非常灯(LED非常用照明器具)とは
不特定多数の人が集まる場所での火災や地震、その他の災害や事故…。
非常用照明器具は、そのような場合に生じる停電の際に、その場にいる人々が安全に避難できるように室内や通路を照らす照明器具です。
非常灯(LED非常用照明器具)の基本要求機能
照明器具一覧
電源内蔵 | 種類 | 配線図 | |
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非常用白熱灯組込型(LED組込型) 平常時には一般蛍光灯(LED)を使用し、 |
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非常用LED・蛍光灯併用型 蛍光灯(LED)を平常時および非常時、 |
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非常用LED・白熱灯専用型 平常時には、消灯して |
電源別置 | 種類 | 配線図 | |
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非常用LED・白熱灯専用型 非常用白熱灯を非常時に点灯させる方式 |
電源の種類について
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電池内蔵型器具
- 30分タイプ
- 60分タイプ
- 電池別置型器具
- 内蔵用電源装置
配線について
- ●配線は一般屋内配線法に従ってください。(耐火規制は受けません。)
- ●専用回路の配線の途中には、スイッチは設けないでください。
- ●常用回路の配線には、一般照明器具を接続してもかまいません。
- ●専用回路の開閉器には、非常用照明器具である旨を表示し、不用意に操作されないようにしてください。
- ●器具の口出線と屋内配線の接続は、コンセント等を介さずに直接接続してください。
- ●器具のタイプにより、配線方法が異なります。下の非常用照明器具一覧表をご参照いただき、用途に応じて配線してください。
-
●絶対にしてはならない配線(単相3線、3相4線)3線配線の場合、機器を損傷する恐れがあります。次の配線は行わないでください。
電源内蔵 | 種類 | 配線図 | |
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非常用蛍光灯組込型
平常時には直管形LEDランプを使用し、 |
非常灯(LED非常用照明器具)の設置設計
照明設計上の注意事項
①照明の範囲
避難行動のさまたげとならない隅角部は1lx(LED・蛍光灯は2lx)を必要としません。
②照明計算
照明計算は逐点法により行います。光束法は使用できません。
③保守率・光束換算係数
建築基準法は維持基準を示しているため照度1lxの値は経年変化による器具の汚れ、光源の黒化による減光を生じた後にも維持しなければなりません。
したがって設備設置当初は1lxよりも明るく設計しておく必要があり、照明設計には照明学会技術指針の普通レベルの保守率で計算します。
器具の種類 | 非常用光源の種類 | 設計値 | |||
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設計照度() | 保守率 | 光束換算係数 | |||
露出型 | 蛍光ランプ | FHF | 2.0 | 0.69 | 1.0 |
FLR | 2.0 | 0.70 | 1.0 | ||
FHT | 2.0 | 0.70 | 1.0 | ||
電球 | 白熱・ハロゲン | 1.0 | 0.89 | 1.0 | |
ミニクリプトン | 1.0 | 0.86 | 1.0 | ||
下面開放型 (下面粗いルーバー) |
蛍光ランプ | FHF | 2.0 | 0.69 | 1.0 |
FLR | 2.0 | 0.70 | 1.0 | ||
FHT | 2.0 | 0.63 | 1.0 | ||
電球 | 白熱・ハロゲン | 1.0 | 0.79 | 1.0 | |
ミニクリプトン | 1.0 | 0.77 | 1.0 | ||
簡易密閉型 (下面カバー付) |
蛍光ランプ | FHF | 2.0 | 0.65 | 1.0 |
FLR | 2.0 | 0.66 | 1.0 | ||
FHT | 2.0 | 0.59 | 1.0 | ||
電球 | 白熱・ハロゲン | 1.0 | 0.74 | 1.0 | |
ミニクリプトン | 1.0 | 0.72 | 1.0 | ||
完全密閉型 (パッキン付) |
蛍光ランプ | FHF | 2.0 | 0.73 | 1.0 |
FLR | 2.0 | 0.74 | 1.0 | ||
FHT | 2.0 | 0.66 | 1.0 | ||
電球 | 白熱・ハロゲン | 1.0 | 0.84 | 1.0 | |
ミニクリプトン | 1.0 | 0.81 | 1.0 |
備考)電源別置型で電球を用いるものについては、光束換算係数を0.7とする。
④電圧降下、器具端子電圧
蓄電池で30分間点灯すると、蓄電池の放電により端子電圧は低下し、明るさは暗くなります。配線の電圧降下も考え合わせて適切な器具端子電圧と蓄電池容量を選定します。電池内蔵型の場合には、あらかじめ電圧降下を考慮して設置間隔表を作成してありますので、特に考慮する必要はありません。
器具端子電圧(%) | 電球 | 蛍光ランプ |
---|---|---|
100 | 1.00 | 1.00 |
95 | 0.85 | 0.92 |
90 | 0.70 | 0.84 |
85 | 0.60 | 0.75 |
80 | 0.50 | 0.65 |
75 | 0.40 | - |
逐点法による照度計算式
配置表によらないで、器具の配光曲線から照度計算する場合に利用します。初期照度、保守率などを選定し、任意の点の水平面照度を求めます。
消防法との関係
建築基準法では、30分または60分以上(消防法は20分または60分以上)非常点灯しなければならないよう設置・点検の義務が定められています。消防法とは、火災の予防と、火災による被害を最小限に抑えることを目的とした法律です。
非常灯(LED非常用照明器具)の設置場所と設置基準
対象建築物 | 対象建築物のうち設置義務のある部分 | 対象建築物のうち設置義務免除の建築物または部分 |
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1. 特殊建築物
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2〔. 階数≧3 〕で、〔延べ面積≧500㎡ 〕の建築物 | 〔 同上 〕 | 上記の①②③④⑤⑥1戸建住宅 |
3〔. 延べ面積 > 1,000㎡ 〕の建築物 | 〔 同上 〕 | 〔 同上 〕 |
4. 無窓の居室を有する建築物 |
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上記の①②③④ |
非常灯(LED非常用照明器具)の配置方法
単体で配置する場合
各天井高(器具取付高さ)に対して、2lx(蛍光灯は2lx、白熱灯は1lx)の範囲を図1-A1で表します。蛍光灯や組込形器具のように配光に方向性のある場合は図2、図3のようにランプの軸に直角の方向(A断面方向)をA1及びA1´、平行の方向(B断面方向)をB1で表します。
配光に方向性がない場合
配光に方向性がある場合
直接配置する場合
各天井高(器具取付高さ)に対して、幅2mの廊下で壁ぎわの合成照度が2lx(蛍光灯は2lx、白熱灯は1lx)以上となるための最大取付間隔(単位m)をA2、B2で表してあります。蛍光灯のように配光に方向性のある場合で、図4のようにA断面方向に配置する場合はA2で表します。図5のようにB断面方向に配置する場合はB2で表しますので、この数値以下の間隔で照明器具を取り付けてください。また廊下の端部は、単体配置の表により照度範囲A1、A1´、B1、B1´を決めてください。
四角配置する場合
各天井高(器具取付高さ)に対して、照明器具の対角線の交点が2lx(LED・蛍光灯は2lx、白熱灯は1lx)以上得られる場合の最大取付間隔(単位=m)をA4で表します。蛍光灯や組込形器具のように配光に方向性のある場合は図6のように、A断面方向の間隔をA4、B断面方向をB4で表しますのでこの数値以下の間隔で取り付けてください。また、壁から1m以上離して設置する場合は、図7のようにA0、B0、A4、B4以下の間隔で取り付けてください。
注)A0、B0は当社ホームページの配光データをご参照ください。
注)A0、B0の代わりにA1、B1を使った場合、器具間の壁面近くの照度が不足します。必ずA0、B0にて設置してください。
注)緩和部分については、「非常用の照明装置に関する指針ー昭和47年版」(建設省住宅局建築指導課監修)による
※非常用照明器具技術基準JIL5501-2009抜粋
非常灯(LED非常用照明器具)の配置設計例
小部屋を含む建物の例
半円で歩行距離を示すのは適当ではないが、具体的な通路の示し方がないので半円で示した。実際の歩行距離によって制限を受けるので注意を要する。
- 1. 小部屋部分は30m以内であり、除外される。
- 2. 大部屋部分は30mをこえる部分があり、この大部屋すべてに設置が必要となる。
- 3. 廊下部分は避難経路となるので設置を必要とする。
- 4. 避難階の直上階、直下階は30m以内が20m以内となるので注意を要する。
工場の例
a)機器配置が不明の場合
30mでおおわれない斜線部分があり、この建物はすべて設置を必要とする。
b)機器配置が明確の場合
この建物はすべて設置を必要とするが、斜線部分の大形機器設置個所は除外され、通路のみに設置を必要とする。
非常灯(LED非常用照明器具)の階段配置の見方
踊り場の照度チェック
図9より配置条件は、階段の幅3.6m、器具Aの取付高さ3.0m、器具Bの取付高さ2.0mです。この場合、2lxを得る最大距離は階段配置表のY=2mのデータから読み取ります。器具Aの最大距離は表2より5.9m、器具Bの最大距離は表3より3.8mとなります。それぞれの器具による壁際の最大距離の点をa0、b0とし図9に示します。各踊り場はa0、b0の内側にあるため、2lx以上の照度が確保できることが分かります。
階段の中間部の照度チェック
- ①器具Aによる1lxの照度範囲
- 図 9より器具Aの取付高さは、1階からでは3.0m、踊り場の高さからでは約1.0mとなります。表2より、Y=2m、取付高さ3.0~1.0mの範囲の高さで1lxが得られる最大距離を読み取ります。壁際で1lxとなる点をa1~a5とし、各点を実線で結んだものを図9に示します。
- ②器具Bによる1lxの照度範囲
- 器具Bの取付高さは、踊り場からでは約2.0m、1階からでは約4.0mになります。表3より、Y=2m、取付高さ2.0~4.0mの範囲で1lxの最大距離を読み取ります。壁際で1lxとなる点をb1~b4とし、各点を波線で結んだものを図9に示します。
- ③器具Aと器具Bの合成照度
- 図 9から、器具Aにより1lxが得られる踏面はNo.1からNo.10になります。器具Bでは同様に1lx以上の踏面はNo.3からNo.11になります。従って、階段の中間部の合成照度は2lx以上になります(言い換えれば、実線と波線の交点Pが踏面より上側にあればよいことになります)。図10のように、交点Pが踏面より下側にあれば、階段の中間部の照度は2lx未満となります。