工場内をこまめに清掃し、良好な衛生状態に維持することが大切です。

特に空調設備の内部はカビが発生しやすく、風とともにカビが広がる可能性があります。空調設備の内部は素人では清掃が難しいため、定期的にエアコンクリーニングを依頼しましょう。

■防カビ剤を使用する

食品工場内でのカビの繫殖を防ぐためには、防カビ剤の使用も効果的です。

防カビ剤は、天井や壁などのカビが発生しやすい場所に塗布します。広い範囲に防カビ剤を使用したい場合は、燻煙剤を焚くのも良いでしょう。

ただし、防カビ剤は天井や壁などの表面をコーティングするだけで、万能ではありません。防カビ効果をより高めるためには、清掃や温度・湿度管理と併せて対策する必要があります。

カビの発生を予防するコツ

食品工場でのカビの発生や繁殖を防ぐには、複数の対策を組み合わせると効果的です。ここからはカビの発生を予防するコツを解説するので、自社でカビ対策を実施する際の参考にしてください。

■空間除菌システムを導入する

カビの予防には、空間除菌システムを導入し、カビが繫殖しにくい環境を整える方法があります。当社のPlasmaGuard PRO™-アイリスエディション-は、空気だけでなく、家具や設備などの表面をまるごと除菌できるシステムです。

システムを導入すると、臭いやカビ菌の発生を抑制でき、カビが好む環境が形成されるのを防げます。臭いに関しては、90%以上の脱臭効果が期待できます。

また、空調ダクトタイプは既存の空調設備に取り付けられるため、買い替えが不要です。

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プラズマガード(PlasmaGuard PRO™)業務用空気清浄機 | 製品情報 | エアソリューション事業 | アイリスオーヤマ
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■HACCPに沿った衛生管理を徹底する

HACCPとは、国際基準の衛生管理の手法です。HACCPに沿った衛生管理を徹底すると、微生物による汚染や異物混入の危害を予測し、問題のある製品の出荷を回避できるため、カビによる食品事故の防止につながります。

2018年6月に食品衛生法の改正法案が可決され、2021年6月からは食品を取り扱う事業者に対してHACCPに沿った衛生管理が完全義務化されました。

カビによる食品事故を防ぐためには、HACCPに沿った衛生管理を徹底することも大切です。

■冷ケース温度測定サービスを利用する

冷蔵庫や冷凍庫内は結露が発生しやすく、これがカビの発生を促進する要因となります。

庫内でのカビの繁殖を防ぐためには、温度や湿度の徹底管理が欠かせません。当社の冷ケース温度測定サービスは、冷ケースの温度管理をサポートするサービスです。

HACCPに対応しており、国際基準に沿った衛生管理が可能です。冷ケースの温度を適正に管理できるため、温度管理不足による菌やカビの発生を予防できます。

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カビ予防には複数の対策を組み合わせることが重要

カビの発生を防ぐためには、カビが好む環境を作らないことが重要です。一定の温度や湿度、栄養分がそろうと、工場内でカビが急増する可能性があります。 清掃はカビ予防の基本ですが、高温多湿な状態が続く食品工場では、徹底的な清掃だけでは不十分です。清掃に加えて温度や湿度の管理、そして防カビ剤の使用など、複数の手段を組み合わせて、カビの発生を防ぎましょう。