温室効果ガスは地球温暖化の原因と考えられています。世界各国が温室効果ガスの削減を目指しており、企業も社会的責任として温室効果ガスの排出削減に取り組むことが求められています。
しかし、具体的なゴールが不透明な場合、計画を策定するのが難しいこともあるでしょう。企業はどの程度の削減を目指し、どのように取り組むべきかを考慮する必要があります。
本記事では、温室効果ガス削減について解説します。企業ができる温室効果ガス削減の方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
温室効果ガス削減目標とは?
温室効果ガス削減の目標は、2016年に制定されたパリ協定をもとに設定されました。この協定は、地球温暖化と二酸化炭素排出の増加を抑制し、世界全体で地球環境を保護することを目的としています。
なお、具体的な目標値は「世界の平均気温上昇を産業革命以前より2度より十分低く保つこと・さらには1.5度に抑える努力をすること」としています。
この目標に向けて、日本を含む多くの先進国が取り組んでいます。
※参考:国立環境研究所「パリ協定の長期目標に関する考察」
日本の温室効果ガス削減目標
世界的な目標を踏まえ、日本では温室効果ガスを削減するために2つの目標を設定しています。具体的な目標値を見ていきましょう。
■2030年に温室効果ガス一定率削減を実現
日本では、2030年までに2013年時点の温室効果ガス排出量より46%削減することを目指しています。2013年時点の温室効果ガスの排出量・吸収量は14.08%なので、2030年で7.60%にすることを目指す形です。つまり、将来的にほぼ半分に近い排出量を目指しているため、高い目標を設定していることがわかります。
また、加えて2030年までに100以上の脱炭素先行地域を創出する目標も掲げています。脱炭素先行地域とは、CO2排出を実質ゼロにし温室効果ガスの削減を先行して行う地域のことです。地方自治体などを中心に、脱炭素を進めていきます。この取り組みは”地域脱炭素ロードマップ”とも呼ばれており、地域拡大も目下の課題の一つです。
■2050年に脱炭素社会実現
日本では2050年には脱炭素社会実現、いわゆるカーボンニュートラルの実現も目標としています。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスを除去または吸収して、最終的な排出ゼロを実現することを指します。
現時点で温室効果ガスの排出量のほうが上回っていますが、温室効果ガスが発生する原因をさまざまな取り組みで減らすことで、カーボンニュートラルを実現します。
たとえば再生可能エネルギーへの代替えや省エネ活動、電動自転車の推進、森林吸収対策といったのもカーボンニュートラルの試みの一つです。
温室効果ガスの排出を減らすだけでなく、排出したガスを吸収する方法も検討されています。
温室効果ガス削減のために日本が行っている施策
温室効果ガスの削減に向け、日本は異なる部門ごとに対策を実施しています。さまざまな観点からアプローチし、大幅な削減を達成することを目指しています。
ここからは具体的な温室効果ガス削減の施策を部門ごとに解説します。
■産業部門・家庭部門・業務その他部門による炭素削減
産業部門には製造業や農業など、社会を支える産業が含まれています。産業部門の温室効果ガスの排出量は全体の3割を占め、高い傾向にあります。しかし省エネルギー対策やLED照明、再生可能エネルギーの活用などを導入することで、2013年度から2021年度までに19.5%の二酸化炭素削減を達成しました。
一般家庭を含む家庭部門では、住宅の省エネルギー対策を義務化し、断熱性能の向上などを行うことでエネルギー消費を削減しました。さらに、政府がLED照明の普及を支援したことで、家庭内のエネルギー消費も抑えられ、2013年度から2021年度までに24.8%の二酸化炭素削減に成功しました。
業務その他部門には、卸売業・小売業・医療・福祉・宿泊業・飲食サービス業などが含まれています。これらの部門でも建物や設備を省エネルギーなものに切り替えるなどの取り組みにより、2021年度は2013年度に比べて19.8%の二酸化炭素削減に成功しています。
※参考:環境省「2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について」(電気・熱配分後)
■運輸部門による燃料対策
運輸部門は、さまざまな産業を結ぶ不可欠な要素ですが、車両、船舶、航空機などを使用することで二酸化炭素が排出されます。特に、自家用車や貨物車両は排出量が多く、その改善が焦点とされてきました。
そこで自動車のガス排出量を削減するために、燃費の向上が追求されました。加えて、2020年度にはコロナ禍による輸送量の減少により大きく減少し、2013年度から2021年度にかけて17.6%の二酸化炭素排出量を削減しています。これから販売する新車に関しても、燃費の良い次世代自動車を半分以上の割合で普及させることを目標としています。
また、公共交通機関利用推進・エコドライブ推進・交通流対策などでも、多角的にガス排出量を抑制する対策を実施。運輸関係によるガス排出量をなるべく少なくするよう具体的な策が講じられています。
■エネルギー転換部門による再生可能エネルギーの活用
エネルギー転換部門は石炭、原油、天然ガスなどを使う火力発電から、温室効果ガスの排出量が少ない二次エネルギーへの転換を担当する部門です。火力発電はガス排出量が高いため、より環境に優しいエネルギー源に切り替える努力が行われています。
特に石炭と原油は温室効果ガスの排出量が著しいため、代わりに天然ガスや再生可能エネルギー、たとえば太陽光発電や風力発電への転換が進められています。
ただし、国全体のエネルギー需要は非常に大きく、完全に天然ガスや再生可能エネルギーだけで賄うことは難しいのが現状です。エネルギー不足を回避しつつ、引き続き火力発電も併用しながら転換を進めています。
また、原子力発電はガス排出量が低いため、その活用が注目されています。ただし、原子力発電に対する懸念も存在し、今後の運用についてはエネルギーや環境に関する議論が続いています。
温室効果ガス削減のために企業ができる取り組み
ここからは企業ができる具体的な取り組みを解説します。
■新しいLED照明を導入する
使用している照明を新しいLED照明にするのも、温室効果ガスの削減につながります。
また、電気代を節約できるため、企業自体にもメリットがあります。LED自体の寿命も長いため、照明設備の交換にかかるランニングコストも削減できるでしょう。
当社では、オフィスにぴったりなLEDベースライトから、顧客や取引先を迎えるエントランスのダウンライトまで、節電効果が高いLED照明を扱っています。
アイリスオーヤマ|法人向けLED照明
■省エネ機能の高い空調に変える
空調システムも多くの電力を消費する設備です。そのため、省エネ効果の高い空調システムに変更することで、温室効果ガスの削減に貢献できます。
しかし、すでに空調システムを設置しており、大規模な交換が予算的に難しいケースもあるでしょう。こうしたケースでは、空調最適化システムを導入する選択肢があります。
当社の「エナジーセーバー」は、既存の空調機に取り付けることで、AIが自動で空調を最適化します。室温を快適に保ちながら、過度な運転を制御するのが特徴です。
設置するだけで30〜50%の省エネ効果が期待できるため、電気代の節約にも寄与します。
アイリスオーヤマ|エナジーセーバー
■再生可能エネルギーを活用する
電力はオフィスや事業運営に欠かせない要素ですが、その使用には火力発電によるガス排出が伴います。そのため、排出量を削減したい場合、再生可能エネルギーの活用がおすすめです。
たとえば太陽光発電を導入すれば、自家発電が可能になり、電気料金の節約にもつながります。単純な節電方法も効果的ですが、大規模なガス削減を目指すのであれば、再生可能エネルギーの導入が有効でしょう。
また、再生可能エネルギーを導入すると社会的責任を示す一環として高く評価され、企業イメージにも良い影響を与えます。
最近ではオフィスの屋上や屋根に太陽光発電を設置する企業が増えています。
■社用車をEVに変える
もし社用車がガソリン自動車なら、電気自動車(EV)に切り替えることで、温室効果ガスの排出を削減できます。EV自動車ならガソリン自動車の約1/3まで排出量を減らすことが可能です。
ただし社用車をEV車に変えるのは、複数車を頻繁に稼働させる企業に向いています。たまにしか使わない車をEV社にしても排出削減効果は限定的であり、ほかの施策を検討したほうが効果的だといえるでしょう。
しかし、社用車を多く運用する企業では、ガス排出の削減率が高まるため、EVへの切り替えは効果的な対策となります。
温室効果ガス削減のために企業として出来る取り組みを始めよう
温室効果ガスの影響は将来的な地球環境を左右する事柄です。
日本は少なくとも2030年までに温室効果ガスの削減を、そして2050年までに脱炭素社会を実現する高い目標を掲げています。企業も社会の一員として、温室効果ガスの問題に取り組んでいくことが必要です。
企業がガス排出量の削減に取り組むことは、社会全体の排出量を減少させる重要な一歩となります。
企業の社会的責任の一環として、できる範囲から取り組みを始めてみましょう。