近年、自社の工場にファクトリーオートメーションを導入する企業が増えています。その背景には、年々深刻化している労働力不足やグローバル化などが大きく関係しています。
自社の工場にも、ファクトリーオートメーションの導入を検討している企業や担当者も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、企業がファクトリーオートメーションを導入するメリットや課題などを解説します。
ファクトリーオートメーションとは
ファクトリーオートメーションとは、コンピュータ制御技術を用いて、工場での生産工程を自動化することです。英語のFactory Automationの頭文字をとり、「FA」と表現されることもあります。
ファクトリーオートメーションの歴史は古く、1950年代頃に登場しました。1960年代後半には、アメリカの企業が材料の運搬や組み立て作業などに、ロボットアームを活用しています。
1970年代になると、数値情報に基づき自動制御しながら加工を行うNC工作機が登場し、世界中でファクトリーオートメーションが広まりました。その後はインターネットの普及とともに急速に発展し、現在はAIやIoTが用いられています。
ファクトリーオートメーションが注目されている背景
ファクトリーオートメーションは時代とともに進化し、今や製造だけでなく、設計や検査、出荷などのさまざまな工程で用いられるようになりました。
多くの業界でファクトリーオートメーションが注目されている背景には、企業を取り巻く社会環境が深く関係しています。
■労働力が不足しているため
ファクトリーオートメーションは、人手不足を解消する手段の一つとして注目されています。
現在の日本は少子高齢化により、人手不足が深刻です。厚生労働省の「労働経済動向調査(令和3年8月)の概況」からも、製造業をはじめとする多くの業界が人手不足に陥っていることがわかっています。
企業には作業の一部をオートメーション化し、人手不足を解消しようとする狙いがあります。
■グローバル化に対応するため
ファクトリーオートメーションが注目されているもう一つの理由は、企業がグローバル化に対応するためです。近年は商品の量より質が求められている傾向にあります。
しかし、商品の品質向上には原材料費や人件費の増加が伴い、企業の経営を圧迫することになりかねません。
企業は経営の安定を維持しながら、高品質な商品を低コストで提供する必要があります。
ファクトリーオートメーションを導入し、かつては人が行っていた作業を機械に任せることで、グローバル市場での競争力を高めようとする狙いがあります。
企業がファクトリーオートメーションを導入するメリット
企業のなかには、人件費の高騰や生産性の低下などの課題を抱えているところがあるかもしれません。しかし、ファクトリーオートメーションを導入することにより、これまで抱えていた課題の解決につながる可能性があります。
■人件費の削減
自動化技術を採用した機械やロボットは、運搬・組み立て・検査・出荷といったさまざまな作業に対応可能です。
生産工程において人の手が必要な場合、人件費はその工程が増加するほど高まります。また、人手不足で新たな人材を獲得する場合は採用コストもかかるでしょう。
しかし、ファクトリーオートメーションの導入により、かつては人がおこなっていた作業が機械やロボットに任せられるため、人件費を削減できます。
■生産効率の向上
ファクトリーオートメーションは一度導入すれば、安定的な稼働が期待でき、生産効率が向上します。
生産工程においては、人よりも機械に頼ったほうが効率的なケースもあるでしょう。
人による作業は、体力的にも時間的にも限界があるため、24時間365日フル稼働するのは難しいという課題があります。休日に工場を停止すれば、その分生産できる商品数も制限されます。
それに対して、機械は長時間の連続作業や夜間の稼働も可能です。
■人為的ミスの削減
手作業の場合、個人の能力や集中力などの影響により、人為的なミスが発生するおそれがあります。ミスを減少させるためにダブルチェックなどの仕組みを導入すると、従業員一人当たりの業務負担が増えてしまうケースもあるでしょう。
機械やロボットはプログラム通りに作業するため、ヒューマンエラーを排除することが可能です。
また工場では、危険性や過酷さが伴う作業があるのも現状です。機械を利用することで安全性を確保できるため、従業員の満足度の向上も期待できます。
■品質の安定性の維持
近年は、商品の質をより重視する傾向にあり、企業は品質の一貫性を求められています。
しかし、人が製品を製造または検査する場合、品質にばらつきが生じる可能性があります。特に人手が不足している場合、高いスキルを持つ人材を確保しづらく、品質を維持することが難しくなります。
ファクトリーオートメーションはプログラムに従って稼働するため、品質の一貫性を確保できるのも導入するメリットの一つです。
ファクトリーオートメーションへの注目が高まっているなか、導入を検討する企業も増えています。しかし、導入にはコスト面や人材面での課題もあります。
■初期費用や維持費がかかる
自社にファクトリーオートメーションを導入するためには、設備の購入が必要です。価格は設備や規模によって異なりますが、一度に数百万円~数千万円かかるケースも珍しくありません。
コスト面で懸念があるのは、導入時だけではありません。導入後は設備を適切な状態で維持するために、メンテナンスも必要です。
また、設備の稼働には電力を要するため、企業には導入後も含めた予算計画が求められます。
■従業員の不安を増幅させる可能性がある
近年、先進技術の進歩により、将来的には人間の仕事の一部が自動化される可能性が議論されています。「自分の仕事がなくなるのではないか?」と不安を抱えている人も少なくありません。
ファクトリーオートメーションの導入もまた、従業員に同様の不安を与えるリスクがあります。
ファクトリーオートメーションは、人手不足の解消に寄与し、企業に多くのメリットをもたらします。一方で、従業員がネガティブな感情を抱く可能性があることを認識しておく必要があります。
■デジタル人材の育成が必要になる
ファクトリーオートメーションを導入すると人に代わって稼働できるため、これまでのように従業員のスキルや能力の育成にかける手間を削減できます。
しかし、導入するにあたって、設備に精通した人材の育成が必要です。
また、システムを稼働し続けるには、デジタル技術に詳しい人材が必要です。運用や管理に関する専門知識を持つデジタル人材を確保するには、採用コストや育成コストがかかります。
デジタル人材の確保は、社外の専門家に依頼する方法もあります。どちらにしても、デジタル人材に関連する費用を予算計画に組み込むことが重要です。
ファクトリーオートメーションを実現するための基本的な手順
ファクトリーオートメーションをスムーズに導入するために、基本的な手順を確認しておきましょう。基本的な手順は、次のとおりです。
- 現状の把握
- 課題と問題点の洗い出し
- 課題の改善
それでは、各ステップを詳しく解説します。
■1:現状の把握
ファクトリーオートメーションの導入を検討する際は、まず現状を詳細に把握することが重要です。
現在の生産ラインにおける課題や問題点を明確にしましょう。これには、作業の手順、従業員の配置、機械の利用状況などが含まれます。
現状を把握するためには、データが必要です。IoTツールを適切に活用してデータを収集し、分析することがおすすめです。IoTツールをクラウドと連携させることで、データの収集や分析を効率的に実施できるようになります。
■2:課題と問題点の洗い出し
ステップ2では、生産プロセスにおける課題と問題点を洗い出しましょう。たとえば「生産ラインの効率が悪い」「従業員一人当たりの負担が大きい」「安定した品質を維持できていない」などです。
データだけでは把握しきれない問題が発生している可能性を考慮し、現場の担当者とコミュニケーションをとり、聞き取りをしましょう。課題や問題点を洗い出すことで、改善策が見えやすくなります。
■3:課題の改善
ステップ3では、ステップ2で洗い出した課題や問題点に対する改善策を検討しましょう。
たとえば商品の出荷に時間がかかっている場合は、梱包作業の自動化で作業時間を短縮できます。品質の安定性に問題がある場合、センサー技術を活用して検品プロセスを向上させるのも一つの方法です。
また、ファクトリーオートメーションを導入した後に新たな課題が浮かび上がるケースもあります。設備の不具合や故障で生産ラインが停止する可能性もあるため、そのようなリスクに備える対策を検討しておくことも重要です。
ファクトリーオートメーションの導入事例
ここからは、ファクトリーオートメーションの導入事例を3社ご紹介します。
■株式会社ライジング 様
大阪府に工場を持つ株式会社ライジング様では、部品の運搬作業にファクトリーオートメーションを導入しました。今回導入したのは、当社の「Keenbot」です。
これまでも、大きな部品の運搬には自動搬送車の「AGV」を活用していました。しかし、通路の狭さがネックとなり、自動化できていませんでした。
部品を取りに行く従業員の作業負担を考慮し、飲食店で配膳ロボットとして活用されている「Keenbot」の導入に至った経緯があります。
「Keenbot」は80cmの狭い通路でも走行できるため、従業員が部品を取りに行く手間が省けました。「Keenbot」の導入効果は高く、生産効率も向上しました。
月126時間の運搬を代替!狭い通路でも部品運搬を自動化するファクトリーオートメーションの実現方法とは!?
■大翔トランスポート株式会社 様
東京都と栃木県に物流倉庫を持つ大翔トランスポート株式会社様では、当社の清掃ロボット「Whizi」と運搬ロボット「Keenbot」を導入しました。
これまでは、毎朝3.6時間以上を要して床の清掃を行っていましたが、清掃ロボット「Whiz i アイリスエディション」の導入によって床の清掃が不要になり、従業員の生産性が向上しています。
また、これまではコールセンターから倉庫にピッキングリストを運ぶ際に、従業員自らが動いていました。「Keenbot」は、効率的な運搬業務を実現し、従業員の残業時間削減にもつなげることができました。
人とロボットが共に発展する「ロボットフレンドリー」な物流倉庫を実現!清掃ロボット・運搬ロボットを同時導入した狙いとは?
■永伸商事 様
鳥取県に広い倉庫を持つ永伸商事様では、清掃作業に「Whiz i アイリスエディション」を導入しました。
日中は商品の出し入れのためにフォークリフトが頻繁に出入りするため、これまでは夜間に清掃作業を実施していました。また、清掃員を確保するには人件費もかかります。
「Whiz i アイリスエディション」を導入後は深夜帯に稼働させられるだけでなく、人件費の削減にもつながっています。
DXの一環として、広い倉庫の清掃に導入 ステークホルダーへのアピールにも
ファクトリーオートメーションに活用できるロボット
最後に、ファクトリーオートメーションに活用できる当社のロボットをご紹介します。
■清掃ロボット
当社では「Whiz i アイリスエディション」と「Scrubber 50 Pro アイリスエディション」の2種類の清掃ロボットを取り扱っています。
Whiz i アイリスエディション
「Whiz i アイリスエディション」は、業務の効率化と清掃品質を向上するDX清掃ロボットです。床の清掃をロボットに任せられるため、人手不足の解消だけでなく、清掃員に対する人件費も削減できます。
〈「Whiz i アイリスエディション」の詳細はこちら〉
Scrubber 50 Pro アイリスエディション
「Scrubber 50 Pro アイリスエディション」は、業務用全自動床洗浄ロボットです。タッチディスプレイを操作し、事前にスケジュールを設定しておけば、それに沿った清掃をおこないます。ゾーン別クリーニング機能があるため、選択した範囲のみを清掃することも可能です。
〈「Scrubber 50 Pro アイリスエディション」の詳細はこちら〉
■運搬ロボット
当社では「Keenbot」と「Delivery X1 アイリスエディション」といった2種類の運搬ロボットを取り扱っています。
Keenbot
「Keenbot」は、作業器具や軽荷物を運搬できるロボットです。ルートの障害物や人を回避できるため、部品の運搬を安心して任せられます。最小通路幅は55cmなので、狭い通路でも通行可能です。事前にタスクを登録しておけば自動で次のタスクに取り掛かるため、別の場所にも部品や商品を運搬できます。
〈「Keenbot」の詳細はこちら〉
Delivery X1 アイリスエディション
「Delivery X1 アイリスエディション」は、料理の配膳を目的として多くの店舗で活用されている配膳ロボットです。配膳だけでなく、工場における荷物の運搬にも活用することも可能です。目的地を選んで開始ボタンを押すだけなので、初めて扱う従業員でもすぐに慣れるでしょう。
〈「Delivery X1 アイリスエディション」の詳細はこちら〉
ファクトリーオートメーションを導入して生産効率を上げよう
ファクトリーオートメーションは、人手不足の解消やグローバル化への対応などを理由に、多くの企業が導入しています。導入すると生産効率が上がるだけでなく、従業員の働き方改革も実現できます。
機械やロボットはさまざまな種類があるため、導入による効果を高めるためには、自社に適したものを選ぶことが大切です。当社では2023年12月28日までの期間限定で、ロボットお試しキャンペーンを実施しています。
ファクトリーオートメーションを導入後、上手く運用できるか不安がある企業様はこの機会にぜひご活用ください。