照明をリニューアルする際に、LED照明への変更を検討している方も多いのではないでしょうか。LED照明には寿命が長い、消費電力が少ないなどのメリットがあるため、従来の照明から切り替える施設や店舗が一般的です。
空間デザインの一環としてLED照明を使いたい場合は、調光機能付きLED照明も検討の余地があります。調光機能付きLED照明とは、明るさを調節できる照明です。そこでこの記事では、調光機能付きLED照明の基礎知識や選び方などを解説します。施設や店舗での活用例も併せて解説するので、自社で導入する際にぜひ役立ててください。
LED照明の調光機能の基礎知識
LED照明には、調光機能がある商品もあります。調光機能とは、光の明るさを調節できる機能のことです。まずはLED照明の調光とは何か、どのような仕組みで光をコントロールするのかを把握しておきましょう。
■LED照明の調光とは?
LED照明の調光とは、明るさを自由に調節できる機能のことです。リモコンやスイッチを操作し、部屋を暗くしたり明るくしたりできます。たとえば自宅でホームパーティーを開く際にはフル点灯にする、家族でくつろぐ時間は明るさをおさえるといったことがその一例です。
シーンに合わせて調光すれば、雰囲気を変えることができます。近年は省エネを目的として、センサーで自動的に明るさを調節する調光機能を搭載したLED照明も登場しています。
■調光の使用シーン
LED照明の調光機能は、さまざまなシーンで活用することが可能です。たとえば病院のロビーでは時間ごとに明るさを調節し、やすらぎを演出しています。
スーパーマーケットでは商品の内容に合わせて光を調節し、明るい雰囲気や落ち着いた雰囲気を演出しています。場所や時間、季節などに応じて明るさや色味を調節することで、魅力的な空間演出を実現できるでしょう。
■調光・調色のメリットと効果
人は照度と色温度のバランスが取れた空間にいると、快適に感じやすいと言われています。これは、サーカディアンリズムが関係しています。サーカディアンリズムとは、生物に存在する約24時間周期のことです。
サーカディアンリズムが乱れると睡眠障害を引き起こし、身体に悪影響を及ぼします。宿泊施設やスパ、マッサージ店などでは、サーカディアンリズムを整えるために調光機能を活用し、照明の明るさを変化させるケースも増えています。
LEDを調光するには
LED照明の調光機能を利用するためには、調光器対応のLED照明と調光スイッチが必要です。
なお、蛍光灯が設置されている箇所でLED照明の調光機能を利用したい場合は、まず照明をLED化する必要があります。
蛍光灯をLED化する方法は、おもに次の2つです。
- 既設器具を活かしてLEDランプにリニューアルする方法
- 既設器具ごと交換する方法
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調光器の種類
調光器とはLED照明の明るさを調整することのできる機器のことで、特定の調光方式に対応した設計がなされています。
調光方式は、どのように照明の明るさを変化させるかを示す手法です。適切な調光方式を選び、それに対応する調光器を使用することで、目的の光の明るさを実現できます。調光器のおもな種類を解説します。
■位相制御調光
位相制御調光は、電力の流れる波形の一部を切り取ることで、電球の明るさを調整します。電圧を下げると光も暗くなり、電圧を上げると光が明るくなるのが特徴です。
従来の白熱電球では、おもに位相制御調光が使われていました。仕組みはシンプルなものの調光の範囲が広くないため、無理に調光範囲を広げようとすると、光がちらついてしまう可能性があります。
■PWM制御調光
PWM(Pulse Width Modulation)信号を用いて、LED照明器具を調光する方法です。別名「パルス幅変調」とも呼ばれます。
パルス幅を微細に調整することで、出力の細かい制御が可能になります。点灯時間を長く設定すれば明るくなり、短くすると暗くなるのが特徴です。調光範囲が広い一方で、PWM調光専用の調光装置が必要になること、信号配線が必要になることに注意しましょう。
■DALI調光
DALIとは、Digital Adressable Lighting Interfaceの略称です。DALI調光はデジタル通信方式を使用するため、高度で精密な照明制御が可能という特徴があります。DALI規格はIEC62386に準拠した照明制御の国際標準通信規格であり、通信プロトコルがオープンにされています。
照明器具1台ずつにアドレスを割り当てるので、1台単位や点灯エリアごとに明るさを調整できるのが魅力です。照明の細かな調整と柔軟な制御が実現できるため、シーンやエリアを自由に設定することができます。
調光LED照明の選び方
ここからは、調光LED照明の選び方を解説します。
■LED調光器の選び方
LED調光器は、施設の規模や場所によって適したものが異なります。快適に利用するためには、制御方式や調光のためのツールを正しく選ぶことが大切です。
施設の規模の違い
施設の規模 | 制御方式 |
---|---|
小・中規模 | PWM制御方式 |
位相制御方式 | |
大規模 | DALI制御方式 |
小~大規模 | 無線制御方式 |
小・中規模の施設では、PWM制御方式または位相制御方式のLED調光器が適しています。PWM制御方式のLED調光器は少量のLED照明器具の調光に向いており、時間帯に合わせたシーン演出が可能です。位相制御方式は既設の電源線をそのまま使用できるため、調光に対応したLED照明器具があれば比較的安価で環境を整備できます。
大規模施設には、DALI調光方式のLED調光システムがおすすめです。DALI調光方式は双方向通信接続なので、LED照明器具が多くても制御機器で管理しやすい傾向にあります。
どのような規模にも対応できるのは、無線制御方式のLED調光システムです。無線制御方式は、無線で照明を操作する方式です。照明器具同士を無線で接続し、安定した通信ネットワークを構築できます。
調光するためのツールの違い
また、LED調光器を選ぶ際には、調光するためのインターフェイスもチェックしましょう。代表的なツールは、リモコンまたはスイッチです。近年では、専用のアプリを使用して調光できるものもあります。
無線制御方式の調光システムを選ぶなら、アイリスオーヤマの「LiCONEX」がおすすめです。「LiCONEX」はタブレットから操作して、調光や調色を容易におこなえます。
時間帯やシーンに合わせて照明環境を変えることで、大幅な省エネ効果も期待できます。また、無線で制御するシンプルな構成なので、有線調光システムに比べて大規模な工事が不要です。詳しくはこちらのページで紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
■調光器対応照明器具の選び方
LED照明器具は、調光器に対応した製品を選ぶ必要があります。製品によって光の広がり方や色味に違いがあるため、複数の製品を比較して選ぶようにしましょう。
光量の違い
光量とは、一定の面を一定時間内に通過する光エネルギーの総量のことです。ある面を通過する光の明るさは光束と呼ばれており、「ルーメン」という単位で表されます。ルーメンの数値が高いほど光の量が多いため、明るくなります。
ルーメンの数値が高い照明器具を選べば、室内をより明るくできるというわけです。ルーメンは、製品のパッケージに表示されています。
光色の違い
光色選びによって室内の雰囲気を変えることが出来ます。LED照明器具の光色は、おもに電球色・温白色・昼白色・昼光色があります。
光色の種類 | 特徴 |
---|---|
電球色 |
|
温白色 |
|
昼白色 |
|
昼光色 |
|
ルーメンの数値が高く、さまざまな光色に対応した製品をお探しなら、アイリスオーヤマの「LXラインルクス」シリーズがおすすめです。「LXラインルクス」の6,900ルーメンタイプなら、電球色をはじめとする5種類の光色に対応しています。調光に対応したタイプも取り揃えておりますので、こちらから詳細をご確認ください。
調光LED照明の種類と施設・店舗での活用例
ここからは、調光LED照明を施設や店舗で活用した事例を紹介します。
■アル・プラザ鶴見 様
アル・プラザ鶴見は、岐阜県大垣市にあるショッピングモールです。施設では照明のリニューアルに合わせて、アイリスオーヤマの無線制御システム「LiCONEX」を導入しました。
店内は利用者が心地良く買い物を楽しめるよう、照明の色濃度を4,000Kに設定しています。売り場やエリアごとに最大調光率を調整することで、明るさの最適化を図りました。その結果、心地良い雰囲気を維持しつつ、大幅な省エネを実現しています。
「LiCONEX」はタブレットから、調光や調色が自由におこなえるため、担当者の負担も軽減できます。また、調光信号線の工事が不要なので、導入する際のコストをおさえられます。
■ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts 様
京都府にあるリゾートホテルROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsは、2021年9月に開業しました。ヒルトングループの最上級ブランドの名を冠するアジア初のラグジュアリーホテルで、鷹峯三山の麓に建てられています。
ホテルに到着したゲストを迎えるアライバル棟では、和の雰囲気を引き立てる演出が施されています。伝統的な素材を組み合わせた行灯や間接照明を取り入れ、和の独特な陰影を活かした光の演出が施されました。
自然の美を漆の技法で表現したインテリアや調度品が展示されている空間では、作品に合わせて配灯されたスポットライトやピクチャーライトを活用し、作品の存在感と質感を際立たせています。また、施設全体の照明は時間帯に合わせて明るさが調節され、ゲストが時間の流れとともに景観と優雅な滞在を楽しめるよう配慮されています。
〈事例レポート:ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts様(京都府)〉
■弘前れんが倉庫美術館 様
青森県にある弘前れんが倉庫美術館は、2020年7月にグランドオープンしました。施設内には築100年に近い煉瓦倉庫を残しつつ、5つの展示室とスタジオ、ライブラリーなどが設置されています。
館内の照明には、梁や天井などの元からある建築構造物を生かしてLEDスポットライトやペンダントライトが取り付けられています。調光システムには、アイリスオーヤマの「LiCONEX」が採用されました。「LiCONEX」は調光や調色だけでなく、点灯や消灯までもタブレットで制御できます。
〈事例レポート:弘前れんが倉庫美術館様(青森県)〉
ライコネックス
LED照明の調光についてよくあるQ&A
最後に、LED照明の調光に関するよくある質問を紹介します。
■調光で消費電力は変わる?
調光による消費電力は、設備や電球によって差があります。製品のなかには、調光による明るさの違いに比例して消費電力が変わるものもあります。たとえば明るさを約50%にした場合の消費電力は、約50%です。LED照明は蛍光灯よりも消費電力が低いため、省エネ効果も期待できます。
■調光器対応照明、調光器の具体的な費用は?
調光器対応のLED電球の相場は、1,000円~5,000円程度です。LEDベースライトの場合は、10,000~30,000円程度が相場になります。
機器 | 相場 |
---|---|
調光器対応LED電球 | 1,000円~5,000円程度 |
LEDベースライト | 10,000~30,000円程度 ※別途工事費が必要なケースもあり |
調光器対応LED電球の価格帯が広い背景には、商品によって色味や明るさなどのバリエーションが多いことが関係しています。アイリスオーヤマでは、1,000円~2,000円程度のLED電球を販売しています。LED電球を導入する際には、アイリスオーヤマにご相談ください。
また、LEDベースライトは、設置する際に工事が必要になるケースが多いので注意が必要です。
工事費は、ベースライト1本当たり5,000円~10,000円程度が相場です。設置するベースライトの数が多いほど初期費用が高額になります。
LEDの調光機能を活用して空間をデザインしよう
LED照明の調光機能を利用すれば、明るさを自由に調節できます。時間帯や部屋に合わせて調節できるため、空間を演出する際に役立ちます。調光調色の場合ではサーカディアンリズムを整える効果も期待できるため、ゲストや従業員に良い影響を与えることもできるでしょう。
LED照明の調光機能を利用するためには、調光器対応のLED照明器具と調光器もしくはシステムが不可欠なので、自社の施設に適したものを選ぶ際には、専門業者に依頼するのも手段の一つです。自社の施設に適したLED照明の選択や空間デザインを検討し、快適な空間を実現して顧客体験を高めましょう。