
開発マインド開発秘話 LiCONEX version3.0
日本中に節電とエコを広める。
被災企業としての使命が生んだ、
他に類を見ない無線照明制御システム。
LiCONEX version3.0
開発のきっかけ
東日本大震災での被災企業として、節電・エコを日本中に広めることを使命に様々な製品開発を行ってきたアイリスオーヤマ。その取り組みの一つとして、一般住宅よりも電気使用量が多い全国のオフィスや店舗、工場などをターゲットにしたLED照明の無線制御システム「LiCONEX」を2017年に開発。2020年には照明を介して空間における様々な情報を収集・分析できる「LiCONEX Version3.0」をリリースした。

話を聞いた開発メンバー
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- 商品企画・開発
- 2012年入社
LED IoT開発部 部長
尾形
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- 商品企画・開発
- 2011年入社
LED IoT開発部 IoT開発課
稲村
開発が始動した経緯
日本中の企業に節電・エコを推進する。
その使命のもと始まった、
無線照明制御システムの開発。
−エリアごとに明るさや色合いを変えたり、曜日や時間ごとに明るさを細かく設定したりすることができ、専用アプリをインストールすることなく、汎用のタブレットなどで簡単に操作できる無線照明制御システムLiCONEX。2017年のリリース以降は着実にユーザー数を伸ばし続け、2020年に「LiCONEX Version3.0」を発表。その開発に至った経緯とは。
尾形 当社は被災企業として「節電・エコを日本中に広める」という全社的なミッションを掲げています。その一つの取り組みとしてLiCONEXの開発がスタートしました。日本全体の電気使用量で見れば、一般家庭よりもオフィスや店舗などの方が圧倒的に多い。BtoB領域での無駄な電気の削減は、私たちにとって重要な課題でした。
稲村 2016年のLiCONEXは、当社が独自開発したオリジナル無線制御システム「メッシュリンクプロトコル」を使用することで、従来の有線制御システムを導入する際にかかっていた大掛かりな配線工事が不要となり、工期とコストの大幅な削減を実現しました。何千台という照明を1台ずつ細かく制御できるシステムで、有線と比べても遜色の無い応答速度と安定性を実現しています。
尾形 リリース当初は、無線で本当に大丈夫なのか、制御に時間がかかったり接続が不安定になったりしないかといった不安を抱えているお客様が多かったですね。それでも自信を持ってご提案し、導入してくださったお客様には、「こういう節電の方法もあるのか」と気づいていただけたと思います。
稲村 着実にユーザー数を増やしていくうちに、次第に「こんなこともできないか」というご要望が増えてきました。中でも、近年日本中の企業が進めているDXに関する声が多く、私たちとしてもメッシュリンクプロトコルを使った新しい照明のカタチを模索していたので、LiCONEX Version3.0の開発がスタートしました。
尾形 照明はあらゆる部屋に張り巡らされているで、照明を介してその部屋の温度や湿度、CO2量などの情報を収集して管理・分析ができないだろうか、と考えました。照明に通信インフラとしての機能を担わせるという発想です。実現すればかなりの需要に応えることができるはずだと思い、社内への提案とテストを進めていきました。


繰り返すトライ&エラー
考え、試し、改善する。
基本のサイクルを徹底的に行い続け、
お客様が求めるものを実現していった。
−無線で照明を制御するだけでなく、照明を介して様々な情報を収集し、見える化する。大胆な発想でスタートした開発だったが、リリースまでにはトライ&エラーの繰り返しがあった。
尾形 最初に苦労したのは、どんな情報を収集できるようにするのかという取捨選択です。やろうと思えばなんでもできますが、多ければいいというものでもありません。シンプルで簡単に使えるのがLiCONEXのセールスポイントの一つだったので、まずはお客様の声や潜在ニーズから的を絞っていくことから始めました。
稲村 お客様の環境によっても、必要な情報は様々です。例えば物流倉庫や工場であれば、商品の品質を適切に管理するために温度や湿度といった情報が必要不可欠。企業のオフィスであれば、会議室のCO2量がわかれば換気の目安になるので、ウィルス感染対策につながります。集めた情報をどのように活用できるのか、というところまで考えた上で絞り込んでいきました。
尾形 そして何より大変だったのは、動作テストです。Version3.0へのアップデートでは、1台のモジュールで制御できる照明の数を2,000台から4,000台に増加させることも目標としていました。こんな数の端末を無線で個別制御するというのは、おそらく照明以外では無いでしょう。かなり特殊な業界と言えます。
稲村 テストと言えど、実際の使用シーンと極力近い環境でやらないと意味がありませんから、4,000台の照明を使って行うわけです。アイリスオーヤマは物流も小売もグループ内にあるので、社内でテストできる環境が整っています。その点は、エンジニアにとってはかなり幸せな環境だと思いますね。
尾形 最初のテストでは、まず全台が点灯するのに何秒かかるかを計測しました。計算上では1秒以内の想定でしたが、実際には8秒以上もかかってしまったんです。この時ばかりは青ざめましたね。すぐさま原因を探ると、端末間の接続精度が想定よりも低いことがわかりました。
稲村 そこで、メッシュリンクプロトコルを丸ごと見直し、試行錯誤を繰り替えしました。最初のテストから1ヶ月ほどで目標スピードをクリアすることができましたが、この1ヶ月間はとにかく原因を追求して、アイデアを出し合って、テストするという製品開発の基本中の基本を徹底して行いましたね。


開発力とスピード感が武器
会議のための資料作りはしない。
検証と改善を高スピードで繰り返し、
本当にお客様が求めるものを追求する。
−つまずいては原因を追求し、改善を繰り返す。スピード感を持って開発に没頭できた背景には、アイリスオーヤマならではの社内風土があったという。
尾形 他社であれば、半年かけて仕様書を作成して、社内提案のために資料をまとめて、開発にさらに1年、テストでさらに数ヶ月…といったようなフローだと思います。当社の場合は仕様書の作成に2ヶ月程度しか時間をかけません。そこからどんどん検証をして、アップデートしていくというやり方です。
稲村 最初にゴールさえ明確になっていれば、方法には拘らない。お客様には途中経過は関係ありませんから。ゴールに対して最適な道のりを常に選ぶようにしていますね。
尾形 会議のための資料作りに時間をかけないというのが、アイリスオーヤマらしいところです。どんどん意見を出し合ってホワイトボードに書き出し、次はこれをやろう、これをテストしようと決めていきます。
稲村 このスピード感は、普段から上長との距離が近く、コミュニケーションが活発だから実現できるものだと思います。開発担当役員との定期ミーティングや、社長・会長と話す場も隔週でありますからね。
尾形 それと、初めての事業でも挑戦を推奨してくれる風土もありますね。初代LiCONEXの開発時は、無線通信に初めて着手したのですが、失敗も許容して自由にやらせてもらえました。その経験の蓄積が、Version3.0の開発でも大いに役に立ちました。
稲村 近い将来、照明が情報を収集するというのは当たり前になっていくと思います。今後は競合他社もどんどん参入してくるでしょう。それでもお客様に選ばれ続けてもらえるよう、私たちの武器である開発力とスピード感にますます磨きをかけていきたいです。


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開発秘話
ユーザー目線で商品開発を進める、アイリスオーヤマの製品開発。その開発過程を公開します。
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スティック
クリーナー - ユーザー視線にこだわる。
ニーズに応えることを諦めない。
強い想いが生んだ、
新常識のクリーナー。
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LiCONEX
version3.0 - 日本中に節電とエコを広める。
被災企業としての使命が生んだ、
他に類を見ない
無線照明制御システム。
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開発者コメント
尾形 この開発を通して、様々なパートナー企業と連携したり提案する機会が増え、エンジニアとしてのビジネスフィールドが広がったと思います。もっと全国のお客様に使っていただけるよう、成長していきたいです。
稲村 ハード・ソフト両面で新しい知識を身に付けることができました。世の中にある既存のものを使うのではなく、新しいシステムを自分たちで創り上げることの楽しさを実感できたプロジェクトです。