開発マインド開発秘話 MagiCaleena
(マジカリーナ)

マジで軽い1.1kg。
部門の垣根を越えて
超軽量と吸引力を両立せよ。

MagiCaleena
(マジカリーナ)

開発のきっかけ
2023年に発売した毎日の掃除に欠かせないクリーナー「MagiCaleena」。その最大の特徴は業界の常識を覆した1.1kgという軽さの限界値だ。しかし軽量化を追求するがゆえに、開発プロセスにおいては吸引力や強度の問題など数々の困難が立ちはだかった。「もっと良い商品を届けたい」その一心で、部門を越えて様々な人を巻き込み、お客様の快適さと便利さにこだわり続けた。着想から発売に至るまでの約10か月間について開発者である3人に話を聞いた。
※当記事の情報は取材時(2025年7月)のものです。

話を聞いた開発メンバー

  • 商品企画・開発
    2021年 キャリア入社
    家電開発部 商品企画課
    兼 小型家電課 生活家電チーム
    福元
  • 商品開発(機構設計)
    2021年 新卒入社
    家電開発部 小型家電課
    生活家電チーム
    古閑
  • 商品開発(回路設計)
    2023年 新卒入社
    家電開発部 回路設計課
    家電回路チーム
    里中

プロジェクトの始動
商品開発の始まりは、
開発者たちの強い想いと
お客様のリアルな声。

−パワーヘッド搭載モデルにおいて最軽量*となる 1.1kgという圧倒的な軽さで瞬く間に市場を席巻し、大ヒット商品となった「MagiCaleena」。その開発がスタートした経緯とは一体どのようなものだったのか。*2024年11月現在。

福元 きっかけは「もっと良い商品をお客様に届けたい」という私たち開発者の強い想いでした。その当時販売していた当社クリーナー最大の強みは、1.4kgというアイリスオーヤマ史上最高の軽さ。2.0〜2.5kg前後が主流であった中、業界に衝撃を与えたその軽さは発売当初大きな話題を集めたものの、時が経つにつれて市場全体が軽量化を推進したことにより良くも悪くも当たり前の特徴になっていったのです。「もう一歩踏み込んだ開発はできないか」「もっと軽くできる設計方法はないか」そんな問いが社内のあちこちで生じ始めていました。

古閑 さらなる軽量化を目指していくにあたり、部門の垣根を越えて幾度もブレインストーミングを重ね、私のような若手からベテランの社員まで自由にアイデアを出し合いましたね。軽くても安っぽく見えず、さらにクリーナーの本質である吸引力を損なわない商品を実現するために、当社の公式通販サイトやその他ECモールに投稿されたレビューを隅々まで確認したことはもちろん、全国の小売店とつながりのある営業部門にも協力を仰ぎ、ありとあらゆるお客様の声を収集。より多くの方にご満足いただけるよう最適な重量や仕様を検討していきました。

福元 お客様の声を徹底的にリサーチして反映する。そして私たち開発者自身がユーザーの視点に立ち「もっとこうなれば良いのに」と考える商品を生み出す。私たちが開発において最も大切にしている「ユーザーイン発想」を基盤に「圧倒的な軽さながらも吸引力はしっかり」という構想が固まり、1.1㎏という目標値が決まりました。そして迎えた企画提案。商品に関わるすべての部門が一堂に会する中、経営トップによる即断即決で商品化を進めることが決定しました。自信はあったものの正直内心はバクバクでしたね。

脅威の開発スピード
部門の垣根を越えて
情報や知恵を出し合い、
最適解を導き出していく。

-超軽量と吸引力を実現する。その構想はあくまでスタート地点に過ぎずここからが開発者たちの腕の見せ所だ。常識を覆す数々のアイデアが驚異的なスピードで具現化されていった。

福元 商品化が決定すると販促企画や知的財産など様々な部門と協力しながら「伴走方式」で詳細設計を進めます。まず着手したのはさらなる軽さ1.1kgの実現。心臓部であるバッテリーなど主要部品以外でどう軽量化を図るか、引き算の設計に挑みましたね。

古閑 着目したのはヘッド部分です。ヘッドの片側にはモーターや駆動ベルトが内蔵されているのですが、パイプを挟んだ反対側には何も入っていない無駄なスペースがあることに目をつけました。このスペースを無くしても従来通り動作は可能か回路チームにも相談しましたよね。

里中 はい。技術的に実現できるか、またはどんな代替策が提案できるか。造形の美しさを追究するデザイン部門、設計品質を評価する品質管理部門なども巻き込みながら議論を重ね、時に白熱しながらも無駄なスペースを極力無くすことで徐々に軽量化を実現していきました。

古閑 さらに軽量ながら十分な吸引力を保つことも重要なポイントです。ヘッドにV字型のリブをつけてゴミを効率的に集める構造設計のほか、空気の通り道を最適化することでフィルターの目詰まりを防ぐ流動設計などを検討していきました。正直これはかなり苦労しましたね。他社製品を分解してその工夫を分析したり、透明な板の上でゴミが動く様子を観察したり、行き交う同僚に試作品の使用感をヒアリングしたり。とにかくトライ&エラーを重ね、夢にまで商品が出てくるようになった頃ようやく完成形が見えてきました。

里中 並行してコストの大部分を占めるバッテリーとモーターの素材や仕様、接続方法などの検討を進め、安全と品質の基準を満たしながらも可能な限りコストを抑えた原価を算出。量産化に進む上での関門となる原価提案を無事に突破しましたね。ここまでが約4か月間の出来事です。この圧倒的なスピード感は伴走方式で開発を進める当社ならではですね。

立ちはだかる障壁
度重なるハプニング。
三現主義の考えをもとに、
確実に着実に乗り越える。

-ようやく完成形が見えてきた矢先、中国の大連工場における量産化の最終段階で二つの壁が立ちはだかった。発売日が迫る緊迫した状況の中いかにして打開策を見出していったのか。

古閑 まず軽量化にともなう強度の問題が発生しましたね。詳細設計の段階でも転倒対策は施していたものの、いざ最終試作品の品質測定試験に臨んだところ、ダストカップと本体をつなぐ接続部分が転倒時に破損してしまうという想定外のハプニングに見舞われたのです。

福元 焦りはありましたが「ここまできたらやるしかない」と腹を括りました。開発のほか試験評価や品質管理などあらゆる部門を招集して試作品を囲み、スローカメラを複数台設置。前後左右に転倒させる試験を繰り返し、どこに衝撃が加わっているかを突き止めてそれを緩和するためのアイデアを出し合う地道な検証を重ねました。結果としてわずかな突起をつけて衝撃を分散させる方法で事なきを得たものの、当時の緊迫感は今も鮮明に覚えていますよ。

古閑 そしてもう一つ組み立てラインでも壁にぶつかりましたね。もともと製造部門とは設計に対して何秒で組み立てられるかという合意を得ていたものの、実際に量産ラインで組み立てると想定していた秒数での組み立てが難しいことが分かった。つまりコストが膨らんでしまう問題が生じたのです。しかし原価提案で定めた「値ごろ」は死守しなければいけませんので、大連工場まで赴いて製造部門と膝を突き合わせ「なぜできないか」ではなく「どうしたらできるか」を考え抜きました。

福元 当社には「現場・現品・現状」を重視する「三現主義」の考え方があります。問題の発生場所に足を運び、問題の対象である商品を直接見て触れて事実や状況を正確に把握する。そして一つひとつの問題を確実に着実に解消していく。この量産化に向けたプロセスはハプニングの連続でしたが、今となればまさに三現主義に基づいて思考を巡らせた良い経験になりました。

終わりなき挑戦と熱意
「もっとできる」
好評価への喜びも束の間、
次の挑戦が幕を開ける。

-苦労の末に発売された商品は「MagiCaleena」という名前の通り、その圧倒的な軽さと確かな吸引力で社内外から大きな反響を呼んだ。しかしさらなる高みを目指す開発者たちの終わりなき挑戦はまだまだ続く。

古閑 商品が店頭に並んだ姿を見た瞬間、それまでの苦労が吹き飛ぶほど嬉しかったですね。1.1kgという軽さに「ひたすら軽い」「掃除がラクラク」などの声が続出しましたし、試行錯誤を重ねて実現した十分な吸引力がきちんと評価されたことにもホッとしましたよ。

福元 お客様から好評価をいただいたことは最上の喜びでしたが、社内でも開発時から「いい商品が出るぞ」と噂が飛び交うなど期待値が高まっており、経営トップも利用する社内SNSでは商品に対するポジティブな感想をたくさんもらいました。その一方、当社には自社製品の熱心なファンが多いので改善の意見や指摘も出てきます。開発中は最高の商品だと自負していても、販売後のレビューを見ると「もっとできたな」という反省点が見えてくることも多いです。

里中 今回は1.1kgという軽さを目標値に定めましたが、今後技術の進歩とともにもっと性能がいいバッテリーやモーターが開発されれば、さらなる軽量化を実現することができるかもしれません。それに当社の事業は家電だけではなく、食品やインテリア、ヘルスケアなど多岐にわたるため、事業の枠を越えたコラボレーションで新たな価値が生まれていく可能性もありますよね。

福元 実は現在、すでに新たなクリーナーの開発が進んでおり、1.1kgという軽さはそのままに吸引力2倍以上をはじめとした性能のさらなる向上に注力しているんです。当社は伴走方式の開発に加え、経営トップとの距離が近く素早い決断がなされるからこそ、約10か月という短い期間で商品を開発することも多く、お客様のニーズにいち早くお応えすることができます。常にもっと良い商品を追究するためゴールが更新され続けていく。もちろん大変ではありますが、たくさんのお客様の快適で便利な生活を支えられるやりがいの大きさが魅力です。