2011年5月以来、緑ナンバー車両を所有する事業者はアルコールチェックが義務付けられています。その後、2022年4月からはアルコールチェックの対象事業者が拡大されました。
そして、2023年12月からはすべての対象事業者に対してアルコールチェッカーを使用したアルコールチェックが義務化されました。
アルコールチェック違反に対する罰則について心配している企業や担当者は多いかもしれません。
本記事では、アルコールチェックの違反に対する罰則を、ドライバー・安全運転管理者・その他に分けて解説します。違反しないために企業が備えられることやQ&Aもご紹介するので、ぜひ役立ててください。
アルコールチェック義務化の概要
まずは、アルコールチェックに関する義務化の内容を確認しておきましょう。アルコールチェック自体は、一部の事業者を対象に2011年5月から義務化されていました。その後、道路交通法の改正によって対象事業者の拡大や義務化の内容が変更されています。
■2022年4月から義務化された内容
これまでは、アルコールチェックの適用範囲は一部の事業者に限られていましたが、2022年4月からその対象が広がりました。
また、アルコールチェックは、基本的には対面での確認が必要です。安全運転管理者には、アルコールチェックの方法や内容を記録、保存する義務が課されました。
目視等によるアルコールチェックと内容の保存
2022年4月からは、白ナンバーの車を使用する事業者にもドライバーの運転前後に酒気帯びがないかを目視等で確認することが義務づけられました。
目視等とは、ドライバーの顔色や呼気の臭い、応答の声の調子などを客観的に確認することを指します。
アルコールチェックの内容は、その都度データや日誌などで記録し、1年間保存しなければなりません。
対象事業者の拡大
2022年3月までは、いわゆる緑ナンバーの車両を保有する事業者(=運行管理者を置く事業所)がアルコールチェックの対象でした。しかし、2022年4月からは、乗車定員が11人以上の車両を1台以上保有する事業者や、白ナンバーの車両を5台以上保有する事業者(=安全運転管理者を置く事業所)も対象に含まれています。
対象事業者が拡大された背景には、飲酒運転による交通死亡事故の発生が影響しています。
2021年6月に、千葉県で飲酒運転のトラックに小学生が巻き込まれ、5人が死傷した事故が発生しました。このときに事故を起こした車両は、白ナンバーでした。当時、白ナンバーの車両を運転するドライバーへのアルコールチェックが義務づけられておらず、この事故を機に対象が拡大されたという経緯があります。
■2023年12月から義務化された内容
道路交通法の改正により、2023年12月からはアルコールチェックの方法とアルコールチェッカーの管理方法に関する内容が義務化されました。当初は2022年10月から義務化が予定されていましたが、半導体不足や急激なニーズの高まりなどによって延期されています。
アルコールチェッカー(検知器)によるアルコールチェック
2023年12月からはアルコール検知器を使わないアルコールチェックは違反になります。
現在、アルコール検知器を使っていない場合、義務化が開始される前にアルコールチェッカーを用意する必要があります。
アルコールチェッカーには国家公安委員会が設定した基準があり、これらの基準を満たさない機器は使用できません。
国家公安委員会の基準には、呼気中のアルコール濃度を検知できる機能があることに加え、酒気帯びの有無を警告音や数値などで示す機能も含まれています。
市販されているアルコールチェッカーの多くはこれらの基準を満たしていますが、購入する際に確認することをおすすめします。
アルコールチェッカー(検知器)の管理方法
アルコールチェッカーは、正しく管理しなければなりません。
アルコールチェッカーは消耗品であり、環境によっては故障のリスクがあるため、必要なときに使えない可能性があります。また、メーカーは通常、使用回数の上限を設定しており、これを超えると正確な測定ができなくなることが考えられます。保管環境や使用回数などを考慮して、適切に管理することが重要です。
安全運転管理者の選任が必要とされる営業所を複数持つ場合は、拠点ごとにアルコールチェッカーを常備するよう求められています。ドライバーが遠隔地で勤務し、営業所でのアルコールチェックが難しい場合は、持ち運べるものを携行させなければなりません。
さらに、アルコールチェックを適切なタイミングでおこなうために、アルコールチェッカーの電源が確実に入り、損傷がないことを定期的に確認することも大切です。
【安全運転管理者】アルコールチェックに関する違反となる行為と罰則
安全運転管理者が義務を怠ったり違反したりした場合の罰則を紹介します。
■解任命令違反
解任命令とは、国家公安委員会が安全運転管理者の解任を求めるものです。乗車定員が11人以上の車両を1台以上保有する事業者や、その他の車両を5台以上保有する事業者は、安全運転管理者の選任が必要です。
安全運転管理者が職責を果たしていない場合や違反行為をした場合には、国家公安委員会が解任命令を出すことがあります。解任命令が下されたにも関わらず、従わなかったときには、50万円以下の罰金が科せられます。
従来の罰則は5万円以下の罰金でしたが、道路交通法の改正により、2022年10月からは50万円以下に引き上げられました。
■選任義務違反
一定以上の車両を保有する事業者は、安全運転管理者の選任が必要です。事業者が条件に該当しているにも関わらず、安全運転管理者を選任しなかった場合、50万円以下の罰金が科せられます。
従来は選任義務違反に対して5万円以下の罰金でしたが、道路交通法の改正により、2022年10月からは50万円以下に引き上げられました。
また、安全運転管理者は、従業員なら誰でもよいというわけではありません。一定の要件を満たさなければ安全運転管理者として選任できないため、事前に確認が必要です。
なお、安全運転管理者の詳しい要件については、「アルコールチェックに違反しないために企業が備えられること」でご紹介します。
■選任解任届出義務違反
企業が安全運転管理者を新たに選任する場合は、管轄の国家公安委員会に届け出る必要があります。届け出には期限が設けられており、新たな選任から15日以内です。そのため、安全運転管理者を新たに選任したときには速やかに手続きしなければなりません。
国家公安委員会から解任命令が下されたにも関わらず、新たな安全運転管理者を選任せず、必要な手続きをしなかった場合は、5万円以下の罰金が科せられます。
従来、選任解任届出義務違反に対する罰則は、2万円以下の罰金または科料でした。しかし、道路交通法の改正により、2022年10月からは5万円以下に引き上げられました。
■是正措置命令違反
2022年4月に改正された道路交通法では、安全運転を確保するために次の2項目が追加されました。
- 車両の使用者は安全運転管理者に対し、業務をおこなうための権限を与え、必要な機材を整備しなければならない
- 使用者が規定を遵守していないことで車両の安全な運転が確保されていないと判断したときには、国家公安委員会が是正措置を命ずることができる
国家公安委員会から是正措置命令が下されたにも関わらず、適切な対応をしなかった場合は、50万円以下の罰金が科せられます。
【ドライバー】従業員が飲酒運転した場合の罰則
ドライバーの飲酒運転が発覚すると、当然ながら車両を運転していた従業員に罰則が科せられます。罰則の重さは、酒気帯び運転の場合と酒酔い運転の場合で異なります。
■酒気帯び運転の場合
酒気帯び運転とは、呼気1L当たりに含まれるアルコール濃度が0.15mg以上0.25mg以下または0.25mg以上を指します。ドライバーに科せられる罰則の内容は、次のとおりです。
呼気1L当たりに含まれるアルコール濃度 | 罰則の内容 | |
---|---|---|
刑事処分 | 行政処分 | |
0.15mg以上0.25mg以下 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
|
0.25mg以上 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
|
刑事処分は、測定されたアルコール濃度に関わらず同様です。一方の行政処分は、測定されたアルコール濃度が高いほうが重い罰則が下されます。
■酒酔い運転の場合
酒酔い運転は、客観的に見て明らかに酒に酔った状態での運転を指します。酒気帯び運転とは異なり、酒酔い運転はアルコールチェッカーの測定結果に左右されません。
次のような状態の場合は酒酔い運転と判断されるでしょう。
- 直線状をまっすぐに歩けない
- 明らかに呂律が回っていない
- 質疑に対する受け答えが異常 など
ドライバーの酒酔い運転が発覚した場合、刑事処分として5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。行政処分は違反点数35点の加算に加え、欠格期間3年を含む免許取り消し処分が下されます。
【その他】従業員が飲酒運転した場合の罰則
従業員が飲酒運転した場合、ドライバーへの車両提供者や酒類提供者、同乗者にも罰則が科せられることがあるので注意しましょう。
■ドライバーに車両を提供した場合
飲酒運転したドライバーに車両を提供した場合、酒気帯びの状態に応じた罰職が科せられます。
酒気帯びの状態 | 罰則内容 |
---|---|
酒気帯びの場合 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
酒酔いの場合 | 5年以下の懲役または100万円以下の馬鈞 |
ドライバーが業務中に飲酒運転すると、ほかの従業員にも罰則が科せられる可能性があります。組織全体で飲酒運転を防止する取り組みが必要です。
■ドライバーに酒類を提供または同乗していた場合
飲酒運転したドライバーへの酒類提供者や同じ車両への同乗者に対する罰則は、酒気帯びの状態によって異なります。
酒気帯びの状態 | 酒類提供者に対する罰則内容 | 同じ車両への同乗者に対する罰則内容 |
---|---|---|
酒気帯びの場合 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
酒酔いの場合 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
道路交通法第65条の4では、飲酒運転の車両に同乗してはならないと定めています。ドライバーが飲酒していると知りながら同じ車両に同乗した場合は、同乗罪に問われるので注意が必要です。
※出典元:e-GOV法令検索「道路交通法」
アルコールチェックに違反しないために企業が備えられること
適切にアルコールチェックが実施されなかった場合、従業員の飲酒運転により、ドライバーや安全運転管理者などが罰則を受けるリスクがあります。
アルコールチェッカーを購入したり、安全運転管理者を選任したりして、義務化に備えておきましょう。
■アルコールチェッカー(検知器)を準備する
2023年12月からは目視等ではなく、アルコールチェッカーを用いた確認が義務化されます。現在、目視等で確認をしている場合は、12月までに準備しておきましょう。
当社では、携帯型と据置型のアルコールチェッカーを取り扱っています。
携帯型は、直行直帰の勤務にも対応可能です。据置型には顔認証機能を備えているため、ドライバーの本人確認の際に役立ちます。
さらにクラウドサービスの「ALPiT」を活用すると、記録が義務づけられている項目をクラウド上に管理できるため、運転管理者の負担軽減につながります。
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■チェック項目を確認しておく
アルコールチェックは、ドライバーの運転前後に行うことを求められています。アルコールチェックの内容はデータや日誌などに記載し、1年間保存しなければなりません。記録と保存が必要なチェック項目は、次のとおりです。
- 確認者の名前
- ドライバーの名前
- ドライバーが運転する車両のナンバー
- 確認日時
- 確認方法
- 測定結果の内容
- 指示事項
- その他の必要事項
都道府県警から提出を求められるケースもあるため、すぐに対応できるようチェック項目を確認し、漏れがないように徹底しておきましょう。
アルコールチェックの違反に関するQ&A
最後に、アルコールチェックの違反に関するよくある質問をご紹介します。
■どのようなアルコールチェッカーを選べば良いのか?
2023年12月からの義務化に対応するためには、国家公安委員会が設けた基準を満たすアルコールチェッカーを準備する必要があります。
市場には基準を満たす製品が多く存在しますが、それぞれ機能は異なるため、自社のニーズに合った商品を選択することが大切です。たとえば、アルコール濃度を検知して数値を表示するだけの商品や、測定結果を自動で記録できる商品などがあります。
これからアルコールチェッカーを準備する場合は、当社の商品がおすすめです。
携帯型と据置型を取り扱っており、どちらもクラウド上でデータを保存できる機能を有しています。据置型は定期メンテナンスにも対応しているので、万が一トラブルがあったときでも安心です。
アルコールチェック クラウド管理サービス「ALPiT」なら、チェック結果は自動的にクラウドに保存されるため、管理業務を大幅に短縮可能です。権限を付与すれば、どこからでもすべての記録を確認できます。
すぐに帳簿に書き出すことも可能なため、急に提出を求められても安心です。
使い方がわからないときや運用の方法まで当社サポートコールが対応しますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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■ドライバーが直行直帰の場合はどのように対応すべきか?
直行直帰で営業所に立ち寄らないドライバーも、運転前後のアルコールチェックは必要です。アルコールチェックは、原則として対面での実施が求められています。しかし、やむを得ない場合は、対面以外の方法も認められています。
ドライバー自身でアルコールチェックを実施する際には、運転前後の測定結果を安全運転管理者に報告しなければなりません。携帯型のアルコールチェッカーをドライバーに携行させ、測定結果をきちんと報告できる環境を構築しましょう。
違反しないためには従業員に周知することも大切
2023年12月からは、アルコールチェッカーによるアルコールチェックが義務化されます。従業員が飲酒運転や酒気帯び運転で事故を起こすと、単に罰則を受けるだけでなく、企業の評判にも悪影響を及ぼすリスクがあります。
近年はSNSを通じて情報が瞬く間に拡散されるため、「飲酒運転による事故を起こした企業」というネガティブなイメージが浸透すれば、企業の存続が危うくなるかもしれません。
従業員のなかには、アルコールチェッカーによるアルコールチェックの義務化を知らない人がいる可能性があります。義務化に備える際には、アルコールチェッカーの購入や環境整備だけでなく、従業員への周知活動も大切です。