モノづくりは人づくり。多様な商品を生み出すアイリスオーヤマの製造・物流の強みとは

モノづくりは人づくり。多様な商品を生み出すアイリスオーヤマの製造・物流の強みとは

生活者が必要としているものを生活者の目線で商品化する「ユーザーイン発想」で、家電やインテリア、食品など多様な商品を生み出しているアイリスオーヤマ。そのアイデアを形にする強さの源泉は、国内に19拠点※、海外に18拠点(アイリスグループ全体、合計37拠点)を構える「工場」にあります。アイリスオーヤマの各工場には、商品の製造から管理、配送にいたるサプライチェーンの全工程に、お客さまのもとにスピーディーに商品を届ける工夫が施されています。そのアイリスオーヤマの工場が持つ強さの秘密を、国内の工場を統括し、製造や物流の現場を知り尽くすキーパーソンに聞きました。
※:岡山瀬戸内工場は2025年竣工予定、御殿場物流センターは2026年竣工予定。

モノづくりは人づくり。多様な商品を生み出すアイリスオーヤマの製造・物流の強みとは

+1 Day 編集部

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▼お話を聞いたのは…
アイリスオーヤマ株式会社 執行役員 製造・物流部統括 統括工場長 副島 昌和

アイリスオーヤマ株式会社 執行役員 製造・物流部統括 統括工場長 副島 昌和

1999年に入社。鳥栖工場の製造部組立課に配属後、物流部に異動。2013年に鳥栖工場の工場長となり、2019年には西日本の工場統括工場長に着任。2020年から国内全工場を統括し、2022年より執行役員統括工場長を務める。

ユーザーイン発想から生まれた「メーカーベンダーシステム」

2024年の元日、日本海沿岸を襲った能登半島地震。甚大な被害を受けた被災地支援のため、アイリスオーヤマは1月2日から取引先へ支援を開始し、順次、飲料水や使い捨てカイロ、ブルーシートなどの支援物資を宮城県角田工場から被災地へと届けました。

この物資輸送の陣頭指揮にあたったのが、統括工場長の副島昌和です。
「発災直後から従業員たちが工場に集まって物資をトラックに積み、迅速に配送することができました。被災された方のもとに一刻も早くお届けしたいとの思いで対応にあたりました」

国内にグループ全体で19の拠点を構え、多種多様な商品を製造している、アイリスオーヤマの各工場。その他社にない大きな特徴は、「製造」と「物流」の2つの機能を兼ね備えた「メーカーベンダーシステム」にあります。
小売店から注文を受けた商品を直接配送できるだけでなく、小売店から生活者の声がダイレクトにフィードバックされるため、生活者ニーズに対応したオンリーワン商品のスピーディーな開発を可能にしています。中間コストを削減することで値ごろな価格を実現できるのも大きなメリットです。
アイリスオーヤマの「メーカーベンダーシステム」について図解
アイリスオーヤマの強さを語るうえでの代名詞にもなっている、このメーカーベンダーシステム。「お客さまからの声をすぐに商品開発に反映したいとの考えから、『自分たちで問屋の機能を持ち、直接お客さまに商品をお届けする』というアイデアが生まれました」と副島は言います。

小売店やお客さまから届けられた声は、「ICジャーナル」という全社の情報共有システムに集約されます。キーワード検索するだけで、日本中、ひいては世界中の各拠点にいる従業員がお客さまから受けた、そのキーワードに関連する意見、要望、クレームの内容が一覧で表示され、常に品質の改善に役立てられています。

エンドユーザーである生活者の声に耳を傾けながら見えないニーズを発見し、「これがほしかった!」というアイデア商品として形にするのが、アイリスオーヤマの「ユーザーイン発想」。そのマインドは、商品の企画にとどまらず、工場における製造、管理、配送のサプライチェーン全体においても一貫しています。

プラスチック成型の技術をコアに多様な商品を製造

アイリスオーヤマのショールーム
プラスチック用品から家電、食品、調理器具に至るまで、アイリスオーヤマが取り扱う商品は実に2.5万点と膨大な数に上ります。

「特に中国・大連の工場はグローバルのマザー工場なので、プラスチックから木製品、金属や不織布など多くの素材を取り扱っています。お客さまからご要望を受けたものは大連の工場から直接取り寄せ、いち早く届けられる。様々な素材をミックスして製品を作ることもできる。これが当社のモノづくりの強みの一つです」

創業時のプラスチック成型の事業から、LED、家電、そしてお米や飲料といった食品へと業態が拡大していく過程で、製造の現場で混乱することはなかったのでしょうか。その問いに対して副島は「アイリスオーヤマのモノづくりでは、多種多様な商品を取り扱っていながら、実は創業以来のプラスチック成型の技術がコアになっています」と答えます。
アイリスオーヤマのプラスチック収納棚
「例えば食品事業もパックごはんの容器を製造する工程はプラスチック成型と同じ。冷蔵庫も家電ではなく『収納棚』と考えれば、これまでのプラスチック収納の技術やノウハウを横展開できます。これまで培ってきた技術と必ずつながっているので、新たな分野のモノづくりにも違和感なく対応できますし、多種多様な商品を開発しているからこそ、引き出しのバリエーションが増えるのです」

配送効率が約3倍に向上!「ケースコンベアシステム」

モノづくりの技術とバリエーションに加えて、アイリスオーヤマの工場が持つ大きな強みの一つが「スピード」。能登半島地震の際にも1月2日から取引先へ支援を開始し、3日には被災地に物資を届けられたように、必要としているお客さまに1日でも早く届ける輸送体制を確立しています。

まず、工場の立地にあたっての絶対条件が「一日配送圏」であること。製造と販売の距離を限りなく近づける「地産地消」の体制で、全国どこでも一日以内で商品を配送できるようにしています。

2025年には、アイリスオーヤマとして国内13か所目の工場となる「岡山瀬戸内工場」が竣工を控えています。この新たな工場の増設に踏み切ったのも、中国・四国地方や西日本全域へのよりスピーディーな出荷を行うことをねらいとしています。
ローリフトで工場内の輸送荷物を移動させている様子
工場立地だけでなく、「アイリスオーヤマの各工場では製造、管理、出荷、配送のサプライチェーンを日々改善し、さらなるスピード向上の努力を続けています」と副島は語ります。
その改善の努力は、工場の至るところに見られます。フォークリフトより小回りが利き、免許なしで運転できる「ローリフト」をいち早く導入。配送に用いるパレットも通常より一回り大きいサイズを用いることで配送効率を高めています。

さらに、物流業界においては自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによる「2024年問題」がクローズアップされる中、輸送効率を高めドライバーの負担を減らすための“秘策”を導入。それが「ケースコンベアシステム」です。
ケースコンベアシステム
お客さまからの発注データを工場が受け取り、受注が確定するとボタン一つで商品が出庫され、あとは商品をベルトコンベアに載せるだけで、自動でトラックまで届けるという画期的なシステム。配送効率が今までの2倍~3倍に向上しました。

「このケースコンベアシステムの導入で、これまで1日がかりで行っていた出荷の作業時間も半日程度で済むので、ドライバーの『荷待ち(待機時間)』のタイムロス削減にもつながります」

妥協を許さない「ダブルチェック」の品質管理

品質管理の検査をしている様子
一方で、スピードばかりを重視して製造や管理の工程が拙速になってしまっては、小売店やエンドユーザーのお客さまの信頼を損ねてしまいます。スピードだけでなく、製造工程の品質管理のチェック体制も、アイリスオーヤマの各工場では徹底されています。

「品質管理はモノづくりの生命線。自社内で独自に厳格な品質基準を定めており、品質の5つの要素(環境・設備・製品・仕組み・人)ごとに基準を設けています」
さらに、アイリスオーヤマでは品質管理の工程を「検査」と「監査」の2つに分け、品質をダブルチェックする体制を構築しています。

工場単位で実施する「検査」は、工場長も含めてくまなく工場内をチェックして回ります。しかし、工場だけのチェックではどうしても見落としが出てしまうし、生産性を優先するあまりチェックの目が甘くなることもあります。そこで、工場とは別に品質管理を専門に担う部門が別に存在し、第三者的な「監査」の立ち位置でダブルチェックを行うのです。

その品質管理部門の担当者は細かいところまで目を光らせ、時には「最近、従業員の靴の並び方が雑だ」というところまで指摘を行い、「ダメなものはダメ」とブレーキをかけます。
「品質管理部門の指摘は本当にシビアなので、時には私も工場長としてバチバチやり合うこともあります(笑)。でも、同じアイリスオーヤマの社員だからこそ『お客さまのために何が最善か』という視点はお互い共有しています。たとえ一千万円の損失につながるような指摘も、『これはお客さまのためにならない』と最終的に納得できたら、潔くその一千万円を水に流します」

「モノづくり」は「人づくり」

入社以来、一貫して工場や物流倉庫の管理・運営に携わってきた副島。「モノづくりは、イコール『人づくり』なんです」と断言します。
30歳のとき、鳥栖工場(佐賀県)の工場長に抜擢されます。400人以上の従業員中、自分より年下の従業員は数えるほどしかいない中で現場の指揮を任されるという、かなりチャレンジングな経験でした。
「ただ抜擢するだけでなく、当時の大山社長(健太郎/現・代表取締役会長)をはじめさまざまな役員が現場を訪れては、私が孤立しないようさまざまなフォローをしてくれました。アイリスオーヤマとは『教育会社』なんだ、と実感した、私の原体験です」

抜擢人事を通じて、「経営層と同じものの見方ができるよう、徹底的に教育してもらって、今日の自分があります」と言う副島。今は、国内工場を統括する立場として、若い社員を抜擢することもあります。
「最初からできる人を選ぶというよりは、意欲や向上心が強く、人柄がいい社員を選び、抜擢するよう心掛けています」

また、アイリスオーヤマでは、全国の工場の各製造ラインの、さらに下のレイヤーのチーム単位で、常に競争が行われています。生産性と品質それぞれにおける成果指標をもとに、チーム単位で成果を競い合うカルチャーが浸透しているのです。このカルチャーがあるからこそ、各工場において生産性向上や品質向上の改善が常に行われるとともに、人材が次々に育っていくのです。

「メーカーベンダーシステム」をはじめとするスピーディーな製造と配送を実現する仕組み。多種多様な商品の製造に対応できる技術のバリエーション。妥協を許さない品質管理体制。そして、これらの強みを支える基盤となる「人づくり」のカルチャー。アイリスオーヤマの各工場にはこれだけの強みが備わっています。だからこそ世の中にないアイデアを次々に形にし、お客さまに届けることができるのです。

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