『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』
ケイト・マーフィー著
出版社:日経BP
ヒューストンを拠点に活動するジャーナリスト。ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリートジャーナルなどで活躍。健康、テクノロジー、科学、デザイン、航空、ビジネス、ファッション、グルメなど多岐に渡るトピックを執筆。
監訳者:篠田真貴子
エール株式会社取締役。社外人材によるオンライン1on1を通じて組織改革を進める企業を支援。「聴き合う組織」が増えること、「聴くこと」によって一人ひとりが自分らしくあれる社会に近づくことを目指して経営にあたる。
訳者:松丸さとみ
会話中に相手が時計を見たり途中で話をさえぎったりして、自分の話を最後まで聞いてもらえなかった経験は誰もがあるところ。ビジネスやコミュニケーションにおいて、これまでは話し方に主眼が置かれてきましたが、近年では聞き方にスポットが当てられることが多くなりました。本書は、ジャーナリストである著者が、さまざまな職種や立場、境遇の人にインタビューした経験談を交えながら、「聞き上手は会話上手である」とし、認知や心理、人間関係、そして現代社会に欠かせないコミュニケーションツールとなったスマートフォンとの関係性を通じて、「聞くこと」の大切さを説いた一冊です。
「あなたが最後に、誰かの話に耳を傾けたのはいつだったか、覚えていますか?」から始まる本書は、日頃から蔑ろにしがちな“聞く姿勢”について、鋭い問題提起を投げかけます。著者は、会話がうまく成立しない理由には、「相手の話中に“次は自分が何を話そうか”考えていること」や、「親しい人のことは何でも知っているという思い込み」、「見知らぬ人の話や反対意見は傾聴しない」など、誰しも身に覚えのある会話パターンや相手への先入観が起因しているとし、その原因を分析していくことで、相手の話に集中して耳を傾けられる方法を解説します。
さらに著者はこう続けます。「聞き上手な人ほど相手と同じ感情になって話を聞くことができる。話し手の表情や仕草をつぶさに観察し、なぜ自分に話をしているのか?どういう心理状態なのか?を洞察することで共感が生まれる。」その結果、自分だけでは得られなかった知識や経験を相手の話から吸収でき、自己の成長や学びにつながるのだと言います。本文中で紹介された元FBIの人質交渉主任による「私が考える優れた聞き手とは、他の人の経験や考えに喜んで耳を傾け、相手の視点を認められる人」という言葉が、聞くことの本質を表しています。
著者は、丁寧かつ適切に話を聞くことで話し手の緊張が解けるだけでなく、聞き手である自分自身が持つ誤解や先入観が取り払われ、ビジネスやプライベートのどのような状況でも人間関係がうまくいく土台ができると言います。情報にあふれ変化が激しい現代では、根気強く聞くことが後回しにされつつありますが、誰もが求める「人を理解し自分を理解すること」を実現するためには、急がず、意識的にじっくり「聴く」ことが必要。知性豊かで創造力のある「聴き方」のバイブルとして、取り入れてみてはいかがでしょうか。