GIGAスクール構想とは、文部科学省が推進するICT教育の取り組みです。児童生徒1人1台の端末整備や高速ネットワークの導入を通じ、個別に最適化された学びを実現します。本記事では、GIGAスクール構想の概要や目的、具体的な取り組み、現状と課題について詳しく解説。ICT教育の実現をサポートする電子黒板についても紹介します。
GIGAスクール構想とは
文部科学省が推進するGIGAスクール構想について、概要や目的を紹介します。
GIGAスクール構想の概要
GIGAスクール構想は、全国の学校におけるICT環境の整備を進め、子どもたちに個別最適化された学びを提供する取り組みです。GIGAは「Global and Innovation Gateway for All」の略称。具体的には、児童生徒1人に1台の端末(PCやタブレット)の提供が進められています。この構想は、2019年に文部科学省が提唱し、各学校に端末の配備と高速大容量通信ネットワークの整備が進められています。
GIGAスクール構想の目的
GIGAスクール構想は、Society 5.0(※)時代を生きる子どもたちのために、ICTを活用した教育環境の実現を目指す取り組みです。個別最適化された学びを通じて、多様な子どもたちに平等な教育機会を提供し、誰もが学びやすい環境を整えることが目的です。
この構想により、基礎学力の向上だけでなく、情報活用能力や技術革新を支える力を育むことが期待されています。変化の激しい未来に対応できる人材を育てるためにも、ICT教育を基盤とした先端技術の活用が重要な要素となります。
※内閣府「Society 5.0」より
Society 5.0とは、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会として、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会をいう。
GIGAスクール構想の具体的な取り組み
GIGAスクール構想により、ICT教育の実現を目指すために、生徒一人ひとりが端末を使用できる環境整備が進められています。具体的にどのような取り組みがあるのか紹介します。
生徒1人1台端末の整備
GIGAスクール構想では、児童生徒1人1台の端末を整備し、学習活動を充実させることで、個別学習や双方向型授業の実現を目指しています。学習者用の端末導入により、生徒一人一人の理解度に応じた指導が可能となり、他者との意見交換の機会も増え、より深い学びが期待されています。
文部科学省は全国の学校に対して端末の配備補助を行い、令和5年度内にはほぼすべての自治体で端末の整備が完了しました。
高速かつ大容量のネットワーク整備
GIGAスクール構想の実現には、高速かつ大容量の通信ネットワークの整備が不可欠です。学校内では校内LANや充電保管庫の設置が進められ、補助金の支給も行われました。
また、新型コロナウイルスの影響を受け、家庭での学習環境を整えるために、家庭向けのLTE通信機器(モバイルルーター)の貸与も実施されました。令和5年に発表された調査結果によると、99.9%の学校で校内ネットワークの整備が完了し、高速通信の導入も進んでいます。
教員のICTを活用した指導力向上
GIGAスクール構想の実現には、教員のICT活用指導力の向上が欠かせません。ICT活用指導力とは、児童生徒がICTを適切に活用できるよう指導する力を指します。
文部科学省は、教員向けに「ICT活用指導力チェックリスト」を提供し、必要な能力を整理しています。また、教員がICTを効果的に活用した授業を実施できるよう、「ICT活用教育アドバイザー」や「GIGAスクールサポーター」などのサポート体制を整え、支援を強化しています。
ハードウェア・ソフトウェアの活用
GIGAスクール構想では、ハードウェア、ソフトウェア、指導体制の三位一体で教育環境を整備しています。学習端末(ハード)に加え、デジタル教科書やAIドリル(ソフト)の活用が重要です。
これらを基盤に、ICT教育アドバイザーや外部支援者による指導体制の整備が進められています。ハード、ソフト、指導体制が一体となることで、教育の質を向上させ、学びの効率化を加速することが期待されています。
GIGAスクール構想の現状
GIGAスクール構想による、1人1台端末や校内ネットワークの整備は、2020年以降、目標に近づきつつあります。現状についてみていきましょう。
1人1台端末の整備状況
文部科学省の調査によると、令和5年度末時点で全国の義務教育段階の児童生徒1人1台端末の整備が完了しました。具体的には以下の通りです。
- 児童生徒1人あたりの学習者用コンピュータ台数:1.1台
- 児童生徒数/学習者用コンピュータの合計台数:11,033,041人/11,847,856台
義務教育段階で1人1台端末の環境を経験した生徒が進学することを踏まえ、高等学校段階でも令和6年度にほぼすべての都道府県で1人1台端末の整備を実現することを目指しています。
出典:文部科学省「令和5年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)【確定値】」
出典:文部科学省「デジタル学習基盤に係る現状と課題の整理」
通信ネットワークの状況
令和6年3月時点で、97.8%の普通教室で無線LANやLTEなどによりインターネット接続が行われ、普通教室における日常的なICT活用が可能となっています。しかしながら、インターネットの通信速度(理論値)で1Gbps以上を確保している学校は、全体の81%にとどまっています。
さらに、多数の児童生徒が高頻度で端末を活用する場合においても、ネットワークを原因とする支障がほぼ生じない水準を満たす学校は、全体の2割にも満たないのが現状です。
出典:文部科学省「令和5年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)【確定値】」
出典:文部科学省「デジタル学習基盤に係る現状と課題の整理」
ICT支援員(情報通信技術支援員)の配置状況
ICT教育の普及には、教員がICTを活用した指導力を持つことが不可欠です。教員の指導力を向上させるため、GIGAスクール構想では外部のICT指導員の設置を推進しています。目標として、4校に1人の指導員配置を目指しており、令和5年度末時点で全国で7,172人が配置され、目標の4.5人まで進んでいます。
約7割の自治体はICT指導員を配置しているものの、約3割の自治体では配置が行われていません。また4校に1人以上のICT指導員が配置されている自治体は、全体の約5割の自治体です。
出典:文部科学省「令和5年度ICT支援員(情報通信技術支援員)の配置状況」
SSO対応ソフトウェア導入状況の現状
SSO(シングルサインオン)とは、一度の認証で複数のサービスにアクセスできる仕組みです。ICTを活用することで、複数のアプリケーションにログインする機会が増えるため、SSOの導入により効率化が期待されます。
令和4年3月末時点で、SSOに対応可能なソフトウェアやコンテンツを導入している自治体の割合は以下の通りです。
- 学習支援ソフトウェア:73.4%
- AIドリルなどの反復学習教材:54.2%
- 学習資料・コンテンツ:40.7%
- 情報教育関連ソフト:21.1%
- 画像・映像編集ソフト:18.1%
SSO対応は主に学習支援系のソフトウェアに多く見られますが、画像編集や情報教育ソフトの導入は比較的少ないという現状があります。
出典:文部科学省「校内通信ネットワーク環境整備等に関する調査結果」
GIGAスクール構想実現の課題
GIGAスクール構想は進んでいる一方で、課題も浮き彫りになっています。GIGAスクール構想が抱える問題についても確認しておきましょう。
校内ネットワークの通信速度と不具合
ネットワークに不具合が発生する場面が複数確認されています。特に、全校やクラス単位で端末を利用する際に問題が発生するケースが見られます。令和4年度の調査時点では、約半数の自治体がネットワークの不具合を抱えていました。
文部科学省はネットワーク環境の評価(アセスメント)の実施を推奨していますが、実施済みの自治体は5割程度にとどまっています。端末の⽇常的な利用やデジタル教科書の導入が進む中で、ネットワーク速度の向上が必要であり、改善が急務とされています。
導入するソフトウェアが自治体・学校ごとに異なる
自治体ごとに異なるソフトウェアが使用されていることが、問題を引き起こしています。OSとしては、Windows、ChromeOS、iPadOSが使われており、授業支援ツールも各自治体ごとに異なります。このため、転校や卒業時に学習データを引き継げないことが多く、学習の継続性に支障をきたすことも少なくありません。
また、教員も転勤後に異なるソフトウェアに適応する必要があり、教材や操作スキルを再習得する負担が生じる場合があります。
教員のICT活用のスキル不足
教員のICT活用スキルが不十分であることも課題の一つです。多くの教員は時間的な余裕がなく、パソコン操作に不安を感じている状況です。また、年配の教員や管理職はICTへの積極性が低く、指導力に差が見られることがあります。教員のICTスキル向上には、研修などの定期的な支援が不可欠です。
GIGAスクール構想の事例
ここからは、GIGAスクール構想に基づくICT教育の実践事例をみていきましょう。小学校や高校における電子黒板の活用を中心に、ICTを活用した授業の取り組みとその効果について紹介します。
和歌山市立芦原小学校 (和歌山県)
和歌山市立芦原小学校(和歌山県)では、電子黒板を活用したICT教育を実施しています。電子黒板と画面を共有できるため、視覚的にわかりやすく理解しやすい環境が整っています。
さらに、電子黒板には手書き入力や文字変換機能があり、黒板に書くと分かりにくい図形や表もスタンプのように簡単に表示できるため、授業の効率化にも貢献。生徒の理解度アップにつながりました。
唐津市立鏡山小学校(佐賀県)
唐津市立鏡山小学校では、電子黒板に教材を大きく表示することで、生徒全員が内容を視覚的に確認しやすくなり、授業の理解度が向上しました。
また、画像やクイズ形式の質問を映し出せる機能を活用し、生徒の興味を引きつけることで、より魅力的な授業の展開をすることができています。
函館白百合学園高等学校(北海道)
函館白百合学園高等学校では、電子黒板に投影されたデジタル教材を活用し、教員がペンツールを使って重要な部分を強調したり、追加説明を手書きで書き込んだりして授業を行っています。これにより、生徒は視覚的に学習内容を理解しやすくなり、授業の効果がさらに高まっています。 ICT教育の実践例は、こちらでも紹介しています。 ICT教育の実践例5選|導入のメリット・デメリットと課題
Google の各種アプリやサービスが利用可能「アイリスオーヤマの電子黒板」
ICT教育におすすめのアイリスオーヤマの電子黒板について紹介します。電子黒板の導入を考えている学校はぜひ参考にしてみてください。
電子黒板の大きな特徴は以下の3つです。
- Googleの各種アプリが利用可能
Googleモバイルサービスが搭載されており、授業の質を向上させます。また、Google Workspace for Educationと連携可能で、授業での活用が広がります。
- シンプルな操作性
直感的な操作で、教師と生徒が使いやすく設計されています。カメラ・マイクが内蔵されており、PCやタブレットとワイヤレスで画面共有や相互操作が可能です。
- 創造性を育む新機能
手書きで書いた内容をWeb検索でき、画面を分割して表示できます。また、手書き文字を自動変換する機能も搭載しています。
<アイリスオーヤマの電子黒板の詳細はこちら>

GIGAスクール構想の実現でICT教育の向上を
GIGAスクール構想は、児童生徒1人1台の端末整備や高速ネットワークの構築を通じて、ICTを活用した教育の充実を目指す取り組みです。これにより、生徒一人ひとりに最適化された学びと平等な教育機会が提供されます。一方で、通信速度の問題や教員のICTスキル不足といった課題もあります。今後は指導力の向上や環境の整備のさらなる向上が求められるでしょう。
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