【2025年】工場の省エネ対策最前線│効果的な方法と導入手順を徹底解説

更新日:2025年09月02日
工場と木
コラム

国際的な社会課題となっているエネルギー問題。その対策として、省エネへの関心が高まっています。工場においても重要な課題ですが、具体的にどのようなアクションを起こせば良いか悩む企業も少なくありません。そこで今回は、工場が省エネに取り組む必要性や、実施の手順を解説します。さらに、省エネを実現するために役立つ空調や照明の管理システムも紹介します。

工場の省エネ対策が重要な理由とは

工場と省エネのイメージ

 

エネルギー価格の高騰に加え、企業に求められるCO2削減。製造業はエネルギーに関する深刻な課題を抱えていることから、工場の省エネ対策が重要です。

エネルギー価格が高騰しているから

近年、化石燃料や電力などのエネルギー価格の上昇が企業経営に大きな影響を与えています。エネルギー価格は社会情勢や経済の動向によって不安定であり、企業にとって予測困難な要素となっています。また、原油・石炭・天然ガスの価格は2050年まで値上がりが続くと予測されており、製造業のエネルギー費用全体も今後増加が見込まれます。

 

加えて日本はエネルギー資源をほぼ全て輸入に依存しているため、エネルギー価格の変動が経済に与える影響は大きく、安定的なエネルギー供給の確保が重要な課題です。このような背景から、省エネルギーの取り組みは製造業にとって非常に重要な課題であり、効率的なエネルギー利用とコスト削減が急務といえます。

 

参考:新電力ネット│天然ガス価格の推移

CO2削減の要求が高まっているから

近年、世界各国で温暖化対策が強化され、企業にもその取り組みが求められています。特にCO2排出量が増加している工場では、政府からの規制や、パリ協定に代表される国際的な目標が影響する可能性が高く、企業はこれに対応しなければなりません。

 

2020年には日本でも「2050年カーボンニュートラル宣言」が出され、日本でも大手企業を中心にCO2削減への取り組みが本格化しています。こうした取り組みを進めるには、省エネルギー対策が不可欠です。

工場で省エネ対策を行うメリット

省エネのイメージ

 

工場で省エネ対策を実施すれば、コスト削減、企業価値の向上といったメリットがあります。

コスト削減を実現できる

省エネ対策によってエネルギーの使用量が減れば、直接的なコスト削減が可能です。具体的には効率の良い設備への切り替えや運転条件の最適化によって、電力消費量や燃料使用量を抑えることができるでしょう。

 

省エネ対策には初期投資が必要な場合もありますが、継続的なコスト削減効果により、比較的早期に投資回収が可能です。また短期的なコスト削減にとどまらず、中長期的には企業の競争力強化にも寄与します。

設備寿命を延長できる

設備運用の最適化や制御システムの導入により、設備の寿命を延ばすことが可能です。これにより長期的なメンテナンスコストや設備の故障リスクを減少させ、設備の維持管理コストの削減にもつながります。効率的な運用によって、設備の稼働状況を最適化し、無駄な修理や交換を避けることができるため、トータルコストの削減が期待できます。

企業価値が向上する

ゼロカーボン社会に向けた取り組みの一環として、省エネルギー対策は二酸化炭素(CO2)の排出量削減にも大きく貢献します。企業が省エネを実施することで、環境負荷を減らし、持続可能な社会の実現に向けた一歩を踏み出すことができます。

 

また環境に優しい企業活動は、企業の社会的責任(CSR)を果たすことにつながります。消費者や取引先からの信頼獲得にもつながり、企業のブランド価値向上にも寄与するでしょう。

工場の省エネ対策の現状と課題

工場の省エネを考える男性

具体的に企業はどういった省エネ対策を取り入れているのか、そして課題はどこにあるのか。工場の省エネの現状と課題を紹介します。

工場の省エネ対策の現状

一般財団法人省エネルギーセンターは、企業の省エネルギー診断を行い、さまざまな改善提案を提供しています。2019年から2023年度にかけて実施された診断結果に基づく改善提案の中で、最も多かったのはコンプレッサに関する提案(25.4%)でした。次いで、空調・換気設備(19.7%)が続き、その他の設備では照明(14.3%)、デマンド管理その他(10.4%)、ボイラ・給湯・配管(8.2%)、生産設備等(8.1%)、再生可能エネルギー(7.3%)、受変電設備(6.6%)の順で改善提案が行われました。

工場の省エネ対策の課題

省エネルギー対策を導入する際にはいくつかの課題があります。まず、LED照明やインバータ制御機器などは導入コストがかかり、初期投資のハードルが高くなる点が挙げられます。しかし、補助金を活用することで、その負担を軽減することは可能です。

 

次に、エネルギー使用の「見える化」が不十分であることも課題です。電力などの消費量に関するデータは存在しているものの、設備単位でのエネルギー消費量を細かく把握できていない工場も少なくありません。データが不足していると省エネ対策を実施すべきポイントを見極めるのが難しくなります。

 

さらに、現場の意識改革も重要な課題です。現場の作業員が「省エネ=業務負担が増えるもの」と認識していると、省エネ対策が浸透しにくくなります。そのため、現場の理解と協力を得るための取り組みが必要です。

 

最後に、省エネと生産性のバランスを取ることも課題です。エネルギー消費量を抑えるべく機械の稼働を減らすと生産量が低下してしまったり、空調を絞ることで作業環境が悪化したりするため、適切なバランスを見極めながら導入を進めることが求められます。

工場の省エネ対策の施策例

工場のLED灯

工場で実際に行われている施策の例は、以下の通りです。

 

設備分類 主な省エネ対策
照明設備 ・LED照明への切替/照明の削減

・不要時の消灯

・LED誘導灯への更新

空調・換気設備 ・設定温度の適正化/高効率機器への更新

・室外機フィン、室内機フィルタの清掃

・不要時の停止

・外気、日射等外部負荷の低減

コンプレッサ ・吐出圧力の適性か確認

・エア配管等の漏れ防止

・高効率機器への更新

生産設備等 ・ポンプ、ファン、ブロアのインバータ化

・設備の不要時停止/生産設備

・モータ等の更新

ボイラ・給湯・配管 ・配管等の保温

・断熱/高効率機器への更新

・空気比の適性化

受変電設備 ・高効率機器への更新、統合と休止
デマンド管理・給排水・その他 ・デマンド監視装置の導入、活用

・自動販売機の更新等

再生可能エネルギー ・太陽光発電設備の導入

 

工場で省エネ対策を導入する手順

 

工場の省エネを検討する社員

 

省エネ対策は基本的に現状の把握からスタートし、Plan(計画)Do(実施)Check(検証)Act(見直し)のサイクルを継続的に続けていくことが大切です。

①現状のエネルギー消費状況を把握する

電力や燃料、ガス、水の使用データを把握することが、省エネ対策を進める第一歩となります。より細かくエネルギー使用状況を把握するには、エネルギー管理システムの導入やエネルギー管理装置の設置が必要です。これにより、リアルタイムでエネルギー消費を監視し、効率的な対策が可能になります。

 

また、エネルギー診断(省エネ診断)を利用する選択肢もあります。経済産業省や地方自治体では、省エネ相談窓口や中小企業向けの「エネルギー利用最適化診断等事業」といったサービスが提供され、専門家に工場のエネルギー消費を診断してもらうことができます。このサービスでは、希望に応じて3種類の省エネ診断を実施しています。

 

①省エネクイック診断:クイックな診断

②省エネ最適化診断:工場・ビル全体の包括的な診断

③省エネお助け:診断後の省エネの取り組みサポートまで

 

参考:省エネポータルサイト│中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費

②目標設定と優先順位を設定する

次に省エネ目標を設定し、どの対策を優先的に導入するかを決めます。取り組みの第一歩としては、技術的なハードルが低く日常業務などに組み込んで実施できるものからスタートするのがポイントです。次のステップとして、専門家のアドバイスによって自らできる取り組み、設備投資が必要な大掛かりな取り組みへと段階的に進めていくのが望ましいでしょう。

 

参考:一般財団法人省エネルギーセンター│カーボンニュートラルへの第一歩 工場の省エネルギーガイドブック2024

③対策の実施

省エネ対策を実施する際は、設備の導入や運用改善が欠かせません。必要に応じてIoT技術などの最新技術を活用し、効率的なエネルギー運用を実現しましょう。

④効果のモニタリングと改善

対策を実施した後は、効果をモニタリングし、エネルギー使用量の削減状況やコストの変化を確認することが重要です。これにより、対策が実際にどれだけ効果を上げているかを評価することができます。また定期的にレビューを行い、状況に応じて改善策を追加することで、さらなる効率化やコスト削減を実現できます。

工場の省エネ対策に使える補助金・助成金

補助金のイメージ

 

省エネ対策にかかる初期投資のハードルを下げるためにも、補助金や助成金の活用は欠かせないポイント。企業が利用できる省エネ補助金について紹介します。以下に挙げた他にも自社が申請できる補助金などがないか最新情報をチェックし、余裕を持って申請手続きを進めましょう。

省エネ・非化石転換補助金

省エネ設備・機器と非化石エネルギーを使用する設備・機器の更新費用等の一部を支援する補助金です。以下4つの型のうち自社がどれに当てはまるのか確認したうえで、詳細情報をチェックしましょう。

 

(I)工場・事業場型:工場・事業所全体で大幅な省エネを測る取り組みに対して補助

(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型:電化やより低炭素な燃料への転換を伴う機器への更新が補助される

(Ⅲ)設備単位型:あらかじめリストに登録された製品を選択し、設備単位で更新を行う取り組みが補助される

(Ⅳ)EMS型:EMSの導入を補助

 

参考:環境共創イニシアチブ│省エネ設備への更新支援(省エネ・非化石転換補助金)

2025年版

省エネルギー投資促進支援事業費補助金

省エネルギー投資促進支援事業費補助金は、企業が省エネルギー性能の高い設備を導入する際に、その費用の一部を国が補助する制度です。この補助金によって省エネルギー設備を導入しやすくなり、エネルギー消費の効率化とCO₂排出量の削減を推進できます。この取り組みは持続可能な社会の実現を目指すものであり、環境負荷の低減に貢献しています。

 

<主な補助対象設備>

  • 高効率空調
  • 産業ヒートポンプ
  • 業務用給湯器
  • 高性能ボイラ
  • 高効率コージェネレーション
  • 変圧器
  • 冷凍冷房設備
  • 産業用モータ
  • 制御機能付きLED照明器具
  • 工作機械
  • プラスチック加工機械
  • 印刷機械
  • ダイカストマシン

 

上記設備の詳細や最新の補助対象設備一覧については、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)の公式サイトで確認できます。

 

 

<補助率と限度額>

  • 補助率:対象設備の導入費用の1/3以内
  • 補助金限度額
    • 上限:1億円/事業全体
    • 下限:30万円/事業全体

 

 

<申請要件の一例>

  • 省エネルギー率が10%以上であること
  • 省エネルギー量が原油換算で1kl以上であること。
  • 経費当たり計画省エネルギー量が、補助対象経費1千万円当たり1kl以上であること。

 

なお、申請要件や補助対象設備、補助率などは年度や公募回によって変更される可能性があります。最新の情報や詳細な条件については、SIIの公式サイトで随時更新されている公募要領や関連資料を確認してください。

 

一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)│省エネルギー投資促進支援事業費補助金

工場の省エネ対策におすすめしたいアイリスオーヤマのサービス

工場の省エネ対策で、空調設備や照明の切り替えをする企業は多く、ファーストステップとしても導入しやすいといえます。そこでおすすめしたいのがアイリスオーヤマの3つのサービスです。

空調設備で工場の省エネ対策をするなら│エナジーセーバー

 

工場の省エネ対策の中でも、空調設備の改善は非常に重要です。空調設備は工場全体の消費電力の大きな割合を占めることが多く、多くの工場がその見直しや最適化に取り組んでいます。 空調設備の省エネ化は、他の設備に比べて取り組みやすい場合が多い一方で、高効率機器への更新には多額の初期投資が必要です。

 

そこでおすすめしたいのが、「エナジーセーバー」という空調管理システムです。エナジーセーバーは、既存のパッケージエアコンまたは冷凍機にそのまま導入できるシステムで、設定温度と室温のムラを少なくし、設定温度に対し無駄な稼働を削減し、省エネ効果を発揮します。

 

設定温度自体は変更せず、快適な環境を維持しながら省エネを実現できるため、暑さや寒さを我慢することなくエネルギー効率を向上させることが可能です。実際にエナジーセーバーを導入した工場では、夏季の消費電力を約30%削減できたという事例もあります。

 

<エナジーセーバーの詳細はこちら>

エナジーセーバー(空調管理システム)| アイリスオーヤマ
アイリスオーヤマの空調最適化省エネソリューションのご紹介。AIが空調の温度センサーをコントロールして運転を最適化し、大幅な省エネ・節電を実現。ご使用のエアコンにエナジーセーバーを取り付...

工場の照明効率を向上|LiCONEX(ライコネックス)

 

アイリスオーヤマのLICONEX

 

工場の照明を見直すなら、アイリスオーヤマの無線制御システム「LiCONEX(ライコネックス)」が最適です。このシステムを導入することで、スマホやタブレットを使って照明のオン・オフや調光を簡単に制御でき、現場の状況に応じた柔軟な照明管理が可能になります。その結果、エネルギーの無駄を削減し、トータルコストを最大62%削減することができます。

特に、工場では作業エリアごとに異なる照明条件が求められるため、「LiCONEX」のようなシステムを活用することで、不要な照明の使用を抑えながら、作業環境の快適性を維持することができます。

 

「LiCONEX」は、アイリスオーヤマ独自の通信方式「メッシュリンク」を採用し、高速かつ安定した通信を実現しています。また、エリアごとや日時に応じた照明制御が可能で、快適な環境を維持しながら省エネを推進することが可能です。

 

さらに、無線方式を採用しているため配線工事が不要で、施工負担を軽減できます。既存の建物でも短期間で導入でき、レイアウト変更にも柔軟に対応可能です。工場内の設備レイアウト変更や生産ラインの最適化にも適応できるため、運用の効率化に貢献します。

 

〈LiCONEXの詳細はこちら〉

無線制御システムLiCONEX(ライコネックス)|法人向けLED照明|ライティング事業|法人のお客様|アイリスオーヤマ
LiCONEX(ライコネックス)はお手持ちのタブレットやスマートフォン、パソコンから照明の入切や調光ができる、アイリスオーヤマの無線制御システムです。空間の状況や用途に合わせて照明の明...

 

工場の省エネ対策で大きくコスト削減を!自社に合った対策を進めよう

 

省エネに意欲的な社員たち

工場における省エネ対策の重要性は、工場における省エネ対策の重要性は、今後さらに高まることが予想されます。企業のコスト削減や社会的責任など、さまざまな背景がありますが、重要なのは具体的なアクションを起こすことです。省エネに取り組む工場の改善事例を参考にしながら、自社の工場で改善すべき点や、省エネを実現するための具体的な対策を検討し、着実に実施していきましょう。

 

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