近年は、電気代の高騰や地球温暖化問題に対する意識の高まりから、多くの店舗が省エネ対策に取り組んでいます。最新技術を活用した省エネ設備の導入により、環境配慮型店舗を実現した店舗もあります。
「自社の店舗でも省エネ対策をしたい」と考えている企業や担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、店舗でできる省エネ対策を空調編と照明編に分けて解説します。また、省エネ対策で活用できる補助金も紹介するので、自社で取り組む際に役立ててください。
店舗における電力消費の実態
まずは、店舗でどのような設備にどのくらいの電力が消費されているかを確認しておきましょう。
資源エネルギー庁の「夏季の省エネ節電メニュー」と「冬季の省エネ節電メニュー」をもとに、店舗における電力消費の実態を紹介します。
なお、夏季は17時頃、冬季は1日間でのデータです。
■卸・小売店
卸・小売店では、年間を通して9時~21時頃の電力消費が多い傾向にあります。これは、店舗の営業時間とほぼ同じ時間帯です。
夏季と冬季では、設備ごとの電力消費の割合が異なります。
設備 | 夏季 | 冬季 |
---|---|---|
空調 | 26.2% | 22.2% |
照明 | 21.8% | 23.8% |
パソコン | 0.8% | 0.9% |
複合機 | 1.0% | 1.1% |
冷凍・冷蔵庫 | 6.6% | 5.8% |
ショーケース | 6.9% | 6.1% |
その他 | 36.8% | 40.2% |
夏季における電力消費の内訳は空調が26.2%、照明が21.8%と、空調と照明だけで約半分を占めています。一方で冷凍・冷蔵庫、ショーケースはそれぞれ7%程度と、電力消費はそれほど大きくありません。
冬季における電力消費の内訳は空調が22.2%、照明が23.8%です。卸・小売店の場合、夏季は空調、冬季は照明の電力消費が多いことがわかります。
■スーパーマーケット
スーパーマーケットでは、夏季9時~17時頃、冬季8時~20時頃の電力消費が多い傾向にあります。これは卸・小売店と同様に、店舗の営業時間とほとんど同じ時間帯です。
スーパーマーケットの夏季と冬季における電力消費の内訳は、次のとおりです。
設備 | 夏季 | 冬季 |
---|---|---|
空調 | 24.3% | 10.7% |
照明 | 16.3% | 21.4% |
パソコン | 0.2% | 0.3% |
複合機 | 0.5% | 0.6% |
冷凍・冷蔵庫 | 9.9% | 10.7% |
ショーケース | 37.8% | 40.8% |
その他 | 10.9% | 15.4% |
夏季における電力消費は、空調24.3%、照明16.3%、冷凍・冷蔵庫9.9%、ショーケース37.8%を合わせると全体の約88%を占めます。一方冬季における電力消費は、ショーケースだけで40%以上を占めている状況です。
スーパーマーケットは冷蔵や冷凍の食品を多く取り扱うため、全体的に冷凍・冷蔵庫、ショーケースの電力消費が多い傾向にあります。
■飲食店
飲食店では、夏季10時~20時頃、冬季16時~20時頃の電力消費が多い傾向にあります。これは卸・小売店やスーパーマーケットと同様に、飲食店の営業時間帯とほとんど同じです。
飲食店の夏季と冬季における電力消費の内訳は、次のとおりです。
設備 | 夏季 | 冬季 |
---|---|---|
空調 | 50.5% | 38.7% |
照明 | 17.4% | 21.0% |
パソコン | 0.3% | 0.4% |
複合機 | 0.3% | 0.4% |
冷凍・冷蔵庫 | 12.6% | 14.0% |
ショーケース | 2.0% | 2.2% |
調理機器 | 8.0% | 9.6% |
給湯 | 1.0% | 0.1% |
その他 | 8.7% | 13.5% |
夏季における電力消費は、空調だけで半分を占める状況です。冬季における消費電力は空調が少なくなる一方で、照明が4%近く上昇しています。また、飲食店では原材料や食品を保管するため、冷凍・冷蔵庫の消費電力も多い傾向にあります。
店舗の省エネ対策は空調と照明がカギ
資源エネルギー庁の資料からは、どの施設も空調と照明の消費電力が多いことがわかりました。そのため、電力消費が多い空調と照明に省エネ対策を講じることで、大きな効果が期待できるでしょう。
また、近年では、最新技術を活用して省エネや二酸化炭素の削減など、環境に配慮した「環境配慮型店舗」と呼ばれる店舗が増えています。
店舗が省エネ対策に取り組むことで、将来的には環境配慮型店舗を目指すことも可能です。ここからは店舗でできる省エネ対策として、空調と照明に関する具体的な取り組み方法を中心に解説していきます。
店舗における省エネ対策【空調編】
店舗では、年間を通して空調を使用するケースがほとんどです。特に暑さや寒さが厳しい時期はフル稼働するため、工夫次第で大きな省エネ対策につながる可能性があります。
■こまめな清掃を心がける
空調のフィルターはこまめに清掃し、ほこりやごみを取り除きましょう。
フィルターにはほこりやごみが付着しやすく、汚れたまま空調を稼働させると、エネルギー効率が低下します。エネルギー効率が悪化すると余分な電力が必要となり、結果的に電気代が上昇します。
空調のエネルギー効率を向上させるには、フィルターの頻繁な清掃が欠かせません。通常、2週間に1度の清掃が推奨されていますが、設置環境によっては清掃の頻度を適切に見極めることが大切です。
■空調機器を買い替える
近年、高い省エネ効果を持つ新しい空調機器が多く登場しているため、古い空調機器は買い替えるだけでも消費電力を効率化できるでしょう。
資源エネルギー庁の「省エネポータルサイト」によれば、10年前の機器を新しいものに取り替えるだけで、約17%の省エネ効果が期待できるとされています。
※出典元:資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
ただし、空調機器を買い替える際には高額な費用がかかるため、費用対効果を考える必要があります。
■空調制御システムを導入する
店舗で空調の省エネ対策に取り組む際には、空調制御システムを導入するのも一つの方法です。
空調制御システムとは、AIを活用して空調の省エネ行動を促進するシステムです。センサーによって集めたデータを解析し、快適な空調環境を維持しつつ、電力消費量の削減もできます。
空調制御システムを導入する際には、当社のエナジーセーバーをご検討ください。
エナジーセーバーは、室温をモニタリングした上でAIが冷暖房を制御し、電力消費量の大幅削減を実現する省エネソリューションです。既存の空調設備に設置できるため、空調機の買い替えが不要です。
特に店舗のような顧客ありきのビジネスでは、快適な店内環境を維持するために、空調や照明の使用が欠かせません。エナジーセーバーを設置すると空調の快適さを維持しつつ、最大50%の省エネ(※冷房時の最大削減率)を実現できます。
<エナジーセーバーに関するお問い合わせはこちら>
店舗における省エネ対策【照明編】
店舗では、照明の工夫次第で省エネ効果を高めることが可能です。
■LED照明に変更する
現在、店舗の照明に白熱灯や蛍光灯を使用している場合は、LED照明に変更することで省エネ効果が期待できます。LED照明の電球は白熱灯や蛍光灯よりも寿命が長いため、交換の手間やコストを削減できます。
また、LEDは点灯時の負荷が少なく、頻繁にオンやオフを繰り返しても寿命にほとんど影響がありません。白熱灯や蛍光灯よりも消費電力が少ないため、電気代の節約にもつながります。
当社では、LED一体型ベースライトや直管LEDランプなどの施設や店舗向けのLED照明を数多く取り扱っています。
LED照明への変更をご検討の場合は、ぜひ当社にお問い合わせください。
<業務用LED照明に関するお問い合わせはこちら>
■人感センサー付照明を導入する
照明の省エネ対策において、従業員に不要な照明を消すよう促す方法も有効です。しかし、消し忘れが発生することも考えられます。
このような消し忘れを防ぐために効果的なのが、人感センサー付き照明の導入です。
人感センサー付き照明は、人の存在をセンサーが感知し、自動でオンとオフを切り替える照明です。たとえば、トイレや倉庫など、常に使用されていない場所に人感センサー付き照明を取り入れることで、従業員の消し忘れを防ぎつつ、省エネ効果も期待できます。
当社では、人感センサー付き照明を豊富に取り揃えております。ぜひご検討ください。
<人感センサー付照明に関するお問い合わせはこちら>
■無線調光制御システムを導入する
省エネ対策の一環として調光システムを導入する方法があります。
調光システムとは、照明のオン・オフや明暗を細かくコントロールすることで、無駄な点灯を防ぎ、空間全体の消費電力を削減できるシステムです。
当社では、無線調光制御システムLiCONEX(ライコネックス)を取り扱っています。
LiCONEXは、当社独自の通信方式「メッシュリンク」を採用した照明の無線制御システムです。状況や用途に合わせて照明の明るさ・光色を調整することで、大幅な節電が実現できます。
白熱灯や蛍光灯などの従来光源に比べて、電気代を最大62%削減できるため、大きなコストカットを実現可能です。
<LiCONEXに関するお問い合わせはこちら>
店舗の省エネ対策に活用できる補助金
空調の買い替えやLED照明への変更など、省エネ対策の方法によっては高額なコストがかかるケースがあります。
省エネ対策には、自治体が設けている補助金を活用するのもよいでしょう。ただし、制度によっては予算枠に達し終了している可能性があるため、最新情報をご確認ください。
補助金・助成金のご案内
店舗における省エネ対策を成功させるポイント
省エネ対策に取り組んでも、必ず効果が出るとは限りません。取り組みの効果を高めるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
■現状を把握する
店舗の省エネ対策を成功させるためには、まず現状を把握することが重要です。全体の電力使用量と電気代をグラフ化した上で、過去と現在を比較すると、状況を把握しやすくなります。
電力使用量と電気代は、できれば設備ごとにグラフ化しましょう。どの設備にどれだけの電気代がかかっているかを把握しやすくなります。
省エネ対策に取り組んだあとも、定期的にグラフ化し、どのくらいの効果が出ているかを確認するようにしましょう。
■データを分析・対策を検討する
電力の使用状況は把握するだけでなく、分析することも重要です。店舗が複数ある場合、広さや営業時間などのさまざまな要素が影響するため、電力使用量や電気代に違いが発生します。
データを分析する際には総電力使用量から面積当たり、時間当たりの使用電力を算出しましょう。そうすることで、店舗ごとの課題が見えやすくなります。店舗ごとの無駄な使用電力が特定できれば、具体的な対策を検討しましょう。
■従業員の協力を得る
店舗の省エネ対策を実施する際には、社内全体で取り組む必要があります。具体的な省エネ対策を検討したあとは、すべての従業員に目的や方法などを周知し、協力を得ましょう。
従業員の意識を向上させるためには、電力使用量や電気代などを見える位置に張り出す方法もあります。複数の店舗がある場合は、店舗別の省エネ効果を張り出し、各店舗が一丸になって取り組める環境を作るのもよいでしょう。
店舗の省エネ対策はできることからスタートしよう
近年は、多くの家庭や企業が省エネ対策に取り組んでいます。店舗は空調と照明の消費電力が多いため、これらに対する取り組みを重点的に実施すれば、高い省エネ効果が期待できるでしょう。
しかし、空調の買い替えや無線制御システムの導入など、取り組み方法によっては高額なコストがかかります。省エネ対策を行う際は、自治体が設けている補助金の活用を検討しましょう。
省エネ対策に取り組んでも、すぐに効果が出るとは限りません。まずは取り組みやすい方法から実施し、徐々に大きい効果につなげていくことが大切です。