2022年4月の道路交通法の改正により、白ナンバーの車を使用する事業所もアルコールチェックが義務化となりました。しかし、「自社が対象なのか」「何から始めれば良いか分からない」といった声も多く聞かれます。この記事では、アルコールチェック義務化の概要や対象事業所、実施方法、違反時の罰則まで、わかりやすく解説します。
アルコールチェック義務化とは
アルコールチェック義務化とは、一定数以上の白ナンバー車(社用車・営業車など)を保有する事業所に対し、運転前後に酒気帯びの有無を確認することを義務付けた制度です。従来は緑ナンバー(運送業、旅客運送業などの事業用自動車)のみが対象でしたが、法改正により一般企業も対象となりました。対象となる事業所では、安全運転管理者の選任や記録・保存の仕組みを含めた運用体制の整備が求められます。
義務化の内容と施行スケジュール
アルコールチェックの義務化は、2022年4月から段階的に施行されました。初期段階では目視による確認でも可とされていましたが、現在はアルコールチェッカーの使用が必須です。
アルコールチェック義務化がいつからどのような内容で施行されたのか、その施行スケジュールと内容を解説します。
2022年4月から施行された内容
2022年4月に始まった第一段階の義務化では、運転者に対して運転前後の2回、酒気帯びの有無を目視などで確認し、その結果を記録・保管することが求められました。記録は1年間の保存が義務付けられています。この段階では、アルコールチェッカーの使用は必須ではなく、視覚や声の調子などの確認でも対応可能とされていました。
2023年12月から施行された内容
2023年12月からは第二段階として、アルコールチェッカーの使用が義務化されました。国家公安委員会の定めた基準を満たす機器を使って、運転前後に酒気帯びの有無を測定する必要があります。あわせて、チェッカーの精度を維持するために定期的な点検や保守も義務となり、より厳格な運用体制が求められるようになりました。
アルコールチェック義務化対象の事業所
アルコールチェック義務化の対象となるのは、安全運転管理者の選任が必要な事業所です。具体的には、定員11人以上の自家用車を1台以上、もしくはその他の自家用車を5台以上使用している拠点が該当します。白ナンバーの営業車や社用車も対象に含まれるため、業種を問わず、多くの企業が該当する可能性があります。
アルコールチェック義務化対象の事業所がやるべきこと
アルコールチェック義務化の対象事業所は、法令に基づき適切な体制を整える必要があります。不十分なまま運用を始めると、チェック漏れや記録不備などのリスクが発生し、万が一事故が起きた場合には大きな責任を問われることも。ここでは、対象事業所がまず取り組むべき3つの基本対応を紹介します。
1.安全運転管理者を選任する
アルコールチェック義務化の対象事業所は、まず安全運転管理者を選任することが法律で義務付けられています。安全運転管理者は、運転者に対する酒気帯びの有無の確認や、チェック結果の記録・管理などを担う重要な役割です。まだ選任が済んでいない場合は、早急に管轄の公安委員会へ届出を行う必要があります。なお、車両台数が20台以上ある場合は、副安全運転管理者の選任も必要になります。
▼外部リンク:警察庁「安全運転管理者制度の概要」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzenuntenkanrisya/pdf/seido.pdf
2.アルコールチェッカーの導入と定期メンテナンスを行う
アルコールチェックを適切に実施するためには、国家公安委員会の基準を満たしたアルコールチェッカーの導入が必須です。測定結果を数値や警告音で明示できるタイプを選びましょう。導入後は、常に正確な測定ができるように、センサーの点検や機器のメンテナンスを定期的に行うことが求められます。
3.チェック結果の記録と1年間の保存体制を整備する
運転前後に行ったアルコールチェックの結果は、紙またはデジタルのいずれかの方法で記録し、1年間保存する義務があります。記録簿には確認日時や運転者名、使用した機器の種類、確認者名などの必要項目を正確に記載しましょう。紙で管理する場合は保管場所と整理体制を、デジタルの場合はクラウドなど信頼性の高い保存環境を整備することが大切です。
アルコールチェッカーの選び方
アルコールチェッカーは義務化対応の要となるツールであり、事業所の運用実態に合ったものを選ぶことが重要です。ここではアルコールチェッカーの選び方を解説します。
センサーの種類で選ぶ
アルコールチェッカーは、呼気中のアルコール濃度を測定するためのセンサーを内蔵していて、主に「半導体式」と「燃料電池式」の2種類があります。
センサー方式 | 特徴 |
燃料電池式 | 高精度・環境の影響を受けにくい |
半導体式 | 低コストで導入可能。香りが強いガムや洗口液など、周囲のニオイに影響を受けることがある |
車両を使う時の勤務体系に合うものを選ぶ
事業所の勤務スタイルによって、選ぶべきアルコールチェッカーのタイプは異なります。例えば、直行直帰や出張が多い企業では、持ち運びしやすい「モバイル型」が適しています。
一方、社員が必ず事務所を経由して出発・帰着するような場合は、「据置型」での対応がスムーズです。勤務体系に合わせて適切なタイプを選ぶことで、運用の効率化とチェック漏れの防止につながります。
アルコールチェック結果の保存方法で選ぶ
アルコールチェックの結果は1年間保存することが法律で義務づけられています。そのため、記録方法に対応した機器の選定が必要です。
管理方法 | 特徴 | 注意点 |
クラウド・PC管理 | 自動保存や顔写真の記録に対応し、効率的な運用が可能。改ざん防止にも効果あり。 | PC設置や管理システムの導入が必要 |
紙で管理 | 導入コストを抑えて手軽に始められるが、管理負担がかかる。 | 記録ミスや改ざんリスクに注意 |
運用体制や管理の手間、初期費用のバランスを考慮し、自社に合った保存形式を選びましょう。
アルコールチェッカーの寿命と使用する回数で選ぶ
アルコールチェッカーはセンサーに寿命があるため、使用回数や使用期限を超えると測定精度が低下します。定期的なメンテナンスや買い替えを前提に、使用頻度に合ったモデルを選ぶことが重要です。
<使用期限と使用回数の目安>
・使用期限:約6ヵ月〜1年
・使用回数の目安:携帯型は1,000〜10,000回/据置型は数万回
アルコールチェックの実施方法
アルコールチェックは、単に機器を使って数値を測るだけではなく、法律に基づいた運用手順が必要です。特に義務化の対象となった事業所では、運転者の酒気帯びの有無を「運転前後の2回」確認し、その結果を正しく記録・保管する体制が求められています。ここでは基本的な流れを紹介します。
1.運転前後にアルコールチェックを行う
まず、業務に出る前と帰ってきた後、それぞれのタイミングで運転者に対して酒気帯びの有無を確認します。
<アルコールチェック方法>
1.目視確認:顔色や話し方などから体調や飲酒の兆候がないか、安全運転管理者がチェック
2.アルコールチェッカーによる測定:国家公安委員会が定めたアルコールチェッカーを使用し、呼気中のアルコール濃度を測定
これらの確認は、安全運転管理者が立ち会って実施することが原則です。対面が難しい場合には、ビデオ通話などで遠隔対応することも可能。
2.確認結果を正確に記録する
アルコールチェックが終わったら、次に内容を記録します。記録は法律に定められた以下の形式に則って記載しなければなりません。
<記録する内容>
・確認した運転者の氏名
・安全運転管理者または副安全運転管理者の氏名
・運転者の業務に係る車両番号(自動車登録番号)や管理用の識別記号
・確認した日時
・確認方法(アルコールチェッカーを使用/対面または遠隔など)
・酒気帯びの有無
・必要に応じた指示内容(業務停止など)
・その他必要な事項(測定結果の数値や機器の状態など)
3.記録は1年間保存する
アルコールチェックの結果は、法令により1年間の保存が義務づけられています。紙で管理する場合は、記録のファイリングや保管庫の用意が必要であり、デジタル保存を選ぶ場合も、保存先のフォルダ管理や定期的なバックアップ体制を整えておくことが重要。また、記録に不備がないか管理者がチェックし、必要に応じて記入者へ確認を取るなど、社内での運用ルールをあらかじめ決めておくと安心です。検査や監査時にすぐ提示できる体制づくりも忘れずに行いましょう。
アルコールチェックを実施する際のポイント
アルコールチェックを確実に運用するには、法令を守るだけではなく、職場全体で取り組む体制づくりが不可欠です。安全運転管理者と従業員の双方が義務内容を正しく理解し、スムーズに運用できるようにすることがポイント。
従業員への周知徹底をする
アルコールチェックを正しく運用するには、従業員全体への制度の周知とルールの徹底が欠かせません。なぜチェックが必要なのか、どのような手順で行うのかをしっかり説明し、理解と協力を得ることが重要です。定期的な説明会の実施やマニュアルの配布を通じて、現場での混乱や対応の抜け漏れを防ぎましょう。
業務増加による負担を軽減できる体制を整える
アルコールチェック義務化によって、安全運転管理者やドライバーの業務負担は増えています。そのため、効率よく運用できる体制づくりが重要です。例えば、クラウド上で測定結果を自動記録・保存できるサービスを導入すれば、紙での記録や確認作業の手間を削減できます。複数拠点のデータも一元管理できるため、ミスや記録漏れの防止にもつながります。
アルコールチェック義務を怠った場合の罰則規定
アルコールチェックを怠ることは、飲酒運転を見逃すリスクに直結します。万が一事故や摘発が発生すれば、運転者本人だけではなく、車両提供者や同乗者、酒類の提供者にも厳しい罰則が科される可能性があります。
<運転者・関係者に対する罰則一覧>
区分 | 対象 | 罰則 | 違反点数 |
酒気帯び運転(0.15〜0.25mg/L未満) | 運転者 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 13点(90日免停) |
車両提供者 | 同上 | – | |
同乗者・酒類提供者 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 | – | |
酒気帯び運転(0.25mg/L以上) | 運転者 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 25点(免許取消・欠格2年) |
車両提供者 | 同上 | – | |
同乗者・酒類提供者 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 | – | |
酒酔い運転 | 運転者 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 35点(免許取消・欠格3年) |
車両提供者 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | – | |
同乗者・酒類提供者 | 同上 | – |
▼外部リンク:警視庁「飲酒運転の罰則等」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/torishimari/inshu_info/inshu_bassoku.html
アルコールチェックを自動化・一元管理できる「ALPiT」
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アルコールチェック義務化に対応する体制に整えよう
アルコールチェックの義務化により、安全運転管理体制の見直しが必要となりました。リスクから企業を守るためにも、管理者の選任や記録体制の整備、適切な機器の導入が欠かせません。クラウド型システムの活用により、業務の効率化も図れます。確実な対応で、安全運転と法令遵守を両立させましょう。
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