中小企業の生産性向上と賃上げを支援する「業務改善助成金」。令和7年度から助成率の変更や新たな募集枠の設置など、制度が見直されました。本記事では、業務改善助成金の概要、対象となる事業者、助成内容の変更点、そして申請期限まで詳しく解説します。助成金を活用して業務効率を高め、従業員の待遇改善につなげたい企業の方は、ぜひ参考にしてください。

業務改善助成金とは?
業務改善助成金とは、中小企業の生産性向上や業務効率化を支援するものです。生産性向上に資する設備投資などを実施し業務改善を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引上げる中小企業・小規模事業者に対し、その業務改善に要した経費の一部を助成します。
対象となるのは、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が50円以内の中小企業や小規模事業者です。
令和5年度の交付決定件数は13,603件でした。令和6年度では最大で600万円までの助成を受けられ、中小企業の賃金引上げを支援する重要な制度として注目されています。
令和7年度の概算要求額 は22億円で、閣議決定や国会審議を経て3月31日に予算が成立しました。
令和7年度の業務改善助成金の主な変更点
概算要求では、最低賃金の地域間格差への配慮などから以下の見直しが行われました。主な変更点は以下の3つです。
①最低賃金別助成率の区分の変更
事業場内最低賃金 | 助成率 | |
見直し前 | 900円未満 | 10分の9 |
900円以上950円未満 | 5分の4
(生産性要件による増額:10分の9) |
|
950円以上 | 4分の3
(生産性要件による増額:5分の4) |
|
見直し後 | 1,000円未満 | 5分の4 |
1,000円以上 | 4分の3 |
②生産性要件を満たした場合の増額措置を廃止
これまでは、生産性の向上を条件に助成率が引上げられる「生産性要件」が設けられていましたが、令和7年度からはこの要件が廃止されます。
③特定時期に追加募集枠を設置予定(推進枠)
夏から秋にかけての賃上げや募集時期を重点化し、特定の時期に追加募集枠(推進枠)を設ける予定です。
※助成金の具体的な内容や申請要件は、年度初めの4月前後に厚生労働省から公表されます。最新情報は厚生労働省の公式サイトで確認してください。
令和7年度の業務改善助成金の申請期限と事業完了期限
令和7年度の業務改善助成金の申請期限は令和7年12月26日、事業完了期限は令和8年1月31日です。
令和6年度から同一事業場の申請は年1回までになりました。助成金は予算の範囲内で運用されるため、交付件数次第では期限よりも前に募集がストップされることもあり得ます。申請はなるべく早く進めましょう。なお、申請書類は当日必着です。
令和7年は特定時期に推進枠として追加募集枠を設置予定です。見直し事項には、「夏と秋の賃上げ・募集時期の重点化」が含まれているため、この時期に追加募集設置が予想されています。
<事業完了期限とは>
①導入機器等の納品日
②導入機器等の支払完了日(銀行振込の振込日。クレジットカード等の場合は口座の引き落とし日)
③賃金引上げ日(就業規則等の改正日)
①~③のいずれか遅い日が事業完了期限となります。
業務改善助成金の支給要件
業務改善助成金はどのような事業者が申請できるのか、支給要件を解説します。
対象事業者
以下3つの基本要件をすべて満たす場合に申請が可能です。
【基本要件】
・中小企業・小規模事業者であること
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
なお中小企業・小規模事業者の定義は業種によって異なります。
<例>
製造業や建設業:資本金3億円以下または従業員300人以下
小売業や飲食店:資本金5,000万円以下または従業員50人以下
特例事業者
以下のア、イのいずれかに該当する事業者を特例事業者とし、いずれかに該当すれば女性上限額の拡大・助成対象経費の拡大(助成上限額の区分10人以上)が受けられます。
ア.賃金要件
事業場内最低賃金が950円未満の事業場に係る申請を行う事業者
イ.物価高騰等要件
原材料費の高騰など社会的・経済的慣行の変化等の外的要因により、申請前3ヵ月間のうち任意の1月の利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が、前年同期に比べ、3ポイント以上低下している事業者
※「%ポイント(パーセントポイント)」とは、パーセントで表された2つの数値の差を表す単位
・イに該当するものとして申請をする場合は、申請時に事業活動の状況に関する申出書の提出が必要です。
業務改善助成金の助成金額と助成率
次に、どれくらいの金額が助成されるのかを解説します。令和7年から助成率が変更されるため、しっかりチェックしておきましょう。
助成上限額
引上げる賃金額と対象労働者数に応じて、助成上限額が設定されています。以下は、令和7年度の助成上限額の概要です。
賃金引上げ額 | 引上げる労働者数 | 上限額(一般の事業者) | 上限額(事業場規模30人未満) |
30円以上 | 1人 | 30万円 | 60万円 |
30円以上 | 2~3人 | 50万円 | 90万円 |
30円以上 | 4~6人 | 70万円 | 100万円 |
30円以上 | 7人以上 | 100万円 | 120万円 |
45円以上 | 1人 | 45万円 | 80万円 |
45円以上 | 2~3人 | 70万円 | 110万円 |
45円以上 | 4~6人 | 100万円 | 140万円 |
45円以上 | 7人以上 | 150万円 | 160万円 |
60円以上 | 1人 | 60万円 | 110万円 |
60円以上 | 2~3人 | 90万円 | 160万円 |
60円以上 | 4~6人 | 150万円 | 190万円 |
60円以上 | 7人以上 | 230万円 | 230万円 |
90円以上 | 1人 | 90万円 | 170万円 |
90円以上 | 2~3人 | 150万円 | 240万円 |
90円以上 | 4~6人 | 270万円 | 290万円 |
90円以上 | 7人以上 | 450万円 | 450万円 |
90円以上 | 10人以上 | 600万円 | 600万円 |
特例事業者(事業場内最低賃金が1,000円未満、または物価高騰等の要件を満たす事業者)で、10人以上の労働者の賃金を引上げる場合、上限額が最大600万円に拡大されます。
助成率
助成率は事業場内最低賃金額によって決まります。令和7年の見直しでは助成率区分を1,000円を軸に変更し、生産性要件を満たした場合の増額措置が廃止に。事業場内最低賃金が1,000円未満の場合は助成率が5分の4、1,000円以上なら助成率は4分の3となります。
業務改善助成金を申請する際の注意点
申請前に押さえておきたい注意点を解説します。事前にしっかり準備をして、スムーズな申請につなげましょう。
申請前に設備を購入しない
業務改善助成金の申請前に設備を購入したものの、助成金の対象外になってしまうケースは少なくありません。こういった事態を防ぐには、必ず交付決定を受けてから購入する必要があります。なお、パソコンや車両は原則対象外です。ただし例外的に「物価高騰要件」に該当すれば対象となります。
物価高騰要件とは、原材料費の高騰や社会的・経済的環境の変化要因によって前年同月と比較して利益率が3%以上低下している場合に当てはまります。
必要書類に不備がないか確認する
申請書の記入漏れ・誤字脱字 に注意しましょう。労働者名簿・賃金台帳の最新データ を添付すること、見積書の取得(設備投資の場合)も忘れずに行います。
申請期限を守る
申請受付期間は毎年度異なるため、厚生労働省の最新情報を確認することが大切です。予算の上限に達すると早期終了する場合があるので、できるだけ早く申請するのがベストといえます。
オンライン申請が可能か確認する
地域によっては郵送・窓口提出が必要な場合があります。不明点は管轄の労働局・ハローワークに事前相談 するとスムーズです。
業務改善助成金の申請から助成金受給までの流れ
以下、業務改善助成金申請から受給までの流れを示します。ポイントは、賃金引上げや設備導入のタイミングです。必ず交付決定後に実施しましょう。
申請前の準備をする
■対象事業者の確認
事業場内最低賃金が 1,000円未満 の場合、または 物価高騰等の特例要件 を満たしているか、そして事業場内最低賃金と地域最低賃金を確認します。
■助成対象となる経費の準備
生産性向上につながる設備投資(機械・システム導入、業務効率化ソフトなど)が対象です。すでに購入済みのものや、賃金引上げ計画前に契約したものは対象外となるため、注意してください。
■賃金引上げ計画の策定
何円引上げるか、何人の労働者を対象にするかを決定し、それに応じた助成金の上限額を確認します。
申請手続きをする
■必要書類の準備
・交付申請書(厚生労働省の公式サイトからダウンロード)
・事業実施計画書(賃金引上げ・設備投資の詳細)
・ 労働者名簿・賃金台帳(直近のもの)
・ 生産性向上のための投資に関する資料(見積書など)
■管轄の労働局またはハローワークへ提出
オンライン申請 または 郵送・持参 で提出(方法は地域による)します。 申請内容に不備がないか、事前にしっかり確認しましょう。
■審査・交付決定
労働局が審査し、適正と判断されたら 交付決定通知 が届きます。なお申請から交付決定には1ヵ月ほどを要します。 交付決定前に購入・導入した設備は助成対象外になるので注意してください。
事業を実施する(設備導入・賃金引上げ)
■設備の購入・導入
交付決定後、計画に基づき設備を購入・導入を進めます。証拠書類(領収書、納品書、写真など)は必ず保管してください。
■賃金引上げの実施
・計画通りに労働者の賃金引上げを実施し、賃金引上げ後の給与明細や賃金台帳を保管します。
助成金の支給申請をする
■助成金支給申請書の提出
賃金引上げ・設備導入が完了したら、事業実績報告書(様式第9号)と支給申請書を都道府県労働局に提出します。 添付に必要な必要書類(領収書、給与明細、賃金台帳など)も準備してください。事業完了日から起算して1ヵ月を経過する日、あるいは翌年度の4月10日のいずれか早い日が提出期限です。
■ 交付額確定・助成金の支給
労働局が審査し、適正と判断されたら助成額の確定と支給決定の通知が送られてきます。後日、支給申請書(様式第13号)に基づいて助成金が支給されます。
■ 引上げた賃金の維持
引上げた賃金は 少なくとも1年間 維持する必要があります。維持できているか確認のため、追加書類の提出を求められる場合があるためです。
業務改善助成金の活用例|清掃ロボットの導入
業務改善助成金の活用方法は事業者によってさまざまですが、その一例として清掃ロボットの導入が挙げられます。清掃ロボットを導入すれば、これまで人の手で行ってきた業務を自動化できます。管理や手入れの時間や手間を減らすだけではなく、人件費削減や清掃作業の均一化が可能です。
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Whiz i アイリスエディション
Whiz iは、清掃コストを最大77%削減できる清掃ロボットです。オフィスや店舗、工場など幅広い施設で導入されています。清掃ルートを設定して、スタートボタンを押すだけで自動清掃が可能。センサーが障害物を検知して回避する安全設計です。テニスコート2面分(約500㎡)を約1時間で清掃できます。
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業務改善助成金を活用して持続的な成長を
業務改善助成金は、中小企業の賃上げや業務効率化を後押しする重要な制度です。令和7年度は助成率の見直しや追加募集枠の設置など、制度が変更されるため、最新情報をチェックし、早めの申請準備が求められます。助成金を活用し、企業の成長と従業員の働きやすさを両立させるために、適切な計画を立てましょう。
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