空調設備とは、快適な空間維持のために自動で空調を調整するシステムのことです。本記事では、具体的な仕組みや省エネにつながることが分かるような実績を交えながら、空調制御の概要について解説。システムを選ぶ際のポイントについても紹介します。
空調制御システムとは?仕組みを解説
空調制御システムとは、センサーによるデータ収集と、それに基づいた調整機能によって、快適な空間を保つものです。ここでは、システムについて詳しく解説します。
1. センサーによって、室内の温度や湿度の状態を感知する
空調制御システムで重要なのは、設定された温度や湿度と、実際の環境との間にどれほどの差があるかどうかを把握すること。その役割を果たしているのが、センサーです。
エリアごとに設置された複数のセンサーが、定期的に計測を行い、状況を細かく把握します。
2.計測結果が制御装置に送信される
センサーが計測した温度や湿度は、制御装置に送信されます。そのデータを元に、室内の温度や湿度が調整され、居心地のよい空間を実現。その後もデータが定期的に送信され、状況に応じた制御が可能です。
3. 設定値に近い快適な室内環境になるよう調整する
制御装置は、設定された温度や湿度に近づけるため、圧縮機の停止や運転モードの切り替えなどを行います。さらに、換気量や風向き、風量なども調整することで、バランスの取れた空調が実現するのです。
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空調制御システムで何ができる?コスト削減と脱炭素化を目指そう
空調制御システムは省エネにつながるのか
環境省によると、空調制御システムの導入前と後では、以下のような省エネ効果があることが証明されています。
- エネルギーコスト:約13%削減
- 電力使用量:年間30,000kWh削減
- CO2排出量:年間約17t-CO2削減
定期的かつ細かいモニタリングによって、出力を自動で調整するため、このような効果が期待できます。
なお、「デマンド制御」に対応したシステムであれば、省エネがより期待できるでしょう。
空調制御システムのデマンド制御とは
空調制御システムの中でも高い省エネ効果を期待できるのが、「デマンド制御」です。ここでは、「デマンド制御」の概要について詳しく解説します。
電力消費量の目標内を設定し、出力を調整する仕組み
30分間で消費される電力の平均値が「デマンド値」。目標値を設定し、それを超えないように出力をコントロールするのが、「デマンド制御」です。
電気料金と関連性の高い「最大デマンド値」
「最大デマンド値」とは、1ヵ月のうちで一番高いデマンド値のこと。1年間12ヵ月分の最大デマンド値の中で、一番高い数値が、電気料金に反映されます。これが、「デマンド料金制度」です。
目標デマンド値の設定が重要
省エネを実現するには、最大デマンド値を抑えることが必要不可欠です。そのためには、適切な目標デマンド値の設定が重要。
ただし、目標デマンド値を低めに設定しすぎると、すぐに上限に達して送風運転に切り替わり、室内環境が悪化する可能性が考えられます。
逆に、目標デマンド値を高く設定すると、空調が制御されず省エネにつながりません。
コストの削減と快適な室内環境の両立には、バランスの取れた目標デマンド値を設定する必要があるでしょう。
空調制御システムの導入・省エネ事例
空調制御システムの導入によって、省エネが実現した事例はいくつもあります。以下ではその一部を例に挙げて紹介します。
介護施設:電気使用量の多くを占めていた空調の制御に成功
介護施設では、入居者の快適な生活のために、電気使用量の大半を空調が占めていると言われています。
電気使用量を抑えることで省エネを実現するために、空調制御システムを導入。施設内の不快指数を自動で検知して、温度管理を行うようにしました。
これにより、入居者が暑すぎず寒すぎず快適な空間で過ごせるようになり、同時に10〜18%の電気使用量の削減に成功したそうです。
ホテル業界:従業員に負担をかけず、快適性とコスト削減を実現
あるホテルでは、空調制御システムの導入によって、自動で空調を管理。これにより、従業員が手動で空調を管理する必要がなくなり、負担を減らせたそうです。
また、導入前と後では、半年で約16%もの電気使用量の削減に成功しました。
学校:子どもたちの安全に配慮しつつ快適さも実現
学校内での感染症流行予防には、換気が欠かせません。しかし換気すると、空調の出力が上がり、結果として電気使用量・料金ともに上がってしまいます。
また、職員が手動で空調を管理しなければならず、負担もかかるでしょう。
そこで空調制御システムを導入したところ、空調が自動でコントロールされ、職員に負担をかけずに、出力を抑えながらも快適な室内環境を維持できるようになったそうです。
空調制御システムを選ぶポイント
空調制御システムの導入を検討している場合は、いくつかのポイントを意識することが大切です。仕組みの違いを把握するのはもちろん、デマンド制御やコスト、操作性についても考慮しましょう。
空調制御の仕組みの違いをチェックする
空調制御の仕組みは大きく分けて、「VAV」と「CAV」の2つです。
VAVとは変風量方式と呼ばれていて、ダンパーやファンの回転数を制御することで送風量を抑えて、温度を調整します。温度センサーやCO2センサーによって風量を調節する仕組みで、部屋ごとに細かく対応できるのが特徴です。
省エネ効果が高いとされている一方、換気が十分に行われないというデメリットもあります。
CAVは「定風量方式」と呼ばれるもので、一定の風量を供給します。運転開始から停止まで風量は変化しません。その代わりに、送風温度の調整によって室温を管理します。
部屋ごとの個別調整は難しいですが、制御方法としては構造がシンプルなので、低コストで運用できるでしょう。
空調制御システムを導入する際は、建物の大きさや長期的なコスト、管理面の負荷などを考慮し、どちらにするかを判断することが大切です。
デマンド制御に対応しているかをチェックする
前項でも触れたように、デマンド制御に対応しているかどうかで電気料金が大きく変わります。
デマンド制御の仕組みは、メーカーや機器の仕様によってさまざま。大規模施設や電気の使用量が多い企業・施設では、デマンド制御に対応しているサービスを検討するのがおすすめです。
導入コストを考慮する
空調制御システムを導入する場合は、当然ながらコストが発生します。初期費用や月額料金などを細かく算出し、電気料金がどれだけ削減できるかを照らし合わせた上で、慎重に判断することが大切です。
さらに、複数メーカーから見積もりをとって比較する他、利用可能な補助金の有無についても確認しておきましょう。
操作性をチェックする
操作性や管理のしやすさも重要な検討ポイントです。例えば、現場まで足を運ばなければ設定できないようなシステムでは、管理者に大きな負担がかかってしまいます。
一方で、スマートフォンやタブレットから遠隔操作ができるものであれば、設定や調整がスムーズになり、業務効率化にもつながるでしょう。加えて、直感的に操作できる仕様かどうかもチェックしておきたい点です。
万が一のトラブル時に備えて、サポート体制が整っていれば、さらに安心できます。
空調制御システムにまつわる疑問・質問
空調制御システムに関する、疑問や質問とそれに対する回答をまとめました。導入に際し、不明点を解決しておきましょう。
空調制御システム以外で、省エネを実現するには?
空調制御システムを導入しなくても、省エネを実現する方法はあります。以下が一例です。
- 窓の開閉回数を減らす
- 厚手のカーテン、ブラインドなどを使って、日差しをカットする工夫をする
- サーキュレーターや扇風機を併用する など
エアコンそのものの設定を見直すことも効果的です。エアコンの設定温度を1℃変えるだけで、冷房なら約13%、暖房なら約10%、電力消費量をカットできるとされています。環境省推奨の以下の温度設定にしてみてください。
- 夏季:28℃
- 冬季:20℃
この他、断熱塗装を施すのも1つの手です。オフィスビルでは難しい場合もありますが、工場や店舗、介護施設等では導入しやすいでしょう。
もともとある空調に、空調制御システムを導入できるのか
空調コントローラーさえ使えば、もともとある空調設備に空調制御システムを導入することは可能です。システムによっては、空調設備そのものにも取り付けられます。
アイリスオーヤマの「エナジーセーバー」は、空調機の入れ替え不要で導入できる空調制御システム。さまざまなメーカーの空調機に対応しています。
温度の上下の変動を少なくすることで、これまでの快適さを変えずに省エネを実現できるのが魅力です。気温によっても変わりますが、電気使用量を約34%も削減できた実績もあります。
もともとの空調設備に取り付けた場合は、エナジーセーバーに加えて、空調設備自体のメンテナンス機能があるのもメリットです。
<エナジーセーバーの詳細はこちら>

空調制御とは室内環境を快適に保つためのシステム
空調制御とは、センサーによって室内の状態を検知して、快適な状態をキープするために空調を自動で調整するシステムのこと。導入することで、省エネ効果が期待でき、実際多くの企業や施設でその効果が明らかになっています。空調制御の仕組みやコストなどを考慮した上で、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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