

「働く社員にとって良い会社」であるために変化し続ける。アイリスオーヤマの人事制度とは
公開日:2023.12.15
最終更新日:2023.12.15
「働く社員にとって良い会社を目指し、会社が良くなると社員が良くなり、社員が良くなると会社が良くなる仕組みづくり。」――アイリスオーヤマではこの企業理念を掲げ、透明性と納得感を徹底した360度評価を実施。さらに、採用した人材を即戦力化する研修制度や上期・下期・年間を通じて個人の業績を評価する「評価会・グランプリ大会」、幹部社員を対象に特別賞与を支給する「決算賞与」、昇格を待たずに重要ポストに抜擢する「抜擢人事」など、ユニークな人事制度も設けています。これらの人事制度のねらいと効果、その根底にある考え方などについて、人事部のキーパーソンに話を聞きました。
INDEX
- 就職企業ランキングでもトップ10に!
- ――まずは入口の「採用」から伺います。アイリスオーヤマでは毎年、どれだけの人数を採用しているのですか?
- ――数百人規模の採用を行うにあたり、どのような採用基準を設けているのですか?
- ――8年間、採用に携わる中で、学生をはじめとする求職者の特徴や志望動機などは変化していますか?
- 多様な人材を即戦力化するための研修制度
- ――採用の次は「人材育成」について伺います。採用した人材をいかに育成し、戦力化しているのでしょうか?
- ――研修メニューが充実しているから、アイリスオーヤマでは若くして部長職などのマネジメント層で活躍する社員も多いのですね 。
- 1人の社員に評価者が30人?「360度評価 」
- ――社員の成長を促す点では、「人事評価制度」も重要ですね。
- ――360度評価自体は、導入している企業は少なくない気もしますが ……。
- ――それはすごい!なぜ、それだけの社員が人事評価に関わるのですか?
- ――360度評価について、社員の方からはどんな声が寄せられてますか?
- 創業者の辛い経験から生まれた「働く社員にとって良い会社」
- ――そこまで公平・公正な評価にこだわっているのは、何らかの原体験があったのでしょうか?
- 「3車線人事」で社員の成長を促す
- ――社員を自らの手で辞めさせるようなことは二度としたくない。その大山会長の強い決意があってこそ、公平・公正な評価の徹底につながっているのですね。
- ――最大300万円!夢がありますね。
- ――「ポストが空かないから昇格させない」というのでなく、ポストの有無に関わらず社員を抜擢して、上のポストに引き上げるのですね。
- 就業規則の改定は月1回以上!変化し続ける人事制度
- ――大山会長の経験から導かれた「働く社員にとって良い会社」の企業理念が、一つひとつの人事制度に一貫しているのですね。
- ――月に1回以上!就業規則の柔軟な見直しに驚きました。

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▼お話を聞いたのは…

人事部 新卒採用課 マネージャー 佐藤祥平

人事部 指導教育課 リーダー 佐藤司
2014年に入社。BtoC営業を担当後、2015年にLED事業本部に異動し営業を担当。2021年に人事部へ異動し、現在は指導教育課のリーダーを務める。

人事部 給与管理課 リーダー 福島佳織
2011年に入社し、人事部へ配属。2015年から給与・労務関連の業務に携わり、2022年から給与管理課リーダーを務める。
就職企業ランキングでもトップ10に!
――まずは入口の「採用」から伺います。アイリスオーヤマでは毎年、どれだけの人数を採用しているのですか?

佐藤(祥):新卒採用とキャリア採用に分けると、新卒採用(第二新卒も含む)は、2023年4月入社では高卒、高専卒、大卒合わせて574名を採用しました。キャリア採用も多くの人材を採用しています。
私自身、8年前に人事部に配属されて以来、一貫して採用に携わってきましたが、その間に一般消費者向けの商品だけでなく、法人向けのソリューション提供、さらにECも含めて大きく事業領域が拡大しました。それに合わせて採用人数も年々増加しており、かつ多様化しています。
私自身、8年前に人事部に配属されて以来、一貫して採用に携わってきましたが、その間に一般消費者向けの商品だけでなく、法人向けのソリューション提供、さらにECも含めて大きく事業領域が拡大しました。それに合わせて採用人数も年々増加しており、かつ多様化しています。
――数百人規模の採用を行うにあたり、どのような採用基準を設けているのですか?
佐藤(祥):これも新卒採用とキャリア採用に分けてお話をすると、新卒採用では「主体性」「成長意欲」「目標達成意欲」の3つの基盤を重視しています。アイリスオーヤマには自ら目標を定め、その達成に向けて行動を起こし、試行錯誤できる人を求める社風があるので、その社風が採用基準のベースにもなっています。
キャリア採用についてはその社風に合った人材であることに加え、即戦力として現場に入ってすぐ成果を出せる能力やスキルを有しているかどうかがプラス要素となります。
キャリア採用についてはその社風に合った人材であることに加え、即戦力として現場に入ってすぐ成果を出せる能力やスキルを有しているかどうかがプラス要素となります。
――8年間、採用に携わる中で、学生をはじめとする求職者の特徴や志望動機などは変化していますか?

佐藤(祥):大きく変化していますね。ここは理系と文系に分けてお伝えすると、まず理系学生については大学院生や高等専門学校生の志望者が増えました。文系学生については、先ほど紹介した3つの基盤とも関連しますが、さまざまなチャレンジができて自己成長できる環境に共感し、志望する成長意欲の高い学生が最近は増えてきていると感じます。
また「マイナビ・日経 2024 年卒大学生就職企業人気ランキング」 でも、当社は文系で16位、理系ではトップテンの10位と上位にランクインしています。大手電機メーカーなどと比較検討した上で当社を選んでくれる学生も増えており、アイリスオーヤマが電機・IT分野の企業の一つとして認知されてきているのを実感しています。
また「マイナビ・日経 2024 年卒大学生就職企業人気ランキング」 でも、当社は文系で16位、理系ではトップテンの10位と上位にランクインしています。大手電機メーカーなどと比較検討した上で当社を選んでくれる学生も増えており、アイリスオーヤマが電機・IT分野の企業の一つとして認知されてきているのを実感しています。
多様な人材を即戦力化するための研修制度
――採用の次は「人材育成」について伺います。採用した人材をいかに育成し、戦力化しているのでしょうか?

佐藤(司):新卒採用の場合、まず入社後に3週間から1か月半程かけて新入社員研修があり、その後も高卒社員は入社5年目まで、高専卒・大卒社員は3年目まで毎年1回の集合研修を実施しています。またキャリア採用の場合は、入社時にキャリア新入社員研修を受講してもらうほか、半年後、1年後にもそれぞれ集合研修を行っています。前の会社と比較して「こんなに研修があるんだ」と驚くキャリア社員も多いですね(笑)。
私たちとしては、アイリスオーヤマの一員として早く活躍してほしいとのねらいから、さまざまな研修メニューを設けています。
これらの集合研修に加えて、部門ごとに「スキルアップ研修」が用意されています。各部門で必要とされるスキルをテキスト化し、定期的にテストを実施しています。大学のように年間で必要とされる単位を取得するプログラムです。個々の社員の知識の定着を促すことはもちろん、必要とされるスキルを定型化することで属人化を防ぐねらいもあります。
私たちとしては、アイリスオーヤマの一員として早く活躍してほしいとのねらいから、さまざまな研修メニューを設けています。
これらの集合研修に加えて、部門ごとに「スキルアップ研修」が用意されています。各部門で必要とされるスキルをテキスト化し、定期的にテストを実施しています。大学のように年間で必要とされる単位を取得するプログラムです。個々の社員の知識の定着を促すことはもちろん、必要とされるスキルを定型化することで属人化を防ぐねらいもあります。
――研修メニューが充実しているから、アイリスオーヤマでは若くして部長職などのマネジメント層で活躍する社員も多いのですね 。

佐藤(司):研修だけでなく、日ごろの仕事を通じてOJTを行い、アイリスオーヤマの企業カルチャーを体得するプロセスも、人材育成における重要なポイントだと思います。私自身も営業部門での経験が長かったのですが、周囲の上司や先輩の業務にすぐ着手するスピード感や、諦めずに何回もチャレンジし、やりきる力といった姿を見てきたので、おのずと影響を受けましたね。
1人の社員に評価者が30人?「360度評価 」

――社員の成長を促す点では、「人事評価制度」も重要ですね。
佐藤(司):おっしゃるとおりです。アイリスオーヤマの評価制度で大きな特徴と言えるのが「360度評価」です。
――360度評価自体は、導入している企業は少なくない気もしますが ……。
佐藤(司):そうですね。導入している企業はありますが、当社のように全社員を対象にしている企業は少ないことと、これを20年継続している企業は稀だと聞いています。また当社は、評価に関わる人数を多くしています。1人の社員に対して、上司・部下・同僚・関係部署に、一般社員の場合は10人程度、幹部社員になると20人から30人程度の方々から評価されることになります。
マネージャーなどの昇格者を選考する「昇格研修」もその一つで、昇格候補者に課される課題の審査には、受講者をはじめ、役員や各部署の部門長が評価委員として関わります。これも360度評価の仕組みを取り入れています。
マネージャーなどの昇格者を選考する「昇格研修」もその一つで、昇格候補者に課される課題の審査には、受講者をはじめ、役員や各部署の部門長が評価委員として関わります。これも360度評価の仕組みを取り入れています。

大卒1年目フォローアップ研修の発表の様子
――それはすごい!なぜ、それだけの社員が人事評価に関わるのですか?
佐藤(司):人が人を評価する以上、どうしても好き嫌いなどの感情やバイアスが入ってしまい、公平・公正な評価がしにくくなります。プロセスが透明で、社員にとっても納得感の高い評価を実現するためにも、できるだけ多くの人の目を入れることで評価者の属人性を極力排除し、多面的・総合的に評価する必要があります。
福島:評価に携わる社員に対しても評価者研修を受講してもらい、評価基準の説明や個人的な感情が入らないよう注意喚起しています。極端に偏った評価が見受けられる場合には、人事部が介入して直接指導することもあります。
佐藤(祥):年末年始になると、何十人という論文に目を通したり、評価シートに記入するといった作業にかなり時間を取られるので、正直大変です(笑)。でも、公平・公正な人事評価を大事にする価値観が社内で共有されているので、評価のために時間を使うのが当たり前になっています。
――360度評価について、社員の方からはどんな声が寄せられてますか?
若手社員(入社4年目)
数値実績以外の点(後輩育成やチーム貢献等)も全体的に評価を受けられていて、公平な制度だと感じています。実績と仕事の精度について評価されていると感じるため、何事にもまずはすぐやる事を意識しています。
「360度評価」の中には厳しい意見もありますが、自分の強み・弱みを客観的に知れる良い機会だとポジティブに受け止め、自分に足りない点を認識・改善できるよう次年度の業務目標・アクションプランに織り込んでいます。
「360度評価」の中には厳しい意見もありますが、自分の強み・弱みを客観的に知れる良い機会だとポジティブに受け止め、自分に足りない点を認識・改善できるよう次年度の業務目標・アクションプランに織り込んでいます。
キャリア社員(入社3年目)
単に実績だけでなく、能力と360度評価の3軸で評価頂けているので非常に公平性があると感じています。
例えば商品開発であれば流行などもあるため、商品カテゴリーごとにどうしても実績の差が発生してしまいます。会社貢献度の高いカテゴリーが評価されるのは当然ですが、そこに及ばなかったカテゴリーであってもしっかり評価してもらえる評価基準が整っていると思います。
また、新入社員へのフォローアップ研修が充実している点が非常に良いと感じています。前職では部署配属までの研修はありましたが、2年目、3年目に同期で肩を並べて受ける研修はありませんでした。そのため、他部署の同期が何をしているのか知る機会もなく、自分の会社に対する貢献度がどの程度のものか分かりにくいと感じていました。その点、フォローアップ研修では発表に向けて自分の仕事内容と業績の振り返りと同期が何をやってきたのかが見える化されているので、お互い切磋琢磨する健全な競争につながっていると感じています。
例えば商品開発であれば流行などもあるため、商品カテゴリーごとにどうしても実績の差が発生してしまいます。会社貢献度の高いカテゴリーが評価されるのは当然ですが、そこに及ばなかったカテゴリーであってもしっかり評価してもらえる評価基準が整っていると思います。
また、新入社員へのフォローアップ研修が充実している点が非常に良いと感じています。前職では部署配属までの研修はありましたが、2年目、3年目に同期で肩を並べて受ける研修はありませんでした。そのため、他部署の同期が何をしているのか知る機会もなく、自分の会社に対する貢献度がどの程度のものか分かりにくいと感じていました。その点、フォローアップ研修では発表に向けて自分の仕事内容と業績の振り返りと同期が何をやってきたのかが見える化されているので、お互い切磋琢磨する健全な競争につながっていると感じています。
幹部社員(入社11年目)
「360度評価」は嬉しいこともあれば厳しい意見もありますが、素直に受け止めて、改善しようと思っています。同じ意見が多数出ていれば、なおさら改善が必要だと思って、受け止めるようにしています。多くの部下を持つと多様な考え方もあります。そこをまとめて一つのベクトルに合わせるのも幹部社員の役割なので、多様な意見を理解するいい機会でもあると感じています。
昇格研修は、発表される方が非常に優秀なので、自分の発表で大丈夫かハラハラすることがあります。役員からの質問も鋭いので解答も難しいですが、なるべく事前に準備を行うようにしています。
昇格研修は、発表される方が非常に優秀なので、自分の発表で大丈夫かハラハラすることがあります。役員からの質問も鋭いので解答も難しいですが、なるべく事前に準備を行うようにしています。
創業者の辛い経験から生まれた「働く社員にとって良い会社」

――そこまで公平・公正な評価にこだわっているのは、何らかの原体験があったのでしょうか?
佐藤(司):創業者の大山健太郎(現・代表取締役会長)は19歳で「大山ブロー工業所」の代表に就任して以来、いわゆる「勤め人」の経験がなかったので「自分が勤め人ならばどういう会社で働きたいか」をいつも考えていたそうです。その中でたどり着いた結論が、「社員を正しく評価してくれる会社」だったといいます。
そこから、目指す会社像として「働く社員にとって良い会社」という言葉が生まれました。この言葉は、アイリスオーヤマの企業理念の第3条にも明記されています。
そこから、目指す会社像として「働く社員にとって良い会社」という言葉が生まれました。この言葉は、アイリスオーヤマの企業理念の第3条にも明記されています。
アイリスオーヤマ 企業理念
3. 働く社員にとって良い会社を目指し、会社が良くなると社員が良くなり、社員が良くなると会社が良くなる仕組みづくり。
3. 働く社員にとって良い会社を目指し、会社が良くなると社員が良くなり、社員が良くなると会社が良くなる仕組みづくり。
佐藤(祥):この「働く社員にとって良い会社」という企業理念には、大山(現・会長)自身の経験も大きく関わっています。
1973年のオイルショックの影響を受け、プラスチック製品を主力事業とする大山ブロー工業の業績は大きく悪化し、明日には倒産か、という危機に直面しました。1978年、大山(現・会長)は断腸の思いで創業の地・大阪の本社工場を閉鎖し、仙台へと拠点を移しました。そのときに家族同然でともに歩んできた仲間でも宮城に転居できない社員は辞めてもらわざるをえなかったそうです。その大山(現・会長)の辛い経験が「働く社員にとって良い会社」というシンプルな言葉の背景にはあるのです。
1973年のオイルショックの影響を受け、プラスチック製品を主力事業とする大山ブロー工業の業績は大きく悪化し、明日には倒産か、という危機に直面しました。1978年、大山(現・会長)は断腸の思いで創業の地・大阪の本社工場を閉鎖し、仙台へと拠点を移しました。そのときに家族同然でともに歩んできた仲間でも宮城に転居できない社員は辞めてもらわざるをえなかったそうです。その大山(現・会長)の辛い経験が「働く社員にとって良い会社」というシンプルな言葉の背景にはあるのです。
「3車線人事」で社員の成長を促す
――社員を自らの手で辞めさせるようなことは二度としたくない。その大山会長の強い決意があってこそ、公平・公正な評価の徹底につながっているのですね。
佐藤(司):ただ公平・公正な評価にこだわるだけではなく、重要なのは評価をした「後」です。つまり、成果を挙げた社員に報いること、逆に成果を出し切れなかった社員に気づきを与え、再チャレンジできるように導くことが大事です。
前者については、営業、開発、ECなど各部門で半期ごとの業務実績を報告・評価する「評価会」、さらに部門を横断して半期ごとに活躍した社員を表彰する「グランプリ大会」を開催しています。また、幹部社員の中で、特に業績への貢献度の高い人には金・銀・銅の3つのメダルが授与され、メダリストには特別賞与が支給されます。
前者については、営業、開発、ECなど各部門で半期ごとの業務実績を報告・評価する「評価会」、さらに部門を横断して半期ごとに活躍した社員を表彰する「グランプリ大会」を開催しています。また、幹部社員の中で、特に業績への貢献度の高い人には金・銀・銅の3つのメダルが授与され、メダリストには特別賞与が支給されます。
――最大300万円!夢がありますね。

佐藤(祥):私自身も、過去に決算賞与で銀メダル、銅メダルを授与しました。数字が見えやすい営業や開発だけでなく、人事のようなバックオフィス部門の仕事ぶりも評価してくれたことが嬉しかったです。
その経験から補足すると、評価会やグランプリ大会では結果だけでなく、課題に対してどう考え、どういう戦略をとったのか、といったプロセスを重視しています。そのプロセスにしっかりした意図が伺えれば、今回のタイミングでは結果が出なかったとしても、次の半期のタイミングで花開くかもしれないし、そのプロセスを知的財産として社内に共有することができます。そのような目的もこの評価会やグランプリ大会にはあります。
その経験から補足すると、評価会やグランプリ大会では結果だけでなく、課題に対してどう考え、どういう戦略をとったのか、といったプロセスを重視しています。そのプロセスにしっかりした意図が伺えれば、今回のタイミングでは結果が出なかったとしても、次の半期のタイミングで花開くかもしれないし、そのプロセスを知的財産として社内に共有することができます。そのような目的もこの評価会やグランプリ大会にはあります。
福島:成果を挙げている社員には、新たなポストに抜擢することもあります。結果を残した社員や将来のチームリーダー、幹部候補になりうる社員は昇格のタイミングを待たずに、組織を変更してチームリーダーや責任者として抜擢します。
――「ポストが空かないから昇格させない」というのでなく、ポストの有無に関わらず社員を抜擢して、上のポストに引き上げるのですね。

福島:一方で、後者の成果を挙げきれなかった社員には「イエローカード」という制度があります。誤解のないように言うと、これは社員を罰したりレッテルを貼ったりするものでは決してありません。幹部職員がマンツーマンで助言を行いながら、適切なフィードバックを与え、目標に向けて再チャレンジできるようにするのが目的です。このイエローカードがきっかけとなり、その後に大きな成果を挙げる社員も少なくありません。
佐藤(司):アイリスオーヤマでは、自動車の車線になぞらえて「3車線人事」と呼んでいます。能力が高く実績を挙げている社員には、「追い越し車線」で一つ上のポストに抜擢する。壁に直面している社員には「登坂車線」に移って少しペースを落としながら力を蓄えてもらう、という考えです。
就業規則の改定は月1回以上!変化し続ける人事制度

――大山会長の経験から導かれた「働く社員にとって良い会社」の企業理念が、一つひとつの人事制度に一貫しているのですね。
福島:ここまでお話した採用、人材育成、人事評価制度のほかにも、社員の待遇や勤務制度なども、「働く社員にとって良い会社」を実現するために随時見直しを行っています。
一例を挙げると、出産を経験した女性社員が育児を理由にキャリアを諦めてしまうことがないよう、子どもが6歳に達する時点まで認めていた育児短時間勤務制度を、2023年4月に小学3年生にまで拡張しました。また、近年では転勤を望まず、その地域で働きたいとの意向を持つ社員も増えています。そのため、採用時の待遇選択として転勤を基本的に受けない「地域限定社員」という制度もあります。
こういった制度改定の多くは、現場の社員からの声がきっかけになっています。そういった現場の声に耳を傾け、その意見が納得できるものであれば就業規則を改定します。結果、当社では大小さまざまな就業規則の改正が、少なくとも月に1回は行われており、時には月に数回の改正をすることもあります。
一例を挙げると、出産を経験した女性社員が育児を理由にキャリアを諦めてしまうことがないよう、子どもが6歳に達する時点まで認めていた育児短時間勤務制度を、2023年4月に小学3年生にまで拡張しました。また、近年では転勤を望まず、その地域で働きたいとの意向を持つ社員も増えています。そのため、採用時の待遇選択として転勤を基本的に受けない「地域限定社員」という制度もあります。
こういった制度改定の多くは、現場の社員からの声がきっかけになっています。そういった現場の声に耳を傾け、その意見が納得できるものであれば就業規則を改定します。結果、当社では大小さまざまな就業規則の改正が、少なくとも月に1回は行われており、時には月に数回の改正をすることもあります。
――月に1回以上!就業規則の柔軟な見直しに驚きました。

福島:それも、アイリスオーヤマの企業カルチャーである「スピード感」の表れです。スピード感を重視するからこそ、社員の提案を受け、役員決裁を受けることができれば、その翌月からはすぐに規定改定をして制度開始をします。そのスピード感が、人事制度においても徹底されている社風がありますね。
佐藤(司):「人事」というと一般的には「守り」のイメージがあるかもしれませんが、社会情勢や働く社員の価値観、ライフスタイルなどが変化する中で、その変化をとらえてスピーディーに対応するのは、ビジネスであっても、社員を支える人事制度であっても同じことです。
人事制度ありきで考えるのではなく、常に「働く社員にとって良い会社」とは何か、を自問しながら、これからも社員が働きやすく、チャレンジしやすい人事制度の運用に努めていきたいです。
人事制度ありきで考えるのではなく、常に「働く社員にとって良い会社」とは何か、を自問しながら、これからも社員が働きやすく、チャレンジしやすい人事制度の運用に努めていきたいです。
2016年に人事部へ異動し、現在は人事部新卒採用課のマネージャーを務める。