アイリスオーヤマは、プラスチック製品の下請け町工場「大山ブロー工業所」として創業しました。
「アイリス物語」では、現在に至るまでのアイリスグループの歴史を連載でお届けします。
第二十話家具専門店事業“SimpleStyle”について
2004年にスタートした家具専門店事業“SimpleStyle”。「着せ替えソファ」という斬新なコンセプトで新たなライフスタイルの創造に取り組みました。SimpleStyleのソファの特長は、座面や背面だけでなく本体までカバーが簡単に交換できること。目指したのは季節や気分に応じてソファの色柄を変え、模様替えを楽しむという新しいライフスタイルの創造で、様々なバリエーションのカバーを取り揃えました。
また、一般的なソファには汚れても洗えないという不満がありました。お子様やペットが汚すのを恐れて布などを掛けている方や、汚れが目立つのを気にして明るいトーンのものを選ぶことをためらう方も多いでしょう。SimpleStyleのソファは汚れたカバーを洗い替えし、いつでも新品の時の心地よさを保つという新習慣も提唱しました。
SimpleStyleの商品は他の商品のように小売店に卸すのではなく、直営店で販売しました。メーカー直販にこだわったのは、他に類を見ない斬新なコンセプトや製品特長をしっかりご説明したいという思いからでした。例えば、SimpleStyleのソファには着せ替えができること以外にも、座面が固めに仕上げられているという特徴がありました。柔らかいソファは座り始めが心地よく人気がありますが、長く座っていると体に負担が掛かり疲れてしまうという面もあります。また、クッションや脚などをパーツ単位でお買い求め頂け、お気に入りの家具をより長く経済的にお使い頂けるというサービスもありました。豊富な知識を持ったスタッフが接客を行うことにより、よりお客様のソリューションに繋がる商品をお届けしたいと考えたのです。
市街地の路面店だけでなく、ホームセンター内に店舗を構える「インショップ」形式での出店も積極的に行いました。その狙いは主要なお取引先であるホームセンターから格安な家具専門店へ流出しつつあったお客様をもう一度店頭に引き付け、活性化を図りたいというものでした。ホームセンター業界としても当時、店舗の大型化に伴い商品カテゴリを拡大したいという機運が高まっていました。本格的な家具を展開する店舗は限られていたこともあり、メーカーがホームセンター内に直営店を出すという異例の提案も、好意的に受け止められました。
当社にとってほぼ初めてといえる小売店事業。立上げは容易ではありませんでした。出店立地の検討、家賃交渉、店舗施工、販売職の採用、接客マニュアルの整備、労務管理…、その全てが未経験のことで、事業に関わる社員も経営陣も手探り状態でした。それでも、事業開始半年間で12店舗を出店、季節ごとに新作カバーを発売するなどし、固定客の獲得に努めました。また、ソファだけでなくベッドやオーダーカーテンなどの品揃えを追加しながらインテリアショップとしての総合力を高めていきました。その後も北海道から九州まで幅広いエリアへ積極出店し、店舗数が最大となった2006年には23店舗を数えるまでになりました。
事業開始から10年余を経過し、「着せ替えソファ」は当社の提唱をきっかけに業界に浸透し、専業メーカーによって発展していきました。“新しいソファ文化を作る”という存在意義を全うし、SimpleStyleは現在、不動産会社や住宅メーカーといった法人向けのLED照明とインテリアの総合ショールームとしての新しい役割機能を果たしています。
(第二十一話に続く)