インタビュー

「平常時も非常時も地域に頼られる
施設でありたい。」

仙台長町未来共創センター 設立の想い

2022.7.12

株式会社フクダ・アンド・パートナーズ 代表取締役社長 福田 哲也 様

株式会社フクダ・アンド・パートナーズ

代表取締役社長 福田 哲也 様

仙台長町未来共創センター

東日本大震災を通じて学んだ施設づくりの大切さ

―仙台長町未来共創センター設立の想いを教えてください。

普段、当社では物流施設づくりを行っており、私たちの仕事は社会インフラという点で人々の生活を支えているという自負を持っております。今回、仙台市長町の土地を購入するご縁に恵まれ、最初に考えたのが、社会に役立つ施設を作ろうということ。その大きな理由が東日本大震災での経験です。震災後、当社のお客さまの物流施設をはじめ、さまざまな施設の復旧に携わりました。物流施設は平常時、生活を支えるインフラですが、非常時でも水や食料品など生活必需品を運び、ストックする場所がないとタイムリーに供給されない、つまり物流を止めないことが人々の命を支えることだと実感しました。この体験が当施設設立の土台にあるのは間違いありません。

株式会社フクダ・アンド・パートナーズ 代表取締役社長 福田 哲也 様
株式会社フクダ・アンド・パートナーズ 代表取締役社長 福田 哲也 様

平常時には地域のまちづくりの拠点として
非常時には地域の避難場所として

―震災時の体験からコンセプトである、平常時と非常時に機能が変わる「リバーシブルビル」が生まれたということですね。

そうですね。経済合理性を企業として目指しつつ同時に社会貢献もしていく。この両立こそが企業として求められると考えています。当施設の場合、平常時はオフィスビル、さらに子育て施設、セミナールームなどを備えることで、地域の方々の暮らしに近い施設であることを目指しました。
社会貢献で大事にしたのは、仙台市のまちづくりの指針です。仙台市は環境防災都市であり、子育てしやすいまちづくりというテーマを持っており、その点はかなり意識しました。その一環として行ったのが行政や地域住民へのヒアリングです。どんな施設が必要だと思っているか聞き込みを重ねました。「子育てのスペースはもっとあっていいよね」や、「この周辺には大きな集会スペースがないよね」など、地域の声にしっかりと耳を傾けて、それを活かした施設づくりを進めました。
また、非常時には2階が避難所になり、最大80名の帰宅困難者を受け入れることができます。ここに避難できるということを避難訓練などを通じて地域の方々に知っていただくのはもちろん、受け入れる私たち、テナント様、連携する行政を含めて体制を整えておきたいと考えています。

人の交流や教育を主眼に置いた施設づくり
オフィスに加え、保育園やセミナールームなど人の交流や教育を主眼に置いた施設づくりを行われています。
非常時には最大80名の帰宅困難者受け入れが可能。水や食糧や日用品など非常時に必要な物資を備蓄。

地域を見守る施設として鳥居をモチーフとした建物デザイン

―サステナブルの観点からこだわった点はありますでしょうか。

建物デザインは近くにある諏訪神社の鳥居をモチーフに、大びさしに囲まれているイメージにしました。神社は地域を守る象徴的な施設ですので、外装から地域の方々を守る施設という想いを込めています。
また、東日本大震災時の停電で真っ暗になりとても困った経験から、実際に非常時でも照明が消えない、地域を照らす施設であることも当施設のコンセプトに込めました。非常用電源が停電から72時間稼働し、さらに太陽光発電によって蓄電できるシステムを導入しているので、太陽光がなくならない限り、電気が失われることはありません。さらに、電気自動車や水素自動車を電源代わりにすることで、少なくとも避難スペースや共有部の通路の照明は点灯し続け、明かりを絶やさないようにできます。
そのことを施設の外観からも見てとれるように、外装の大びさしの下に設置したのが、アイリスオーヤマさんの外構照明。「あそこに行けば電気がある」「スマートフォンが充電できる」ということを困っている人たちに伝えるための照明というわけです。

―災害時には照明が灯っているのは本当に大切ですよね。

明かりというのは人々の生活に欠かせないものであり、時に人の心を照らし出し映し出すもの。明かりがあるだけで穏やかに過ごすことができますし、災害時にはとても強い勇気をくれる。そういった意味で、外装の明かりは非常に重要で、大びさしの下に設置した外構照明は施設の目的や想いを浮かび上がらせてくれるものだと思っています。

神社の鳥居をモチーフにした建物デザイン
神社の鳥居をモチーフにした建物デザイン。停電時でも消えない照明が大びさしに当たることで、地域の避難の目印となるように設計されています。

働き方や災害などあらゆる場面を想定して導入された
無線方式の照明制御システム「ライコネックス」

―照明制御に無線方式であるライコネックスを希望された理由を教えてください。

私たちにとってフレキシブルに使え、遠隔でも操作できる照明が良いと思っていました。その理由の一つとして、このオフィスは常に少人数しかおりません。リモートワークなど多様な働き方が広がるなか、事故や災害など万が一の時に担当者が不在にしているというケースも考えられます。そんな時に東京の本社からも操作できるなど、あらゆる場面を想定しても、無線制御という選択がベストだと考えました。万が一、東京に大地震が起きた時、この施設が代替オフィスになることも想定しており、そのためにも遠隔操作できることを当初から希望していました。

アイリスオーヤマの無線制御システム「ライコネックス」

―非常時に一時避難所になるオフィスビルならではの設計上の工夫はありますか。

まず、東日本大震災の時、どんな状況になったのかを改めて考えてみました。電気が気軽に使えない中、スマートフォンを充電するために列をなし、多くの人が不安を抱えながらひたすら待つ状態でした。通信手段を確保し、誰かとつながっていられるのはとても心強いことです。そのような状況を目にして、当施設では、常に電力を確保でき、避難されてきた方々が情報収集や通信手段としてのスマートフォンをいつでも充電できる環境を整えることは必須だと考えました。
そのための自家発電装置、蓄電池などの重要設備はハザードマップをもとにすべて高さ2m以上の架台の上に据えています。この高さを確保することで浸水によって機器が損傷する可能性は極めて低くなります。ただ、敷地が限られていたのでありとあらゆる工夫を施したのですが、私たちの知識や技術だけではベストな環境に整えるというのは困難でした。そこで東北大学災害科学国際研究所の教授にご意見をいただき、それに実際に私たちが東日本大震災で経験した知見をミックスし、設計やレイアウト、設備面などを練っていきました。また、仙台市の各局からもさまざまなご意見をいただきました。実際、行政からの補助金も活用させていただきましたし、まさに当施設は産・官・学による共創によって生まれた施設です。作って終わりではなく、これからさらに仙台市、東北大学とより強固な連携を築いていく必要があると考えています。

非常時の施設機能

これからの空間づくりと照明には多様な働き方や目的にあわせたフレキシブル性が重要

―これからの空間づくり、オフィス環境について教えてください。

働く場所として、時には憩う場所として、やはり快適性という点が重要になるでしょう。人は昔からさまざまな考えを持っていて多様ですが、働き方だけは朝8時に出社して、17時に帰宅するというように一律でした。ただ、今は働き方も多様化し、今後ますますその傾向は強くなっていくでしょう。そう考えると、機能的に働くスペース、デジタルを駆使して生産性を向上させるスペースに加え、くつろげるスペース、コミュニティを生み出し、深めていくスペースなど、さまざまな空間が必要になってきます。
そういった時に重要な役割を果たすのが照明です。例えば、落ち着いて物事を考えたいときは落ち着きのある明かり、元気がない時や、避難時などのように不安な気持ちの際はできるだけ明るいほうが良い。大切な人と過ごす時は温かい明かりに包まれると、より気持ちが安らぎます。つまり人の心は照明によって動かされるということで、照明一つとってもその時々でより良い効果をもたらすと考えます。ですから、明るさや色をはじめ、間接照明と一体になっているなど、シーンや環境に合わせた照明選びが大切なのではないでしょうか。これからのオフィスはもちろんですし、公共施設などシーンによって多目的に多様なニーズに応えられる照明。つまりフレキシブル性があることがポイントになると私は考えます。

フクダ・アンド・パートナーズ様オフィス/テナントオフィス
(写真左)フクダ・アンド・パートナーズ様オフィス。快適に働ける空間づくりはもちろん、非常時の代替オフィスとしても設計されています。
(写真右)テナントオフィス。施設全体は非常時には安心できるように明るさを重視した設計。

―当施設が地域においてどんな存在になってほしいでしょうか?

先にも述べましたが、行政や地域住民の皆さまのリアルな声をヒアリングして、施設づくりを進めてきました。ある意味「地域のみんなでつくった施設」とも言えるでしょう。皆さまの想いをアイデアに変換して生まれた施設だけに、地域に根ざして愛される存在になってほしいと思っています。
そのために私たちが取り組まなければならないのが、人とのつながりを大切に守っていくこと。人のつながりは能動的に深めていかないと途絶えてしまうものです。施設は完成してからが始まりですから。

―最後に、今後の御社の取り組みを教えてください。

当社は物流施設づくりを一つのコアとしていますので、今後も人々の生活を支えるインフラづくりに力を注いでいきます。私たちがこれまで蓄積してきたノウハウを駆使して、お客さまや社会に貢献していくのが普遍の目標です。一方で、社会の変化にも柔軟に対応することも必要だと考えます。特にカーボンニュートラルやSDGs、BCPといった社会全体の課題にはしっかり取り組んでいかなければいけません。
ビジネスとしての経済合理性、社会貢献をバランス良く両立させることが、今後ますます求められるというのが私の考えです。今後、今回のプロジェクトを通して得た知見を日本各地に広げていけたらと考えています。

[所在地]宮城県仙台市太白区郡山6-7-21
[企画設計/事業構築] 株式会社フクダ・アンド・パートナーズ 様
[建築設計/施工] 株式会社 安藤・間 様
[設備設計/施工] 株式会社 きんでん 様
[環境設備設計/施工] 株式会社 エナジア 様
■施設概要
[敷地面積]1,426.67㎡
[延床面積]2,864.73㎡
[ワンフロア賃貸床面積]約110坪 S造 5階建て
■主な納入器具
・LiCONEX対応LED照明(LED一体型ベースライト/LEDダウンライト/LED間接照明)
・外構照明(調光調色)

株式会社フクダ・アンド・パートナーズ 仙台長町未来共創センター 様
[仙台長町フューチャー・コ・クリエーションセンター計画 Webサイト]
https://www.fandp.co.jp/snfcc

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下記までお問い合わせください。

022-253-7095
〈受付時間〉平日9:00〜17:00(夏季休業、年末年始期間を除く)

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