2022年4月より、一定の条件を満たす白ナンバー車両にもアルコールチェックの義務が課されました。企業の安全管理体制を見直す契機ともなる重要な制度です。本記事では、白ナンバーと緑ナンバーとの違いをはじめ、アルコールチェック義務化の背景や対象範囲、実施方法、違反時の罰則まで詳しく解説します。
白ナンバーと緑ナンバーの車両の違いとは?
事業用自動車は、運送業などで有償で人や物を運ぶ場合に使用され、緑色のナンバープレートが付与されます。一方、自家用自動車は、個人や企業が無償で使用する車両で、白色のナンバープレートが付与されます。
【白ナンバーと緑ナンバーの違い】
項目 | 白ナンバー | 緑ナンバー |
用途 | 自家用(自社の荷物や人員の無償輸送) | 事業用(他社の荷物や旅客を有償で輸送)※タクシー・バス・トラックなど |
ナンバープレートの色 | 白地に緑文字 | 緑地に白文字 |
運行管理者の選任 | 必須ではないが、一定条件下で義務化 | 必須 |
アルコールチェック義務 | 2022年4月より、一定台数以上の事業所で義務化 | 常時義務化 |
白ナンバーがアルコールチェック義務化になった経緯
緑ナンバーに続いて白ナンバーも条件次第ではアルコールチェック義務化の対象となりました。義務化になった経緯を見ていきましょう。
緑ナンバーのアルコールチェック義務化は2011年5月から
2011年5月1日より、緑ナンバーの事業用自動車を使用する運送事業者に対して、運転者の酒気帯びの有無の確認が義務化されました。運行管理者は、運転の前後にアルコールチェッカー(アルコール検知器)を用いて運転者の酒気帯びの有無を確認し、その結果を記録・保存することが求められるようになりました。
白ナンバーのアルコールチェック義務化は2022年4月から
2022年4月1日からは、白ナンバーの社用車を一定台数以上使用する事業所に対し、運転者の酒気帯びの有無を目視などで確認し、その結果を記録・保存することが義務付けられました。さらに2023年12月1日からは、アルコールチェッカーを用いた確認が追加で義務化。これらの措置は、飲酒運転による重大事故を防止し、交通安全を確保することを目的に導入されたものです。
白ナンバーのアルコールチェックが義務化された背景
2021年6月、千葉県八街市で白ナンバーのトラックによる飲酒運転事故が発生し、児童5人が死傷するという痛ましい事件が起きました。運転者からは基準値を超えるアルコールが検出されましたが、当時は白ナンバー車両に対するアルコールチェックの義務はありませんでした。
この事故を契機に、白ナンバー事業者においても飲酒運転対策の必要性が強く認識されるようになり、再発防止を目的として道路交通法施行規則が改正され、アルコールチェックの義務化が決定されたのです。
白ナンバーでもアルコールチェック義務化の対象となるケース
先述のように、白ナンバー車両でも、条件次第ではアルコールチェックの義務対象となります。では、どのようなケースが該当するのか詳しく確認しましょう。
一定の条件を満たす白ナンバー車両を使用する事業所
白ナンバーの車であっても、一定台数以上を使用している事業所にはアルコールチェックの義務が課されます。これは、安全運転管理者の選任義務が発生することによるものです。
適用条件は以下のいずれかに該当する場合です。
- 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用している
- その他の自動車を5台以上使用している
※二輪車(大型・普通)は0.5台として換算
これらの台数は、事業所ごと(自動車の使用の本拠)にカウントされ、業種を問わず適用されます。
白ナンバーでもアルコールチェックが必要な例
具体的な例として、以下のようなケースがアルコールチェック義務の対象となります。
- 営業車を5台以上保有している企業の営業所
- 従業員送迎用のマイクロバス(乗車定員11人以上)を1台使用している工場
- 配送用のバンを5台以上運用している小売店
なお、以下のような車両も台数の算定に含まれるため注意が必要です。
- 自動二輪車は0.5台として換算される
- 従業員のマイカーを事業所で業務使用している場合
- 業務で使用しているリース車両
- 業務に使用するフォークリフト
これらを含めた車両台数が一定以上となる場合、安全運転管理者の選任とアルコールチェックの実施が義務付けられます。
アルコールチェック義務化対象の事業所が対応すべきこと
アルコールチェックが義務化された事業所は、具体的に何をすべきかを見ていきましょう。
安全運転管理者を選任する
アルコールチェックの義務化に伴い、対象となる事業所では「安全運転管理者」の選任が必須とされています。この制度では、運転者の酒気帯びの有無を確認することが、安全運転管理者の明確な責務として定められています。
まだ選任していない場合は、所轄の警察署に「安全運転管理者選任届出書」を提出する必要があります。すでに管理者を選任している事業所では、アルコールチェックを新たな業務として追加し、体制を整えることが求められます。
アルコールチェッカーを導入する
アルコールチェック義務化の対象となる事業所は、国家公安委員会が定める基準を満たしたアルコールチェッカーを導入する必要があります。このチェッカーには、呼気中のアルコールの有無や濃度を音や光、数値などで示す機能が求められています。
制度への対応を怠ると、法令違反として罰則の対象となる可能性があるため、十分な注意が必要です。適切な機器の選定はもちろん、日常的な点検や保守も欠かさず行うことが、安全管理体制を維持する上で重要となります。
記録・保存方法を確立する
アルコールチェックの結果は、法律により記録し、1年間保存することが義務付けられています。記録の形式は紙でもデータでも構いませんが、確実に保管できる体制を整えておく必要があります。
保存方法に応じて、ファイルや専用フォルダを用意し、紛失や情報漏洩を防ぐ対策も講じましょう。また、緊急時の対応やチェック手順をまとめたマニュアルを作成しておくことで、現場での混乱を防ぎ、円滑な運用につなげられます。
アルコールチェックの実施方法
アルコールチェックの義務対象となる事業所は、体制づくりと運用方法の整備が求められます。アルコールチェックの実施方法を紹介します。
①アルコールチェッカーで測定する
アルコールチェックは、運転前後にアルコールチェッカーを使用して実施します。呼気中のアルコール濃度を測定することで、酒気帯びの有無を客観的に判断することが可能です。
チェックは安全運転管理者が立ち会い、チェッカーによる測定だけでなく、ドライバーの様子を目視で確認することが基本とされています。
ろれつが回らない、まっすぐ歩けない、質問への受け答えがおかしいなどの異常が見られた場合は、直ちに運転を中止させる必要があります。顔色や声の調子といった変化にも注意を払いましょう。
▼内部リンク「アルコールチェッカー 使い方」
②測定結果・内容を記録する
アルコールチェックの結果は、確認内容とあわせて必ず記録し、適切に保存する必要があります。万が一、アルコールが検出された場合には、運転者は直ちに安全運転管理者へ報告し、その指示を仰がなければなりません。
安全運転管理者は、状況に応じて運転の中止を命じるなど、安全確保を最優先に対応することが求められます。こうした記録を残しておくことは、トラブルが発生した際の証明として役立つだけでなく、コンプライアンスの強化にもつながります。
③記録を保存する
アルコールチェックの記録は、不備がないかを確認した上で整理し、法律に従って1年間保存する必要があります。保存方法は紙でもデータでも問題ありませんが、確実に管理できる体制を整えることが重要です。記録は後から確認しやすいように、月単位で整理して保存すると良いでしょう。
アルコールチェックで記録すべき8項目
アルコールチェックを実施する際には、法令で定められた8つの項目を漏れなく記録する必要があります。具体的には、以下の内容が対象です。
- 確認者の氏名
- 運転者の氏名
- 運転者が業務で使用する車両の登録番号または識別可能な記号・番号
- 確認を行った日時
- 確認方法(アルコールチェッカーの使用状況、非対面の場合は通話手段なども記載)
- 酒気帯びの有無
- 安全運転管理者から運転者への指示内容
- その他必要と判断される事項(例:特記事項や異常時の対応など)
記録が必要な項目や記録簿のテンプレートについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▼内部リンク
アルコールチェック記録簿に書く内容とは?運用・管理方法と効率化のカギ
アルコールチェック義務化違反の罰則
アルコールチェックを怠った場合や飲酒運転が発覚した場合には、厳しい罰則が科されます。罰則についても確認をしておきましょう。
安全運転管理者の業務違反の罰則
現時点では、アルコールチェックを実施しなかったことに対する直接的な罰則は設けられていません。しかし、アルコールチェックは安全運転管理者の業務として義務付けられているため、これを怠ると「業務違反」として扱われる可能性があります。結果として、行政指導や企業全体への影響につながるおそれもあるため、注意が必要です。
違反種別 | 内容 | 罰則 |
是正措置命令違反 | 改善命令に従わず、必要な是正措置を取らなかった場合 | 50万円以下の罰金 |
解任命令違反 | 解任命令に従わず管理者を継続・再選任した場合 | 50万円以下の罰金 |
【アルコールチェック未実施に関する措置と罰則】
飲酒運転の罰則
飲酒運転は、運転者本人だけでなく、企業や同乗者にも罰則が科される重大な違反です。アルコールチェックを怠れば、飲酒の見逃しにつながり、事故や検挙のリスクを高めるおそれがあります。特に、呼気中のアルコール濃度に応じて、以下のように重い罰則が定められている点にも注意が必要です。
違反種別 | アルコール基準値 | 行政処分 | 罰則 |
酒気帯び運転 | 0.15~0.25mg/L未満 | 免許停止(90日) | 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 |
酒気帯び運転 | 0.25mg/L以上 | 免許取消(欠格期間2年) | 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 |
酒酔い運転 | 数値基準なし(ふらつき等の状態) | 免許取消(欠格期間3年) | 5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金 |
罰則を回避するには、日常的な確認と企業としての管理体制の徹底が重要です。
アルコールチェック実施のために押さえておくべきポイント
アルコールチェックを正しい手順で行わないと、安全運転管理者の業務違反とされ、企業や管理者が法的責任を問われるおそれがあります。ここでは、対象者・実施方法・代替手段の3点に絞って、基本的な運用上の注意点を紹介します。
業務運転をする人を対象とする
アルコールチェックの対象は、あくまで業務として車両を運転する社員に限定されます。営業車での顧客訪問や配送業務などが該当し、私的な車の利用や通勤のみの運転は対象外です。対象者の基準を社内で明確に定め、誤った運用を防ぐことが重要です。
チェックは運転前後に1日2回、原則対面で実施
アルコールチェックは、運転前と運転後の計2回実施する必要があります。原則として、安全運転管理者が対面でアルコールチェッカーと目視を併用して確認を行います。
やむを得ず不在の場合は代行による実施も可能ですが、その場合でも最終的な責任は安全運転管理者にあることを忘れてはなりません。
対面できない場合は代替手段と記録保存が必要
直行直帰や出張などで対面での確認が難しい場合には、ビデオ通話を利用したアルコールチェックが必要とされています。電話やメッセージだけによる確認は認められていないため、十分に注意が必要です。
また、チェック結果は1年間の保存が義務付けられており、あわせて改ざんを防ぐための体制づくりも求められます。
アルコール義務化対応のチェッカーなら、アイリスオーヤマの「ALPiT(アルピット)」
ALPiT(アルピット)は、アルコールチェック義務化に対応した高精度な検知器です。コンパクトな設計で携帯しやすく、息を吹きかけるだけで簡単に測定できます。専用アプリと連携することで、測定データは自動的にクラウドへアップロードされ、記録の手間を軽減します。
さらに、顔認証による本人確認機能も搭載されており、なりすまし防止にも有効です。拠点ごとのデータも一括で管理できるため、記録作業の省力化と全体の管理効率向上に貢献します。
白ナンバーのアルコールチェック義務化について正しく知り、早めに対応しよう
白ナンバーの車両も、一定の条件を満たす場合にはアルコールチェックが義務付けられています。違反があった際には、企業や安全運転管理者が処罰の対象となるため、十分な注意が必要です。体制の整備と記録の管理を徹底し、信頼性の高い機器を用いて確実な運用を心がけましょう。
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