アイリスオーヤマは、プラスチック製品の下請け町工場「大山ブロー工業所」として創業しました。
「アイリス物語」では、現在に至るまでのアイリスグループの歴史を連載でお届けします。
第三十四話東北の農業復興を目指して
アイリスグループの一員であるアイリスアグリイノベーションは、2013年に設立された精米事業を主軸とする会社です。
2011年の東日本大震災では、東北の沿岸部が甚大な津波被害を受けました。岩手・宮城・福島の3県では多くの農地が被災し、その大部分を占める水田では塩害による深刻な影響が発生しました。作付けをしても稲が立ち枯れてしまうなど営農の継続が困難となり、やむなく稲作を諦める農家も少なくありませんでした。
健太郎は大阪から宮城へ移り住んだ頃から、東北の米のおいしさに魅了されていました。四季による寒暖差や山々から流れる雪解け水に育まれた東北の米は格別です。しかし、震災によって東北の農業が大きな危機に直面している現実に胸を痛め、「何とかして東北の農業復興を支援できないだろうか」と考えるようになります。そして健太郎は行動を起こしました。東北の農家から玄米を買い取り、自社で精米し、アイリスグループの販路を通じて全国へ届ける。そうすることで、東北のおいしい米をより多くの人に味わってもらえるだけでなく、被災した農家を支え、地域の復興にも貢献できると考えたのです。こうした想いを原点に、農商工連携の取組みとして、「簡単・便利・おいしい」をコンセプトに掲げ、精米事業へ参入しました。
しかし、精米事業には多くの課題がありました。米は時間の経過とともに酸化し、気温や湿度の影響によって品質が大きく変化します。玄米を常温保存することや精米時に機械や玄米同士が擦れて発生する熱でも食味劣化が進みます。また、秋においしかった新米も、春、夏と季節が移るにつれて味が落ちてしまいます。そこで様々な研究を重ね、辿り着いた答えが、全行程を15℃以下で行う、低温製法でした。
そして2014年6月、宮城県亘理町に敷地面積5万平方メートルを超える大規模な精米工場が完成し、稼働を開始します。工場と倉庫内は室温15℃、湿度60%に保たれています。この工場では低温環境で玄米のまま保管し、その後の精米から梱包までの工程も低温かつ全自動で行う体制を構築しました。さらに当時は当たり前だった2kgや5kgといった梱包も封を開けた瞬間から米の酸化が始まるため、いつでも新鮮な米を食べてもらいたいと2合ずつの小分けパックにして脱酸素剤を封入しました。小分けパックにすることで米を計量する手間も省けて簡単。軽量で持ち運びもしやすくなって便利。低温製法で精米・包装された米は食味の低下を抑え、春や夏でも新米のようなおいしさを楽しむことができます。まさに、「簡単・便利・おいしい」というコンセプトを具現化した商品となったのです。
また、工場のある亘理町も津波による大きな被害を受けた地域でしたが、地元から社員を雇用することで地域産業の復興と経済の再生にも貢献することができました。東北のおいしい米を全国へ届けること。そして農家を支え、地域の復興に貢献すること。この取組みが被災地支援の一助となったのであれば、これほど嬉しいことはありません。
(第三十五話に続く)