食品工場や飲食店など、飲食物を扱う上で、クレンリネスは重要な取り組みの一つです。クレンリネスとは、顧客の健康を守るために必要な衛生管理のことで、2020年6月から義務化されたHACCP(ハサップ)に深い関係があります。
本記事では、クレンリネスの意味や目的、実践手順などを解説します。クレンリネスの重要性を把握して、食品関連の問題を防ぎ、安心で安全な食の提供を目指しましょう。
クレンリネスとは
クレンリネス(Cleanliness)は、直訳すると「清潔さ」を意味し、施設内が清潔で快適な状態を指します。飲食業界では、清潔感が求められるため、クレンリネスという言葉がよく用いられています。
クレンリネスは、食品関連事業者にとって重要な行動指針「QSC」の一つです。「QSC」の「Quality(クオリティ):料理の品質」「Service(サービス):接客の質」「Cleanliness(クレンリネス:清潔さ)」の頭文字をとった言葉で、Cに該当するのがクレンリネスです。
クレンリネスとクリンネスとの違い
クレンリネスの類似用語に「クリンネス」があります。クリンネス(Cleanness)は、直訳すると「清浄」や「清浄度」という意味があり、食品工場の清潔さそのものを指す言葉です。クリンネスの目的は、清掃によって工場をきれいな状態にすることです。
一方のクレンリネスは、工場を清潔な状態に保つための行為や作業を指します。クレンリネスの目的はクリンネスの結果であり、清潔で快適な状態を維持させることです。クレンリネスとクリンネスの意味は似ていますが、その目的が異なります。
飲食工場がクレンリネスに取り組む目的
クレンリネスは主はに飲食業界で用いられていますが、飲食店だけではなく、食品工場など飲食物を扱う現場に浸透している概念です。食品工場がクレンリネスに取り組む目的は、工場を清潔に維持することで顧客の健康を守り、法律で義務化されている衛生管理を遵守することにあります。
■消費者の健康を守るため
食品工場がクレンリネスに取り組むことは、消費者の安全を担保することにつながります。
クレンリネスへの取り組みを怠ると、食中毒や異物混入などの事故が発生する可能性があるため、慎重に対処しなければなりません。
食品工場や飲食店といった食品関連事業者の責任で食品事故が発生した場合、食品衛生法違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金に科せられる可能性があります。さらに、食中毒を起こしたことがニュースやSNSを通じて拡散されれば、企業に大きな損害をもたらすおそれもあります。
飲食店が安心かつ安全なサービスを提供し続け、顧客の健康を守るためには、食品工場でのクレンリネスへの取り組みも欠かせません。
■法律で義務化されているため
2020年6月に改正された食品衛生法により、食品等事業者は「HACCP」に沿った衛生管理の取り組みが求められるようになりました。1年間の猶予期間を経て、2021年6月からはHACCPの導入と運用が完全に義務化されました。
HACCPとは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の頭文字をとった言葉で、食品製造や流通の工程管理で活用されているリスクマネジメント手法の一つです。
- Hazard Analysis=危害要因分析
- Critical Control Point=重要管理点
HACCPに沿った衛生管理が義務化された目的は、食品の安全性を確保することです。
農林水産省の「令和2年度 食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査結果」によると、HACCPの導入後「品質・安全性の向上」や「従業員の意識の向上」などの効果が見られた企業は60%以上でした。
HACCPに沿った衛生管理の導入による効果 | 割合 |
---|---|
品質・安全性の向上 | 82.4% |
従業員の意識の向上 | 65.9% |
企業の信用度やイメージの向上 | 48.9% |
クレームの減少 | 44.5% |
製品イメージの向上 | 30.6% |
事故対策コストの削減 | 27.7% |
取引の増加 | 18.2% |
製品ロスの削減 | 17.5% |
監査や査察の負担軽減 | 12.6% |
他社との差別化 | 11.3% |
製品の輸出が可能(有利) | 9.8% |
製品価格の上昇 | 4.6% |
その他 | 1.6% |
特に効果はない | 6.1% |
※出典元:農林水産省「令和2年度 食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査結果」
食品工場がHACCPに沿った衛生管理を徹底すると、さまざまな効果が期待できます。義務化されているにも関わらずHACCPを導入しなかった場合、各都道府県が定める条例による罰則や営業許可の更新不可などのペナルティを受ける可能性があるので注意しましょう。
HACCPに対応するにあたっては、食品の温度管理が極めて重要です。HACCPに沿った衛生管理を徹底するためには、IoT技術を活用して食品温度を管理するのも有効な手段です。
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クレンリネスの基本的な作業
クレンリネスを実現するためには、次のような基本的な作業の徹底が必要です。
■手洗い
クレンリネスの基本的な作業の一つは、従業員の徹底した手洗いです。手洗いの際は必ず石鹸を使用し、手のひらや指の間、爪、腕、肘までしっかりと洗う必要があります。
手洗いの方法は従業員任せっきりにせず、マニュアルの配布や研修を通じて徹底させましょう。たとえば、手洗い場に手洗いの具体的な方法を示したマニュアルを掲示する方法もあります。
また、手洗いはタイミングも重要です。手洗いの適切なタイミングの例は、次のとおりです。
- 作業前
- 食品を触った後
- 汚染区域から非汚染区域への移動時
- ゴミ出しの後
- トイレの後 など
従業員の手洗いが不十分だと、食中毒が発生するリスクもあります。手洗いのタイミングは工場でルール化し、すべての従業員間で徹底しましょう。
■清掃
工場を清潔な状態に保つためには、清掃も欠かせません。そもそもHACCPの観点から、食品工場は建設時に、できるだけ清掃しやすい床の状態にしておくことが理想とされています。排水しやすい勾配をつけるなどの工夫が必要で、もちろんできるだけ床に物を置かないといった意識付けも重要です。
■身だしなみ
工場で働く従業員の身だしなみは、髪の毛などの異物混入にもつながるため非常に重要です。作業時の身だしなみに関するマニュアルなどをわかりやすく掲示し、徹底できるようにしましょう。
エプロンや作業時の服が汚れた場合や、手袋が破れた場合にすぐに交換できるようにしておくことも重要です。
クレンリネスを実践する際のポイント
食品工場でクレンリネスを実践する際には、次のポイントを押さえておくことが大切です。
■マニュアルを作成する
衛生的な工場を目指すには、まず手洗いや清掃の方法に関するマニュアルを作成する必要があります。マニュアルを作成して基準を示すことで、従業員が取り組みやすくなるでしょう。
マニュアルには、清掃の頻度や掃除用具の収納場所など、各工程を具体的に示します。すべての従業員が同じレベルの清潔さを実現するために、細かい部分までマニュアル化することが大切です。
各工程の細かい部分までマニュアル化すると、どのような立場の従業員も同じレベルのクレンリネスを実践できるようになるでしょう。
■従業員を教育する
クレンリネスを徹底するためには従業員の理解を得て、意識して行動してもらうことが大切です。
手洗いや清掃などのマニュアルを作成しても、従業員が必要性を理解していなければ徹底されない可能性があります。マニュアルを作成した後は研修を実施し、従業員にクレンリネスの必要性を理解してもらいましょう。
また、過去には従業員の体調不良が原因で、食中毒が発生した事例もあります。
従業員の体調管理を徹底し、不安があるときは責任者に相談、必要に応じて休暇を取るよう指導しましょう。
■チェックリストを作成・活用する
マニュアルを作成し、従業員を教育した後は、徹底されているかを定期的に確認することも重要です。クレンリネスへの取り組みを定期的にチェックすることで、課題が見えやすくなり、より衛生環境が整った工場を目指すための改善策を検討できます。
取り組み状況を確認する際は、チェックリストを活用するのがおすすめです。チェックリストは清掃場所ごとに作成し、実際に作業した日時や担当者を記入する項目を設けます。
クレンリネスを実践する際の注意点
衛生管理は義務化されている内容もあるため、マニュアルはすべてを工場による独自基準で作成しないよう注意する必要があります。
■衛生管理は自己流で行わない
HACCPに沿った衛生管理を徹底すると、より食品の安全性を確保することが可能です。たとえば製造過程で食品事故が発生した場合、HACCPに基づいた管理ならば出荷前に対処できます。
しかし、HACCPに従った衛生管理が行われていない場合、罰則を受ける可能性があります。マニュアル作成時は、自己流ではなく必ずHACCPに基づいて作成することが重要です。
■衛生管理計画は一般衛生管理に沿って作成する
HACCPに沿った衛生管理を実施する際には、衛生管理計画の作成が必要です。衛生管理計画には、一般衛生管理のポイントを盛り込んで作成しましょう。一般衛生管理の主なポイントは、次のとおりです。
- 原材料の取り扱い
- 施設・工場の清潔維持
- 従業員の健康・衛生
各ポイントを詳しく解説します。
原材料の取り扱い
原材料の取り扱いに関するポイントは、次の2つです。
- 原材料の受け入れ確認
- 冷蔵・冷凍庫の温度管理
原材料を受け入れる際は、外観のにおいや包装の状態、表示、品温などを確認します。原材料が腐敗していたり、賞味期限が切れていたりする場合は、有害な菌が付着し、増殖している可能性があるためです。また、包装状態が悪い場合は、異物が混入している可能性もあります。
冷蔵・冷凍庫は、毎日決められた時間に温度を確認しましょう。温度管理が適切でない場合は、有害な菌の増殖や食品の劣化が懸念されます。原材料は、各原材料に適した温度で管理しましょう。
施設の清潔維持
施設の清潔維持に関するポイントは、次の3つです。
- 交差汚染・二次汚染の防止
- 器具などの洗浄・消毒・殺菌
- トイレの洗浄・消毒
生肉や生魚介類を保管・加工する際は、ほかの食品に有害な菌の汚染が拡大するおそれがあるため、調理器具は区分と用途を使い分けて、二次感染を防止しましょう。
汚れた調理器具は徹底的に洗浄し、消毒をする必要があります。保管場所も清潔に保つことが重要です。
トイレが不潔な状態だと、ノロウイルスや腸管出血性大腸菌などに汚染されるリスクが高まります。トイレの洗浄や消毒は毎日定期的に実施し、汚れ・汚物がないことを確認しておきましょう。
また、作業エリアに入る前に全身の消毒スペースを設置するほか、作業所内に菌を持ち込まないよう、トイレにはハンドソープや除菌用アルコール、ペーパータオルなどの備品を用意しておくことも大切です。
従業員の健康・衛生
従業員の健康・衛生に関するポイントは、次の2つです。
- 健康管理・衛生的作業着の着用
- 衛生的な手洗い
従業員の体調が優れなかったり、手指に傷があったりする場合、食品に菌や異物が混入する可能性があります。食品事故を防ぐために、従業員の体調や手指の傷、手荒れがないかを確認します。
また、作業着や作業靴、マスク、帽子など、従業員が身に着けるものも確認する必要があります。手には目に見えない有害な菌が付着しているおそれもあるため、作業開始時や終了時、食材を扱う前後など、適切なタイミングで手洗いを徹底しましょう。
クレンリネスを実現するなら清掃ロボットがおすすめ
飲食工場は人手不足が深刻化しているため、清掃に十分な時間をかけられないケースもあるでしょう。工場内を清潔に保ち、人手不足を解消するなら、清掃ロボットを活用するのも手段の一つです。
■Whiz i アイリスエディション
Whiz i アイリスエディションは均一な全面清掃により、空間を隅々まできれいに清掃できる清掃ロボットです。床を全面清掃することで、床面の菌やウイルスを2分の1、空気中の浮遊菌量を最大5分の1にまで低減できます。
当社の清掃ロボットを導入後、業務効率が約44%改善できた企業もあります。時間短縮により、清掃にかかるコストを年間80万円削減できた例もあるため、人手不足だけでなく、コスト削減も期待できるでしょう。
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■Scrubber 50 Pro アイリスエディション
Scrubber 50 Pro アイリスエディションは、業務用全自動床洗浄ロボットです。タッチディスプレイで、事前に清掃スケジュールを設定できます。事前に設定したスケジュール通りに清掃するため、清掃開始の操作は不要です。
ゾーン別クリーニング機能により、選択したエリアを重点的に清掃することが可能です。清掃後は自動的に定位置に戻って充電し、次の清掃に備えます。標準的なメンテナンスは毎月2時間もかからないため、手間なく効率的な清掃が実現できるでしょう。
〈Scrubber 50 Pro アイリスエディションの詳細はこちら〉
■BROIT
BROITは、水拭き清掃ができる自律走行型ロボットです。セラミックタイルやビニル床などの水拭き清掃に加え、乾いた床の除塵清掃にも対応しています。本体直下に水を放出し、ホコリや塵、食べかす、液体などをブラシで掻き出し、本体後方で汚水を吸い取る仕組みです。
BROITは国内の自社工場で製造しているため、タイムリーな仕様改修や品質改善、メンテナンスサービス体制の一元化が実現できます。
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清掃ロボットを活用してクレンリネスを実現しよう
近年は少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少により、人手不足を課題に抱えている企業が増えています。特に製造業や工場では人手不足が深刻化しており、効率的にクレンリネスを実現したい企業も多いでしょう。
当社の清掃ロボットを活用すれば、従業員は本来の業務やほかの清掃に時間を充てられるため、効率的なクレンリネスの実現が可能です。
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