アイリスオーヤマは、プラスチック製品の下請け町工場「大山ブロー工業所」として創業しました。
「アイリス物語」では、現在に至るまでのアイリスグループの歴史を連載でお届けします。
第二十五話LED電球の市場創造について(下)
当社は2010年3月に2,500円のLED電球を発売し、照明市場に大きなインパクトを与えました。メディアにも大きく取り上げられ、小売店への導入や店頭での回転も順調に推移しました。しかし、その販売・普及状況はまだ“爆発的”とまではいきませんでした。

プラスチックボディを採用
LED電球の普及に真に火が点いたのは、約8か月後の2010年11月。当社からの1,980円のLED電球の発売によってでした。売価で500円ものコストダウンを可能にしたのはプラスチック加工メーカーならではのノウハウ。当時、LED電球のボディにはアルミを用いるのが常識でしたが、これをプラスチックにしたのです。プラスチックであれば成形が簡単でローコスト。放熱性がアルミに劣るという難点を樹脂メーカーとの共同研究や電球内部の放熱部品やその配置の改良により乗り越え、業界初となるプラスチックボディのLED電球の実用化に成功しました。さらに、電子部品以外のすべての部材を内製化し、当時の業界では“常識外れ”とさえ言われた1,980円のLED電球が誕生しました。ボディのプラスチック化はコストダウンだけでなく軽量化のみならず、おしゃれでスリムなボディをもたらし、よりいっそう製品力が高まりました。
2,000円を切るLED電球の登場に、主要取引先であったホームセンター以外にも家電量販店やGMSからの引き合いが殺到。新しい販売チャネルの獲得に繋がりました。また健太郎は、前年のパンデミック下におけるマスク供給を通じ信用を勝ち得ていたドラッグストア向けの提案を重点的に行うよう営業方針を定めました(パンデミック下におけるマスクの供給については第二十三話を参照)。当時まだ“消耗品”であった電球は、食品や最寄品のついでに購入されることがほとんどでした。電球を求めている方にとって自然に目に入るところでのプロモーションが、市場創造には有効と考えたのです。

結果、商品は飛ぶように売れ、2011年6月には国内メーカー別出荷数で約1/4のシェアを達成し、LED電球では業界ナンバーワンとなりました。当社はその後、このLED電球の大ヒットを足掛かりにシーリングライトや業務用照明分野へも開発分野を広げ、総合照明メーカーへと進化していくこととなります。
(第二十六話に続く)