オフィスの適切な暖房設定温度│適切な温度に設定する方法やメリットを解説

2024.03.12
省エネ

従業員が働きやすいオフィス環境を実現するには、暖房の設定温度に配慮することが重要です。適切な温度に設定すると、省エネ効果や生産性の向上が期待できます。

本記事では、オフィスの適切な暖房の設定温度を解説します。暖房を適切な温度に設定するメリットや課題も紹介するので、快適なオフィス環境を実現する際に役立ててください。

オフィスの適切な暖房設定温度

オフィスの暖房設定温度は、従業員の快適さに大きく影響します。悩む際には、法律で示された基準を参考にするのも一つの方法です。

また、近年は省エネ意識が高まっていることから、環境省から適切な設定温度が推奨されています。

■法律では18℃以上、28℃以下が努力義務

オフィスの暖房設定温度について、労働安全衛生法の事務所衛生基準規則では適切な数値が規定されています。具体的には、空調設備のあるオフィスでは温度を18℃以上、28℃以下に維持するよう求められています。これは、あくまでも努力義務で、違反しても罰則等はありません。

しかし、オフィスの温度が10℃以下の場合、暖房などで温度を調節する義務があります。この義務に違反すると労働安全衛生法で定める罰則が適用され、法人と代表者には6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるおそれがあるため、注意が必要です。

※出典元:e-GOV法令検索「事務所衛生基準規則」

空調設備の温度を法律で定められた範囲内に設定しても、必ずしも常に快適な環境が確保されるわけではありません。暖房の設定温度は外気温や室内の人数、オフィスの状況などに合わせて調整する必要があります。

■環境省は冬の暖房設定温度を20℃に推奨

限りあるエネルギー資源を効率良く使用するために、国は各家庭や企業に省エネ対策を求めています。環境省が推奨している冬の暖房時の室温は、20℃です。暖房の設定温度を1℃低くすることで、約10%の消費電力の削減につながるとしています。

※出典元:環境省「オフィスでできる節電アクション」

ただし、環境省が提案する数値は、あくまでもオフィスにおける節電方法の一つです。設定温度を見直す際には、過去の設定温度変更例を収集・分析したり、従業員に対してアンケート調査を行うなど、関係者の理解と協力が必要になります。

オフィスの暖房を適切な温度に設定するメリット

多くの企業は、暖房の適切な温度設定に努めています。その背景には、省エネや生産性の向上といったさまざまな効果が期待できることが関係しています。

■省エネ効果が期待できる

オフィスの暖房を適切な温度に設定するメリットには、省エネ効果が期待できることがあげられます。

近年、燃料価格の高騰や社会情勢などの影響により、電気代が高騰しています。また、地球環境問題への意識が高まっており、省エネへの関心も増しています。

暖房の適切な温度設定は、余分な電力消費を抑制し、効果的な省エネ対策の一つです。環境省の「オフィスでできる節電アクション」によると、冬の暖房時の温度設定を1℃低くすると、約10%の消費電力削減につながるとしています。

また、暖房の使用時間を1日1時間減らした場合、年間で電気40.73kWh、原油にして10.26L CO2削減量16.8kgの省エネ効果が期待できます。

※出典元:環境省「オフィスでできる節電アクション」

■従業員の健康を守れる

適切な温度設定でオフィスの環境を守ることは、従業員の健康にも寄与します。オフィス内が暑すぎる、または寒すぎる場合、従業員が体調を崩してしまうおそれがあります。

特に冬季は、空気が乾燥しやすいため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすい時期です。社内で感染症が広がり、従業員の欠勤が増加すると、企業の全体的な生産性にも悪影響を及ぼす可能性があります。

オフィスで暖房を使用する際は、適切な温度を保ちつつ、湿度にも留意しましょう。オフィス内の乾燥を防ぎ、適切な湿度に維持するためには、加湿器の設置もおすすめです。

■生産性の向上につながる

企業が事業を継続していくためには、生産性を向上させることが重要です。生産性は、オフィス内の温度が大きく影響します。

J-STAGEの「コールセンターにおける中程度の高温環境が作業効率に与える影響の評価-2004 年と 2012 年の比較-」でも、年間を通した実地測定に基づく研究で、空気温度が25℃から1℃上昇すると、約2%の作業効率低下が報告されています。

※出典元:J-STAGE「コールセンターにおける中程度の高温環境が作業効率に与える影響の評価-2004年と2012年の比較-」

オフィスの暖房を適切な温度に設定する際の課題

事務所衛生基準規則や環境省が提案するオフィス内の温度は、あくまでも目安です。

オフィス内の温度を快適に維持するためには、従業員個々の感じ方や外的環境などを考慮し、状況に合わせた対応が必要です。

■体感温度に個人差がある

オフィス内が同じ温度でも、暑いと感じる従業員もいれば、寒いと感じる従業員もいます。これは「代謝が活発で筋肉量が多い人は、暑さを感じやすい傾向がある」といったように、体感温度に個人差があることが関係しています。

また、体感温度は、男女でも違いがあると言われています。理由として考えられるのは、基礎代謝量や服装の違いです。さらに加齢にともなう筋肉の衰えにより、代謝が落ちやすくなるため、年齢が高い従業員への配慮も求められます。

■室温は外的環境の影響を受けやすい

適切な温度で暖房を稼働させても、オフィス内を一定の温度に維持できるとは限りません。室温は外気や蛍光灯の熱、人口密度などの外的環境の影響を受けやすいためです。

たとえば、出入口に近い場所はドアの開け閉めが頻繁に行われるため、寒さを感じやすい傾向があります。一方で風通しが悪い場所では、空気の流れが滞って温度が高くなるケースがあります。また、白熱灯や蛍光灯は発する熱量が多いため、付近の温度が上昇しやすくなります。

暖房の設定温度と室温は必ずしも一致するわけではないため、オフィスに温度計を設置し、定期的に確認するとよいでしょう。

オフィスの暖房を適切な温度に設定する方法

室温は外的環境の影響を受けやすいため、空調範囲のムラを少なくする工夫が求められます。ここでは適切な温度に設定する方法を紹介します。

■風向きを調整する

暖房の風向きは、壁や天井に当たるように調整し、できるだけ従業員に当たらないようにしましょう。従業員に直接風が当たると、体調不良の原因になる可能性があります。

また、空気は冷たいと下に、暖かいと上に移動する性質があります。暖房を使用しても足元が冷えるのは、この空気の性質が影響しているためです。

暖房の風向きを下に向けると空間全体に空気が循環しやすくなるため、暖房効率を高められます。

■サーキュレーター・扇風機を活用する

暖房から出る風を空間全体に行き渡らせるためには、サーキュレーターや扇風機の活用が効果的です。空気の流れを作り、暖かい空気を循環させられます。

暖かい空気が循環すれば空調範囲のムラを防げるため、場所による温度差の改善につながります。また、サーキュレーターや扇風機は暖房時だけでなく、冷房時にも活用可能です。

サーキュレーターや扇風機を最大限に活用するには、空調設備の対角線上に設置することがポイントです。

■加湿器を使用する

冬季は特に空気が乾燥しやすいため、オフィスで暖房を使用する際には温度だけでなく、湿度にも注意しなければなりません。

冷え込んだ季節に感染症が流行しやすいのは、ウイルスが好む環境ができやすいからです。ウイルスは低温かつ乾燥した環境を好む傾向があります。

オフィス内でウイルスの活性化を抑制するには、湿度を40~60%に維持する必要があります。オフィスには、湿度計を設置して、適切な湿度を維持できるようにしましょう。

湿度を維持するには、加湿器を利用するのも一つの方法です。広い面積に対応した加湿器も多くあるため、導入を検討してみましょう。

■状況に応じて温度を細かく調整する

オフィス内は、暖房の設定温度が同じでも外的環境に左右されやすい側面があります。

冬季は朝夕に冷え込むため、昼間よりも暖房の温度を上げないと、寒さを感じる従業員もいます。同様に、夏季も昼間の気温が高くなるため、時間によって設定温度を調整することで、従業員が快適に過ごせるようになるでしょう。

状況や時間帯に合わせた設定温度の調整により、より快適なオフィス環境が実現できます。

エナジーセーバーでオフィスを適切な温度に

これまでに紹介した方法でも、オフィス内を適切な温度にすることは可能です。

快適なオフィスを実現するためには、当社のエナジーセーバーもおすすめです。

エナジーセーバーは既存の空調設備に設置するだけで、快適さを損なわずに最大50%の省エネ(※冷房時の最大削減率)を実現できるシステムです。暖房の場合、約15~20%の省エネを実現できるため、企業の節電対策にも役立ちます。

エナジーセーバーは温度センサを既存のエアコンの吸込み口と吹き出し口に取付け、室温とエアコンの稼働をモニタリングします。室温の変化をいち早く察知でき、室外機の必要以上の稼働を抑えることが可能です。結果、設定温度に対する室温の上下変動を最小化し、室外機の電力使用量を大幅に削減できます。

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適切な室温を維持して快適なオフィス環境を実現しよう

体感温度には個人差があり、必ずしも法律や環境省が示す温度が適切とは限りません。暖房時の快適なオフィス環境を実現するためには、個人差への配慮や適切な温度を維持する工夫も必要です。

快適な温度のオフィス環境が維持できれば、従業員の健康を守れるだけでなく、生産性の向上や省エネ効果も期待できます。まずは、空調環境を管理する担当者を配置し、ここで紹介した方法で適切な温度を維持に取り組みましょう。

また、当社のエナジーセーバーを導入し、自動で空調環境を管理する方法も検討してみてください。