アルコールの基準値を正しく理解することは、飲酒運転を防ぐうえで重要です。基準を超えた場合には厳しい罰則があり、企業活動にも影響を及ぼします。この記事では、酒気帯び運転と酒酔い運転の基準値やそれぞれの違い、罰則を解説。義務化の対象となる企業向けにアルコールチェックの注意点や実施ポイントも紹介します。

アルコール基準値とは?酒気帯び運転・酒酔い運転の違い
アルコール基準値とは、飲酒運転の有無を判断するための目安です。酒気帯び運転と酒酔い運転は、この基準値や酩酊の程度によって区別されます。まずは飲酒運転になるアルコール基準値と、それぞれの違いを正しく理解しておきましょう。
酒気帯び運転の基準値は呼気1Lあたり0.15mg以上
酒気帯び運転とは、呼気1L中にアルコールが0.15mg以上含まれている状態を指します。たとえ自分では酔っていないと感じていても、基準値を超えていれば酒気帯び運転と見なされます。この行為は道路交通法に違反するものであり、反則金の支払いや免許停止など、重い処分を受ける可能性があります。
酒酔い運転は酩酊状態の有無で判断される
酒酔い運転とは、アルコール濃度の数値に関係なく、酩酊状態により正常な運転ができないと判断された場合に適用される違反です。警察官がその場で行う受け答えやふらつき、話し方などの確認を通じて、総合的に判断されます。
アルコール量が基準値を下回っていても、以下のような症状が見られると、酒酔い運転としてその場で検挙される可能性があるので注意しましょう。
- 直線の上をまっすぐ歩けない。
- 質問に対して会話が成り立たない、受け答えが曖昧になる。
- 呂律がはっきりせず、話し方に異常が見られる。
- 標識や信号などを正しく認識できない。
- 視線が定まらず、目の焦点が合っていない。
このような症状が出ていると、本人の自覚の有無にかかわらず重い処分を受けることになります。少量の飲酒でも運転には十分注意が必要です。
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飲酒運転の定義とは? 基準値や罰則、アルコールチェック義務化について解説
アルコール基準値を超えた場合の行政処分と罰則
アルコールの基準値を超えて運転をした場合、個人には厳しい行政処分や刑事罰が科されるほか、事業者にも重い責任が問われることがあります。ここでは、違反時の処分内容や罰則の違いについて詳しく解説します。
酒気帯び運転の行政処分と罰則
アルコール濃度が高くなるほど、免許停止や取り消しといった処分も重くなっていきます。過去に飲酒運転の違反歴がある場合や違反点数が多い人は、より厳しい処分を受ける可能性があります。
酒気帯び運転のアルコール濃度別の罰則・処分(※前歴なしの運転者の場合)
呼気中アルコール濃度 | 違反点数 | 行政処分 | 欠格期間 | 運転者の刑事罰 |
---|---|---|---|---|
0.15mg以上~0.25mg未満 | 13点 | 免許停止(90日) | ― | 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 |
0.25mg以上 | 25点 | 免許取り消し | 2年 | 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 |
※欠格期間:免許再取得不可期間
飲酒運転による罰則は、運転者本人だけでなく、その行為に関与した人物にも及びます。例えば、車を提供した人や同乗者、飲酒をさせた人も処罰の対象です。
飲酒運転に関与した者への罰則
立場 | 刑事罰 |
---|---|
車両等の提供者 | 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 |
酒類の提供者・車両の同乗者 | 2年以下の懲役 または 30万円以下の罰金 |
酒酔い運転の行政処分と罰則
先述したように、酒酔い運転はアルコール濃度の数値にかかわらず、運転に支障があると判断された場合に適用されます。症状によっては基準値未満でも対象となり、非常に重い罰則が科されます。免許の取り消しや長期間の欠格期間、高額な罰金、懲役刑など、処分は厳格です。
酒酔い運転に対する罰則・行政処分
違反内容 | 呼気中アルコール濃度 | 違反点数 | 行政処分 | 欠格期間 | 運転者の刑事罰 |
---|---|---|---|---|---|
酒酔い運転 | 基準値なし(状態で判断) | 35点 | 免許取り消し | 3年 | 5年以下の懲役 または 100万円以下の 罰金 |
※欠格期間:免許再取得不可期間
酒酔い運転についても、運転者だけでなく関与者にも厳しい罰則が設けられています。車両を提供した人や同乗者、飲酒をすすめた人も処罰の対象です。
酒酔い運転に関与した者への罰則
立場 | 刑事罰 |
---|---|
車両等の提供者 | 5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金 |
酒類の提供者・車両の同乗者 | 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金 |
飲酒運転による事業者に対する行政処分と罰則
従業員が業務中に飲酒運転を行えば、その責任は企業にも及びます。運転者本人の行為であっても、飲酒を黙認していたり、必要な指導を怠っていた場合には、企業に対しても行政処分が下される可能性があります。特に事故を起こした場合には、処分はさらに重くなり、企業の社会的信用にも大きな打撃を与えます。
そのため、アルコールチェックの徹底や飲酒に対する教育の強化が、重大なリスクを未然に防ぐ鍵となります。
飲酒運転に関する事業者への行政処分と罰則
違反内容 | 処分・罰則 |
---|---|
事業者が飲酒運転を下命・容認していた場合 | 14日間の事業停止 |
飲酒運転を伴う重大事故を起こし、かつ事業者が飲酒運転に係る指導監督義務を違反した場合 | 7日間の事業停止 |
事業者が飲酒運転に係る指導監督義務違反の場合 | 3日間の事業停止 |
運転者が飲酒運転を引き起こした場合 | 初違反:100日間の車両使用禁止/ 再違反:200日間の車両使用禁止 |
※出典:国土交通省「自動車運送事業者における飲酒運転防止マニュアル」
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アルコールチェックを怠った場合の罰則を解説|安全運転管理者にもペナルティはある?
アルコールチェックの義務化対象となる事業所
アルコールチェックの義務化対象となるのは、安全運転管理者の選任が必要な事業所です。
具体的には以下の通りです。
・乗車定員11人以上の自家用車を1台以上
・その他の自家用車を5台以上保有・使用している
バイクも台数に含まれ、大型・普通自動二輪車は1台あたり0.5台として換算されます。2025年2月時点では、それ以外の事業所に義務はありませんが、飲酒運転による企業リスクは大きいため、要件外でも自主的な導入が望ましいでしょう。
アルコールチェックの義務化の対象企業がするべきこと
アルコールチェックの義務化にともない、対象企業は管理体制の整備が必要です。ここでは、安全運転管理者の選任や記録の保管方法など、企業が対応すべきポイントを解説します。
安全運転管理者を選任する
アルコールチェックの義務化対象となる企業では、安全運転管理者の選任が必要です。さらに、使用車両が20台を超える事業所では、副安全運転管理者の選任も義務づけられています。
安全運転管理者は、酒気帯びの有無の確認や運行計画の管理などを担い、未選任や届出漏れがあった場合には罰則が科されることになります。
まずは、自社が対象となる台数や人員要件を満たしているかを確認し、主担当と副担当の配置体制を整えることが重要です。
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安全運転管理者とは│選任基準・資格要件・業務内容などわかりやすく解説
アルコールチェッカーを導入する
アルコールチェック義務化に対応するには、認定されたアルコールチェッカーの導入が不可欠です。使用する機器は、国家公安委員会が定めた基準を満たし、呼気中のアルコールを音や色、数値で示せる機能を備えている必要があります。
また、出張や直行直帰といった事業所以外での対応も想定し、携行用のアルコールチェッカーを準備しておくことも重要です。精度や使い勝手、保守管理も含めて、自社の運用に適した機器を選定しましょう。
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アルコールチェッカーの選び方|種類別・測定方法別・センサー別・機能別に紹介
管理体制とチェックフローを構築する
アルコールチェックを確実に実施するためには、社内で明確な管理体制とチェックフローを構築する必要があります。法律によりアルコールチェックは義務化されていますが、具体的な運用ルールは各事業所に委ねられています。
特に、安全運転管理者が不在のときや直行直帰、検知時の対応など、さまざまなケースを想定した手順を明文化しておくことが重要です。
また、全従業員が迷わず適切に対応できるように、ルールを社内で共有し、継続的に見直せる体制を整えることが求められます。
チェック結果の記録と保管を徹底する
アルコールチェックは、実施するだけでなく結果を記録し、1年間保管することが法律で義務づけられています。記録には、運転者名、車両番号、確認日時、確認者名、確認方法、酒気帯びの有無などの項目を含める必要があります。
紙媒体でもデータ形式でも、自社に合った様式で管理することは可能ですが、保管体制が不十分な場合には法令違反と見なされるおそれがあるため、十分な注意が必要です。
日々の運用で記録漏れがないよう、記入ルールや保管場所を明確にしておくことが重要です。
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アルコール基準値を超える原因と注意点
アルコールチェックでは、飲酒していなくても基準値を超える場合があります。直前の飲食やうがい薬、消毒液の使用がセンサーに反応する原因になるためです。
また、消臭剤や洗剤などのチェック環境の影響にも注意が必要です。センサーの種類によって精度に差があるため、用途に応じた機器の選定が求められます。
検知器は消耗品であるため、定期的な点検や交換を怠らないことが重要です。誤作動を防ぐために、除菌剤を検知器に直接使用するのは避けましょう。
測定結果に過度に依存せず、運転者の様子や体調の確認を併せて行うことが基本です。
誤検知を防ぐためのアルコールチェックのポイント
アルコールチェックで正確な結果を得るには、事前の注意が欠かせません。誤検知を防ぐための具体的なポイントを確認しておきましょう。
前日のアルコール摂取は控える
前日に飲酒したアルコールが体内に残っていると、翌朝のアルコールチェックで反応する可能性があります。例えば、ビール1缶(約20g)でも分解には3~4時間かかり、睡眠中は代謝が遅くなるため、翌朝までアルコールが残るケースも少なくありません。
検知器は微量のアルコールにも反応するため、本人の自覚がなくても基準値を超えていれば違反と判断される可能性があります。
そのため、翌日に運転の予定がある日は飲酒を控えるよう、社内であらかじめルールを明確にし、従業員に周知しておくことが重要です。
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アルコールが抜ける時間の計算方法|飲酒運転撲滅にはアルコールチェッカーの活用を
アルコールチェック直前の飲食は避ける
アルコールチェックの精度を高めるには、直前の飲食を避けることが重要です。発酵食品やノンアルコール飲料など、微量のアルコールを含む食品でもセンサーが反応し、誤検知につながる可能性があります。
こうした誤検知を防ぐには、飲食から15〜30分ほど時間を空けてから測定を行うことが効果的です。
また、対象となる食品や飲料を事前にリスト化し、ドライバーに周知・徹底させることで、より正確な運用が実現できます。
アルコールチェック前にうがいをする
アルコールチェックの前にうがいすることは、誤検知を防ぐために重要な手順のひとつです。食べ物や飲み物、口腔ケア用品の成分が口内に残っていると、アルコールチェッカーが反応してしまう可能性があります。
正確な測定を行うためには、水でしっかりと口をすすぎ、アルコールを含まない方法で口内を清潔に保つことが正確な測定につながります。
服用している薬を確認する
正確なアルコールチェックを行うには、服用している薬の成分にも注意を払う必要があります。一部の内服薬やシロップなどにはアルコールが含まれており、検知器が反応する原因になることがあります。
また、薬の種類によっては体内でアルコールに類似した物質を生成するものもあり、誤検知を引き起こす可能性も否定できません。
そのため、服薬中のドライバーには、運転前に医師や薬剤師に確認を取るよう促すことが重要です。
アルコールチェッカーに息を十分に吹きかける
アルコールチェッカーは、十分な量の呼気を吹きかけなければ正確な測定ができません。息が少ないと、検知が不十分となり、誤った結果が表示される可能性があります。
また、検知器の種類によって、息の吹きかけ方や所要時間が異なるため、使用前に取扱説明を確認しておくことが重要です。
全員に正しい使い方を周知することで、測定ミスを防ぐだけでなく、業務全体の安全性向上にもつながります。
アルコールチェックの課題と対策
アルコールチェックの運用においては、現場の負担や管理の手間が課題になりがちです。主な課題とその対策を紹介します。
安全管理者に大きな負担がかかる
安全運転管理者にかかる負担が増えることは、企業の大きな課題のひとつです。特に、ドライバーが多い企業や運転時間が不規則な現場では、管理者1人での対応が困難になるケースもあります。
対策としては、アルコールチェックを朝礼や終礼のルーティン業務に組み込んだり、補助者を育成して業務を分担したりする方法があります。また、外部のチェック代行サービスを活用することで、早朝・深夜の業務負担を軽減することも可能です。
結果の記録や修正に手間がかかる
アルコールチェックの結果記録や修正対応に手間がかかることは、管理業務における大きな負担のひとつです。記入ミスや確認漏れが起きやすく、結果の収集や再入力に多くの時間を取られてしまうことも少なくありません。
こうした課題に対しては、通信型の検知器を導入したり、クラウドで一元管理を行うことで、ミスを防ぎながら業務効率を向上させることが可能です。
ITツールを活用することで記録の精度が高まり、管理者とドライバー双方の負担軽減にもつながります。
アルコールチェックを効率化するクラウド管理サービス「ALPiT」
アルコールチェックの記録業務は、手書きや手入力では記入漏れやミスが発生しやすく、管理者にとって大きな負担となりがちです。
アルコールチェッククラウド管理サービス「ALPiT」は、携帯型アルコールチェッカーの計測データを自動でクラウド保存できる管理サービス。スマートフォンアプリと連携することで、測定後のデータを自動記録し、顔写真付きで不正防止にも対応しています。
管理者はクラウド上からリアルタイムで測定結果を確認できるため、記録の取りまとめや確認作業の手間を大幅に削減できます。また、検知器は定期的にセンサー交換が行われるため、常に高精度な測定環境が維持される点も特徴です。
〈ALPiTの問い合わせはこちら〉

アルコール基準値の正しい理解とチェック体制で安全管理を
飲酒運転のアルコール基準値や罰則を正しく理解し、チェックの誤検知や記録ミスを防ぐことが、企業のリスク管理に直結します。義務化されたアルコールチェックを確実に実施するためには、運用体制の整備も欠かせません。クラウド管理サービスの活用など、業務負担を軽減する工夫も取り入れながら、社内の安全意識を高めていきましょう。
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