サーマルカメラとは、物体や人が発する赤外線を検知し、温度分布を可視化するカメラのことです。近年、工場設備の監視や感染症対策の検温など、幅広い現場で活用されています。本記事では、サーマルカメラの仕組みや特徴、メリット・デメリットを解説し、活用方法やタイプの違い、導入時の選び方 まで網羅します。
サーマルカメラとは

はじめに、サーマルカメラの基本的な役割を確認します。あわせて、混同しやすい「サーモグラフィー」や「赤外線カメラ」との違いも説明します。
熱を検知するカメラのこと
サーマルカメラは、対象から発せられる熱を検出して温度の分布を映像化するカメラで、サーモカメラやサーモグラフィーカメラとも呼ばれます。
“Thermal(サーマル)”は英語で『熱的な』を意味します。サーマルカメラで得られる映像(サーモグラフィー)は温度の高低を色分けで示します。一般に高温域は赤〜黄色、低温域は青〜紫として表現。表面温度を即座に把握できる点が大きな特徴です。
サーモグラフィーや赤外線カメラとの違い
サーマルカメラと混同されやすい用語に、サーモグラフィーや赤外線カメラが挙げられます。
サーモグラフィーはサーマルカメラで撮影した画像を指します。サーマルカメラはカメラ機器そのものを指す点が異なります。
赤外線カメラは、可視光より長い波長の赤外線を用いる撮影機器の総称です。近赤外線LEDの反射を拾って映像化する暗所撮影に強いタイプもあります。サーマルカメラも赤外線カメラも赤外線を扱う点は同じですが、サーマルカメラが温度を可視化するのに対し、赤外線カメラは暗所での撮影を主眼にする点が違います。
サーマルカメラの仕組み

サーマルカメラは、対象から放射される遠赤外線をセンサーで受け取り、その情報を基に温度を可視化します。
遠赤外線は地球上のあらゆる物体が発する目に見えない電磁波で、温度が高いほど放射強度が増します。サーマルカメラ内の専用センサーが、対象物が放つ赤外線の強さを検知・分析し、画像処理によって高温域を赤〜黄、低温域を青〜紫などの色で表示します。
サーマルカメラの特徴

サーマルカメラは対象に触れず、放射される遠赤外線を検出することで温度を測定できるのが大きな特徴です。以下、代表的な特性を解説します。
非接触で温度を計測可能
サーマルカメラの大きな特徴は、測定対象が放射する赤外線をセンサーで取得するため、対象に接触なしで温度を測定できることです。
人の体表面温度を非接触で確認できるため、接触による感染リスクを抑制できます。サーモグラフィーにより温度変化をリアルタイムで可視化でき、専任の測定スタッフを常駐させなくても、多人数を同時に検知できるのも魅力です。
暗闇や視界不良でも撮影可能
サーマルカメラは、暗所や煙・霧など視界不良の環境でも、対象を映像として捉えられます。
一般的なカメラと異なり、サーマルカメラは物体から放射される遠赤外線を捉えるため、光源の有無に影響されません。また遠赤外線は可視光より透過しやすく、煙や霧がある環境でも検知が可能です。
広範囲での計測が可能
機種にもよりますが、サーマルカメラは広範囲の温度も計測できます。カメラの前で立ち止まらずに、通過しながら複数人の温度を同時に確認可能です。施設内やイベントなど来場者の検温が求められる現場は、個別対応では時間と人手がかかります。サーマルカメラなら同時に測れるため、運用負荷と人件費の削減につながります。
サーマルカメラのメリット・デメリット

サーマルカメラの最大の特徴は、非接触で温度を把握できる点です。暗所や煙のある環境でも運用でき、さらに広範囲を同時にカバーできることも利点です。
メリット
非接触かつ広範囲をまとめて測定できる点が最大のメリットです。感染リスクを抑制しながら安全に検温ができます。
出入口など人の往来が多い場所でも、映像に映るだけで自動的に温度を判定でき、短時間で多人数を処理可能です。異常を検知した時にアラートで通知したり、測定記録を映像で保存したりできる機能もあります。メーカーによってはスマートフォンなどの端末でリアルタイムに遠隔確認できる機種もあります。
デメリット
一番の課題は導入コストです。サーマルカメラ自体、高価格帯のモデルが多く、なかには100万円超の製品も存在します。低価格化は進んでいるものの、数万円で購入できるものはないのが現状です。
また発熱の有無は捉えられても、感染の陽性・陰性や無症状かどうかまでは判定できません。サーマルカメラはあくまで体表面温度を測る装置であり、感染予防の一助にはなるものの、それだけで完全に防げるわけではありません。
誤検知率の高さも課題のひとつです。周囲の温度条件や測定距離、表面状態の影響を受けやすく、体温の厳密な把握には限界があり、±0.5度程度の誤差が出ることもあります。高精度な管理が必要な現場では留意が必要です。
サーマルカメラの測定結果を他システムとデータ連携させる場合、専用ソフトや設定知識が求められることがあります。初期導入時の難易度が上がる点も課題です。
サーマルカメラの活用方法

サーマルカメラは、工場・オフィスに加え、医療機関や公共施設などさまざまな場所で活用が広がっています。以下に代表的な3つの用途を示します。
設備の温度管理・異常検知
サーマルカメラにより機械設備や配電盤の発熱状況をリアルタイムに見張ることで、普段と異なる温度上昇を早期に把握し、故障や火災の予防につなげられます。 人の目では捉えにくい小さな発熱異常も可視化できるため、予防保全の効率化につながります。
オフィスや施設でのセキュリティ強化
暗所や視界不良下でも映像が得られるため、不審者や侵入者の検知・監視に有効です。入退室管理システムと組み合わせれば、来訪者・従業員の動線を厳密に管理できます。防犯だけでなく施設全体の安全性向上に役立ちます。
医療・公共施設での検温
医療機関や公共施設では、感染症対策の一環としてサーマルカメラによる来訪者の検温を実施。非接触で多人数の体表面温度を同時に測定できます。
従来の体温計ではひとりずつの対応が必要で、混雑やスタッフの負担が生じがちでした。サーマルカメラなら通過するだけで測定でき、入館手続きを円滑にします。
サーマルカメラのタイプ

サーマルカメラには複数の形態があり、機能や使い勝手が異なります。代表的な5タイプを紹介します。
タブレットタイプ
カメラとモニター(液晶画面)が一体化したタイプです。一体型、スタンド型とも呼ばれます。電源のみで単体稼働可能。設置や運用が容易なので、商業施設や店舗の出入口で広く用いられます。無人で自動検温を進めたい店舗などに適しています。
スマホ取り付けタイプ
スマートフォンに装着してサーモグラフィーを表示するタイプ。スマートフォンの充電端子(USB-CやLightning)に接続するだけで使用でき、簡易的な測定に適します。
ハンディタイプ
手持ちで対象者にカメラを向けて計測するタイプです。携帯性に優れ、迅速な検温が可能です。ただし、多人数を同時には対応できず、個別に検温する必要があります。
スマホ取り付けタイプと同様、現場作業が多い事業者に適します。導入コストは比較的低めです。
バレットタイプ
細身の筐体を持つ固定設置型で、ガンタイプとも呼ばれます。監視カメラに測温機能を追加したようなイメージで、サーマルカメラとして最も普及しているタイプです。
設置後はPCと連携して専用ソフトで運用するのが一般的です。多人数同時検知や対象者の追跡(トラッキング)機能を備える上位機もあります。イベント会場など不特定多数が出入りする場所に適します。
ドームタイプ
半円形の形をした設置型タイプです。基本性能はバレットタイプと同じですが、バレットタイプより設置が目立たず、対象者に威圧感を与えません。オフィスビルなど、人の出入りを監視したいが威圧感を与えたくない場所に適しています。
サーマルカメラの選び方

サーマルカメラにはいろいろなタイプ・種類のものがあります。用途や必要機能、対象物の性質によって適した機種は変わります。選定時に押さえておきたいポイントを紹介します。
熱画像解像度で選ぶ
熱画像解像度は、温度画像の細かさを示す指標です。解像度が高いほど細部まで描写できます。解像度は160×120ピクセルや320×240ピクセルが一般的ですが、用途に合わせた選択が重要です。
高解像度機は微小な温度差まで把握でき、精密な解析や詳細な監視に向きます。目的が温度測定のみであれば、低解像度でも問題はありません。
フレームレートで選ぶ
フレームレートは1秒あたりの更新回数を示し、値が高いほど表示は滑らかになります。動体の温度管理に適します。
搬送ライン上の製品の感度管理などには高フレームレートが有効です。目安は10〜30fps(フレーム/秒)程度、より高速な挙動を追う場合は60fps以上とされています。精密な動きの解析や高速な動きの追跡をするなら、よりフレームレートが高い製品を選びます。
温度分解能で選ぶ
温度分解能は検知可能な最小温度差を指し、温度分解能が高いほど小さな温度差まで捉えられます。例えば温度分解能が0.1なら0.1度単位、0.05なら0.05度単位での判別が可能です。
温度分解能に優れたものは、医療診断など精密さが求められる用途に適します。商品開発や研究におけるデータ測定時にも有益です。一方、一般的な検温では、細かい温度分解能は必要ありません。
測定対象と目的に応じて必要な細かさは変わるため、要件に従って適切なものを選びましょう。
測定温度範囲で選ぶ
測定温度範囲とは、カメラが正確に測定できる温度の範囲(最小値から最大値まで)を意味します。測定温度範囲が広いほど、幅広い温度を測定できます。
冷凍食品の品質管理なら最小値の低い機種、高熱を扱う金属加工には最大値の高い機種など。用途に適した測定温度範囲のサーマルカメラを選びましょう。
機能で選ぶ
基本性能に加えて、運用を左右する付加機能の確認も大切です。
主な機能は以下の通り。
- Wi-Fi対応
- 防塵防滴
- 検温速度調整
- 検温記録
- 顔認証
- ズーム機能
- クラウド同期
- アラート機能
- USBデータ出力
- SDカード保存
- GPS機能
設置環境や運用目的、データの活用方法により必要な機能は変わります。筐体サイズや取り付け方法も合わせて確認してください。
業務改善、セキュリティ向上に!アイリスオーヤマのAIカメラ

アイリスオーヤマ AG series は、AIアルゴリズムを搭載したハイスペックシリーズです。サーマルカメラでは解決できなかった課題も解決できます。
高精細な映像入力により、顔認識や動線・属性解析など多彩な分析が可能で、マーケティングとセキュリティの双方に活用できます。関係者識別や未登録者の監視・記録など、監視を超えた運用も実現します。
サーマルは測温が主目的であるのに対し、AIカメラは人物識別や異常行動の検知が可能。外部システムとの連携やデータ活用にも優れ、業務の効率化に直結します。
業務改善、セキュリティ強化の有力な選択肢として検討してみてください。
サーマルカメラの特徴を理解し、最適な1台を見つけよう

サーマルカメラとは、赤外線を用いて非接触で温度を可視化する装置です。設備監視・セキュリティ・検温などさまざまな場面で活用されています。ただし、サーマルカメラにはメリット、デメリットがあるため、目的に合わせた選び方が重要です。サーマルカメラでは対応が難しい人物識別や行動分析、外部システム連携による業務改善など、より高度なニーズにはAIカメラの導入が効果的。性能を比較しながら、ニーズに最適な機種を選び、業務の効率化につなげましょう。
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