アイリスオーヤマは、プラスチック製品の下請け町工場「大山ブロー工業所」として創業しました。
「アイリス物語」では、現在に至るまでのアイリスグループの歴史を連載でお届けします。
第七話ホームセンターとの取り組み〜園芸用品のヒット
これまで第一話から第六話までアイリスオーヤマの歴史の一部を紹介してきました。その中で、商品が生まれた背景には必ず、市場の流れとアイリスオーヤマ独自の市場創造と商品開発がありました。そして、アイリスオーヤマの企業成長の上で欠かせないのが、ホームセンターとの取り組みです。
ホームセンターが生まれるまでは、「メーカー ⇒ 問屋 ⇒ 街の金物店や種物店」という流通だったため、今のような豊富な品揃えのある店舗はありませんでしたが、1970年代後半にモータリゼーションの波に乗って、敷地面積が広い郊外型のホームセンターが日本各地にオープンするようになっていきました。しかし、大量仕入れで低価格販売を目指していたホームセンターは、商品調達に苦労していました。そのため、一時的に仕入れた限定商品を販売するようなディスカウントショップ型のホームセンターが数多く存在していました。
1980年、アイリスオーヤマはホームセンター「カーマ」との直接取引を始めます。
当時のカーマはドラッグストアを中心に展開していましたが、アメリカ式の小売を研究し、愛知県を拠点にホームセンターを普及させ、急成長している企業でした。この出会いこそが、その後のアイリスオーヤマの営業活動の転機となりました。

カーマとの取り組みのきっかけは「プランター」でした。
当時の他社製品の多くのプラスチックプランターはリサイクル材などを使い、地味な色が主流でした。しかし、アイリスオーヤマは、100%バージン原料で鮮やかなホワイト、御影石のような細かい粒が入ったみかげ色など、これまでにない色の提案や、スノコを敷き、水抜け水栓を付けることで水はけを良くし機能性も高くしたプランターを提案しました。こうして当時のカーマ担当者から、クオリティの高さを絶賛され、すぐに取引が始まりました。
アイリスオーヤマの商品がカーマの店頭に置かれると、他の日本各地のホームセンターからも取引開始の打診が相次ぐようになりました。プランターは次々とホームセンターに導入されていきました。こうして全国のホームセンターとの取引が始まったのです。

当時ヒットした商品の中には、上げ底メッシュ構造でプラスチック鉢の欠点である通気性と水はけを良くした機能性の高い「プラスチック鉢」や、それまで主流だったスチール製からプラスチックに加工し、水漏れしない画期的なパッキンを採用した「ホースリール」など、今では当たり前に売られている商品が数多くあります。また、主に専門店で販売されていた「噴霧器」は、実演販売をホームセンターで行ったところ、商品の良さと値ごろ売価がお客様に伝わり、品切れになるほど爆発的にヒットしました。
このように、ホームセンターとの取り組みにおいて、次々と商品を生み出してきた背景には、アイリスオーヤマのSEG(シンプル・エコノミー・グッド)というコンセプトがありました。これは、お客様が使いやすい商品を開発し、値ごろ価格で販売できる、品質が良く長持ちする商品を提供するという思いが込められています。このように常に生活者の目線で考えられた商品開発を行い、次々とソリューション型(不満解決型)商品を発売することで、生活者のニーズをつかみアイリスオーヤマが園芸部門の市場を創りあげました。
(第八話に続く)
- ホワイトカラープランター
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- 当時再生材などで作られていたプランターは、グレーなどの地味な色が主流でしたが、純白のホワイトカラーは、清潔感があって明るく、植物の色が映えるカラーとして人気を集め、一躍ヒット商品となりました。