アイリスオーヤマは、プラスチック製品の下請け町工場「大山ブロー工業所」として創業しました。
「アイリス物語」では、現在に至るまでのアイリスグループの歴史を連載でお届けします。
第十六話「ムツゴロウのペット王国」シリーズについて
2001年には作家・畑正憲氏(ムツゴロウさん)とのコラボレーションによるペットフード・ペット用品「ムツゴロウのペット王国」シリーズの開発に取り組みました。
健太郎は自らも愛犬家の1人として、よりペット自身が楽しく、ストレスなく過ごせるように市場を変えていきたいと考えていました。特に、胃腸の弱い犬を飼っていたこともあり、消化吸収が良く体にやさしい食事を与えたいと願っていました。また、ペットフードのブランド構築が大きなテーマであるとの考えも持っていました。

「ムツゴロウの動物王国」を運営していた畑正憲氏は、動物と一緒になって寝起きをしたり、動物の目線に立って物事を考えられる数少ない人物でした。彼と共同で商品を開発することで真にペットにやさしいものが提供できると考えたのです。
畑氏は自分たちが食べられないものは動物達にも食べさせられないという考えの持ち主です。商品開発サンプルは都度「ムツゴロウの動物王国」に送り、ペットの体に良いものかどうか監修を受けながら開発が進められました。香りや甘みなど畑氏の長年の経験やアイデアが商品に盛り込まれ、ドライフードをより美味しく消化吸収をよくするためのスープ・ふりかけなど、斬新な切り口の商品が200種余り開発されました。

7月27日、これらの新商品の発表会が都内の有名ホテルで大々的に行われ、全国の得意先様、また多くのメディア関係者など総勢250名を超えるお客様が来場されました。これほどの知名度を持つキャラクターの登用はペット市場では類を見ず、大きな話題性があったのです。8月上旬の段階で、ほぼすべての得意先様へ導入が決定しました。その人気は競合する問屋からも取り扱わせてほしいと申し入れがあったほどでした。
しかし残念ながら、「ムツゴロウのペット王国」シリーズは前評判通りの販売実績を上げることができませんでした。得意先様にて多くの棚を割いて頂いたため、短期間で認知を高めファン・リピーターを付ける必要がありました。しかし、その前評判の高さから欠品を恐れチラシなどの販促を控えたことや、ブランド力での販売を期待して設定し2割程度高い売価を付けたことで、ファンの獲得に失敗。店頭回転率を上げることができませんでした。結果、発売から約2年で製造を中止することとなり、当社初の“ビッグブランド構築”という試みは、残念ながら失敗に終わりました。
このことを機に多額の販促費を費やしブランド化を図る戦略とは決別。主要な販路であるホームセンターでお求めになりやすい製品を作る「S・E・G(シンプル・エコノミー・グッド)コンセプト」へと立ち返る岐路となりました。
(第十七話に続く)