2022年4月1日から施行された改正道路交通法施行規則では、企業の安全運転管理者に対し、ドライバーのアルコールチェックを目視等で確認することが義務付けられ、さらに2023年12月1日からはアルコールチェッカーによる確認も義務化されました。
義務化に備えて、アルコールチェッカーを用いた場合の基準値や罰則などを確認しておきたい企業や担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、アルコールチェッカーで飲酒運転となる数値の基準や罰則などをご紹介します。数値に関する注意点やドライバー以外に科される罰則も併せて解説するので、アルコールチェッカーによるアルコールチェックの義務化に備えましょう。
アルコールチェックの数値の基準と罰則
道路交通法では、飲酒運転を「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類に区分しています。違反点数や罰則・罰金はそれぞれ異なりますが、酒気帯び運転よりも酒酔い運転のほうが厳しい処分が下されます。
種類 | 呼気1リットル中のアルコール濃度 | 違反点数 | 罰則・罰金 |
---|---|---|---|
酒気帯び運転 | 0.15㎎以上0.25㎎未満 | 13点 |
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0.25㎎以上 | 25点 |
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酒酔い運転 | – | 35点 |
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■酒気帯び運転
酒気帯び運転とは、呼気1L当たりに含まれるアルコール濃度が0.15mg以上で運転した場合を指します。
アルコールチェッカーを用いて測定し、測定結果の数値が0.15mg/L以上であれば、酒気帯び運転と判断することが可能です。
酒気帯び運転の罰則は、呼気1リットル中のアルコール濃度0.15mg以上0.25mg未満と0.25mg以上の2種類に区分されています。
基準値を上回ったにも関わらず、ドライバーが車両を運転した場合は、アルコール濃度に応じた罰則が科せられます。
【呼気1リットル中のアルコール濃度0.15mg以上0.25mg未満の場合】
13点の違反点数が加算されます。罰則としては最低90日間の免許停止処分に加え、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
【呼気1リットル中のアルコール濃度0.25mg以上の場合】
より罰則が厳しくなります。加算される違反点数は25点です。罰則としては、免許取り消し処分と最低2年間の欠格期間が科せられます。欠格期間とは、運転免許を取得できない期間のことです。
さらに、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
■酒酔い運転
酒酔い運転とは、ドライバーが正常に運転できないおそれがある状態を指します。基準値が設けられている酒気帯び運転に対し、酒酔い運転はアルコールチェックの数値に左右されません。
酒酔い運転に該当するかは、次の状態を見て判断されます。
- 直線の上をまっすぐ歩けるか
- 警察官の質疑応答できちんと受け答えができるか
- 視覚や視点から認知能力が機能しているか など
酒酔い運転の場合、加算される違反点数は35点です。罰則としては免許取り消し処分に加え、最低3年間の欠格期間が科せられます。
さらに5年以下の懲役または100万円以下の罰金も科せられるなど、酒気帯び運転よりも重い処分が下されます。
ドライバー以外に罰則が科されることもある
酒気帯び運転や酒酔い運転に対する罰則が科せられるのは、実際に車を運転したドライバーだけではありません。状況によっては、酒類の提供者や同乗者、ドライバーを雇用している企業、安全運転管理者も罰則が科せられることがあります。
■酒類の提供者や同乗者
ドライバーが飲酒運転をした場合、酒類の提供者や同乗者にも罰則が科せられる可能性があります。罰則の内容は、酒気帯び運転と酒酔い運転のどちらに該当するかで異なります。
【酒気帯び運転の場合】
酒気帯び運転の場合、酒類の提供者や同乗者には2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
【酒酔い運転の場合】
酒酔い運転の場合、酒類の提供者や同乗者には3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
酒類の提供者や同乗者に対する罰則は、ドライバーと同様です。ただし、同乗者がドライバーから誘いを受けてやむを得ず車に乗った場合などは、罰則が科せられないケースもあります。
■ドライバーを雇用している企業や安全運転管理者
業務中のドライバーが飲酒運転をした場合、雇用している企業や安全運転管理者には重い処分が下されます。
【企業に対する罰則】
従業員であるドライバーに対する企業の管理が不十分だと見なされた場合、指導監督義務違反が適用され、3日間の事業停止が行われます。
ドライバーが飲酒運転による重大事故を起こし、かつ企業が指導監督義務違反に該当する場合、事業停止の期間は7日間に延長されます。
さらに、企業がドライバーの飲酒運転を容認していた場合、より厳しい処分が科され、14日間の事業停止になります。
【安全運転管理者に対する罰則】
一定台数以上の自家用車を保有する企業では、安全運転管理者と副安全運転管理者を選任する必要があります。
現時点(2023年9月時点)で、アルコールチェックを怠ったことに対する安全運転管理者への罰則は設けられていません。
しかし、アルコールチェックの義務違反が明らかになると、公安委員会から管理者の解任命令が出されることがあります。
解任命令が出されると、企業は一定期間内に新しい安全運転管理者を指名し、その情報を提出しなければなりません。手続きが行われなかった場合は、選任義務違反と見なされ、最大で50万円の罰金が科されることがあります。
また、警察庁の通達によると、アルコールチェッカーの不足によって適切な飲酒検査が行えず、ドライバーが酒気帯び運転をした場合などは、是正措置命令の対象になる可能性があります。是正措置命令の違反が発覚した場合は、最大50万円の罰金が科せられることがあるため、注意が必要です。
警視庁 道路交通法に基づく自動車の使用者に対する是正措置命令等の基準について(通 達)
アルコールチェッカーの数値に関する注意点
自社で初めてアルコールチェッカーを導入する際に注意しておきたい点を紹介します。
■飲酒していない場合でも検知されることがある
アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックでは、ドライバーが飲酒していないにも関わらず、基準値を超える数値が測定されることがあります。このようなことが起こる背景には、ドライバーが口に入れた物が大きく関係しています。
アルコールチェッカーのセンサーに反応しやすいのは、次のとおりです。
- 飲食物
- 薬
- タバコ
- うがい薬
- 歯磨き粉 など
身の回りのものには、微量のアルコールが含まれているケースがあります。「ノンアルコール」と表示されている飲食物でも、微量のアルコールが含まれているので注意が必要です。
また、近年は、アルコール成分が配合された消毒液を使用する機会も増えました。アルコールチェックの直前に消毒液を使用すると、大気中に残留したアルコールを検知し、正しく測定されない可能性があります。
■定期的にメンテナンスが必要
アルコールチェッカーは消耗品です。長時間の使用によって故障する可能性があるため、定期的なメンテナンスが不可欠です。
さらに、各アルコールチェッカーには使用回数や使用期限が指定されています。製品を購入したら、取扱説明書を読み、メーカーが指定する使用回数や期限を守りましょう。
■アルコールチェッカーに頼り過ぎない
アルコールチェッカーによる測定結果は、あくまで参考値です。測定結果は、チェック時の環境やアルコールチェッカーの状態によって影響を受け、正確な数値が得られないことがあります。そのため、アルコールチェッカーに頼りすぎないよう、注意が必要です。
管理者はアルコールチェッカーの測定結果だけでなく、ドライバーの顔色や声の調子なども併せて確認しましょう。
アルコールチェッカーで数値を正しく測定するコツ
最後に、アルコールチェッカーで数値を正しく測定するコツをご紹介します。ドライバーを管理する企業や担当者として、正しく測定できる環境を整えるようにしましょう。
■飲食直後の測定は避ける
アルコールチェッカーは、アルコール飲料以外に含まれているアルコールにも反応することがあります。身近な飲食物にも微量のアルコールが含まれているため、飲食直後にアルコールチェックすると正しく測定できない可能性があります。
そのため、アルコールチェックはドライバーの飲食直後を避け、一定の時間をおいてから実施するようにしましょう。 飲食から15~30分程度時間をあけて実施することで、誤検知を防ぐことが可能です。
■チェック前のうがいを徹底する
アルコールチェックは、うがいをした後に実施するよう徹底しましょう。ドライバーが摂取した飲食物が原因となり、アルコールチェッカーによる数値が正しく反映されないケースもあります。
口の中に飲食物が残っている状態だと誤検知する可能性があるため、ドライバーには誤検知のリスクを理解してもらい、うがいを促すようにしましょう。ただし、うがい薬には微量のアルコールが含まれているため、水でのうがいがおすすめです。
■息はしっかりと吹きかける
アルコールチェッカーは、センサー部分にしっかりと息を吹きかけなければ正しく測定できません。誤検知を防ぎ、ドライバーの安全を守るためにも、センサー部分にしっかりと息を吹きかけるよう促しましょう。
アルコールチェッカーの測定方法には、吹きかけ式・ストロー式・センサー式などの種類があります。使用前に説明書を十分に読み、正しい測定方法を理解しておきましょう。
アルコールチェッカーを用いてドライバーの安全を守ろう
2023年12月からは、アルコールチェッカーによるアルコールチェックが義務化されます。企業は義務化までにアルコールチェッカーを準備し、正しく測定できる環境を整備することが大切です。
義務化の内容には、アルコールチェックの測定結果の保存も含まれています。
当社のアルコールチェッククラウドサービスALPiT(アルピット)は、ドライバーごとのアルコールチェックの測定結果を自動記録できます。すべての従業員の測定結果を一元管理できるため、安全運転管理者の業務負担も軽減できるでしょう。
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