生産拠点にもアイデアを!アイリスオーヤマの「マザーファクトリー」大連工場の秘密

生産拠点にもアイデアを!アイリスオーヤマの「マザーファクトリー」大連工場の秘密

家電、LED、インテリアやペット用品にマスクまで、多種多様なアイデア商品を生み出しているアイリスオーヤマ。
そのアイデアを形にする生産拠点は、国内のみならず海外にも広く展開しています。なかでも、生産の中核拠点に位置づけているのが中国。その中国にある10工場のうち7工場を構えるのが「大連」で、2万5000点のアイテムのうち、実に約1万4000点を日々生産しています。アイリスオーヤマにとって「マザーファクトリー」ともいえる存在の大連工場。
そのモノづくりの技術や収納力、人材育成の秘密に迫ります!

生産拠点にもアイデアを!アイリスオーヤマの「マザーファクトリー」大連工場の秘密

+1 Day 編集部

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アイリスグループの「マザーファクトリー」

アイリスグループの「マザーファクトリー」地図
中国の遼東半島に位置する港湾都市、遼寧省大連市(大連)。製造業を中心に多くの日系企業が集積するこの地に、アイリスオーヤマが中国に展開する10工場のうち7工場が集積しています。大連の7工場は、単なる海外の生産拠点の一つではありません。規模的にも、また生産能力・品質の面においても、アイリスグループがグローバルな生産拠点の中核に位置づける「マザーファクトリー」です。

なぜ「マザーファクトリー」といえるのか?
大連7工場のスケールと機能を、具体的な数字をもとにご紹介します。

・総敷地面積:約40万平方メートル

東京ディズニーランド(51万平方メートル) に匹敵するほどの広大な敷地面積。現地を訪れた社員が「3日かけても回り切れない」と言うほどのスケールを誇ります。

・取り扱うアイテム数:約1万4000点

アイリスオーヤマが生産する約2万5000点のアイテムの、実に半数以上がここ大連工場で日々生産・管理されています 。

・従業員数:約4,000名

アイリスグループの従業員は約14,200名(国内:約8,500名、海外:約5,700名/2024年1月末現在)。
海外拠点の従業員のうち約7割が、ここ大連工場で働いています。

・収納可能なパレット数:約5万パレット

大連工場内に併設された物流センターでは、7工場合わせて約5万ものパレットを収納する能力を持つ自動倉庫を所有しています。ここで約1万4000種類にわたる製品を管理し、日本をはじめとする世界各国へと輸送しています。

あらゆるアイデアを形にする「デパートメントファクトリー」

アイリスオーヤマ:中国・大連の工場内部の様子
この大連工場は、「マザーファクトリー」であると同時に「デパートメントファクトリー」としての特長を持っています。大連工場で加工している素材の種類は、アイリスオーヤマが創業時から得意とするプラスチックを筆頭に、樹脂・木材・金属・土・不織布など多岐にわたります。保有する生産設備も射出成型機、自動溶接ロボット、木材加工機など多種多様で、プラスチックと木材、金属と樹脂など異なる素材を組み合わせて加工できる環境が整っています。
アイリスオーヤマの工場内の様子
この設備に、アイリスオーヤマのモノづくりの強みである、他事業で培った技術や知見を別事業に展開する応用力が加わることで、素材の種類や業種の壁を超えたあらゆる組み合わせの製品を生産することができるのです。
アイリスオーヤマの工場内の様子
加えて、大連工場のモノづくりにおけるもう一つの特長は、高い内製化率にあります。
製品に使用するネジなどの部材・部品の多くを自社で生産。ミリ単位での加工や塗装を可能にする高度な技術によって、部品調達を含めたワンストップ製造を実現しています。

もはや「作れないものはない」と言っても大げさでないくらい、あらゆるオーダーに応えられるだけの
モノづくり技術を誇る大連工場。そこには、商品企画を形にするための相談が常に持ち込まれています。
アイリスオーヤマの新商品開発会議の様子
「この商品アイデアを、何とか形にできないでしょうか?」
「この商品をこの価格でご提供するために、もう少し部品のコストダウンを実現できないでしょうか?」

こういった開発担当者からの声を受けた大連工場のエンジニアたちが、異素材同士のさまざまな組み合わせを試行錯誤しながら、リクエストを形にしていきます。

アイリスオーヤマでは、生活者が本当に必要としているものを生活者の目線で商品化する「ユーザーイン発想」で、人々の生活を便利にするためのオンリーワンな商品を次々に生み出しています。
しかし、いくら「ユーザーイン発想」のアイデアがあっても、そのアイデアが形になり、かつお客さまがお求めやすい価格でご提供できなければ意味がありません。

「デパートメントファクトリー」である大連工場のモノづくり技術があるからこそ、すぐれたアイデアを形にすることができるのです。

稼働率7割と3割の空きスペースが変幻自在の経営を可能に

アイリスオーヤマの工場内の様子
どんなにすぐれた商品を開発できたとしても、生産が追いつかなければ最終的にお客さまのもとに届けることはできません。急な需要の増加に工場がパンクしてしまい、欠品を生じさせてしまうのは経営面でも大きな損失となります。

そこで、大連工場をはじめアイリスグループの工場では使用スペースをあえて7割以下に抑え、急な需要増に対応できるだけのキャパシティを常に3割程度確保しています。

この「稼働率7割」は、製造業の世界では“非常識”といえるかもしれません。
というのも、通常の工場経営では少しでも利益を上げるために、工場内になるべく多くの設備を配置し、フル稼働させるのが当たり前だからです。しかし、この7割の稼働率管理と3割の空きスペースを常に確保しているからこそ、市況の動きに合わせた緊急のレイアウト変更や設備投資にいつでも対応することができます。
アイリスオーヤマのマスクを生産する様子
一例を挙げると、2011年の東日本大震の後、節電への意識の高まりからLED照明の需要が一気に高まりました。それを受け、大連工場では急きょLED照明の生産ラインを増設しました。また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大によって、世界中が深刻なマスク不足に陥りました。このときも大連工場のマスクの生産ラインを増強し、日本の角田工場やアメリカ、韓国、フランスでも生産ラインを新設することで需要増にすばやく対応しました。
7割以下に稼働をとどめる理由は、売り上げが予測の150%になっても対応できるようにするためです。天候要因や経済要因などの外的要因の変化によって5割変動する可能性が十分にあると考えています。7割の稼働率にしておけば、「いざ拡販」という時に、「100%÷70%=1.42」で5割増に対応できるからです。

アイリスの経営は、ビジネスチャンス優先です。この「稼働率7割と3割の空きスペース」によって、「今日言えば、明日には変わる」といわれるほど、どんな市況の変化にも、そして新事業展開にもフレキシブルに対応できるのです。この「変化対応力」もまた大連工場の強さの源泉であり、アイリスオーヤマの変幻自在の経営力を支えています。

日本と同じ条件で人材育成・品質管理を徹底

大連工場で働く人々
アイリスオーヤマが中国に進出したのは、さかのぼること約30年前の1996年。経済成長著しい中国に着目し、同年に現地法人「大連愛麗思欧邪馬工貿有限公司」が設立されました。翌年1月には工場が竣工し、プランターや猫用トイレ、ホースリールや噴霧器などの組立品を中心とした生産がスタート。

現地で採用したスタッフに対し、日本から出向したスタッフは現場で身振り手振りを交えて機械操作や安全衛生などを指導し、地道に品質・技能を高めていきました。また、時には現地スタッフと一緒に食事をとりながら、言語の壁を超えたコミュニケーションを深めていきました。当時、現地に駐在した従業員の一人は「中国人スタッフは勤勉な人材が多く、また、日本語の習得の速さには驚かされました」と回想します。

中国に進出した当初は約500名だった現地スタッフも、今日では約4,000名に増加しました。彼ら現地スタッフに対しては、日本の工場の基準にもとづいたマネジメントを日本語で行っています。また、工場の整理整頓だけでなく、従業員のあいさつの徹底など、日本と同様の規律性を保ちながら、あらゆる面において品質の向上を図っています。

人材育成も徹底しており、必要となる能力を部門別にマトリックス化し、それにもとづいた研修プログラムを実施。時には日本でも長期研修を行い、技術向上に努めています。中国人スタッフたちの勤勉な姿勢は、日本で研修を共にしたある社員が「熱意のある人が多く、逆にこちらが襟を正されます」と舌を巻くほどです。
工場で品質を検査する様子

トレーサビリティ工程の様子

他にも、大連にあるすべての工場では日本基準の品質管理を採用しています。製造過程における画像判定や性能測定機器などによる品質管理、原材料の資材搬入から検査までの工程一元管理など、トレーサビリティの提供も行っています。

日本のどの工場よりも、あらゆる面で進んでいる

アイリスオーヤマの工場内の様子
この他にも、アイリスグループのマザーファクトリーである大連工場は、生産から在庫管理、物流まで、最新の技術とノウハウが備わっています。現在、この大連工場には、自動化を推進する専門スタッフが約200名在籍しています。ロボットによる自動化を積極的に推進していくことで、高品質を保ちながら効率化・コストダウンを図り、毎年高騰する中国の人件費への対応を図っています。

また、アイリスオーヤマ独自の「メーカーベンダー」機能により、 必要なアイテムを必要な量だけ、小ロット多品種でコンテナ混載するアソート出荷に対応します。そのため、お客さまのニーズに合わせた受注状況を適正に管理し、在庫と納期を両立させながら効率よく日本へ製品を輸送する「コンテナミキシング」が実現できるのです。

ある役員の一人は「大連工場は日本やその他の国のどの工場よりも、あらゆる面で進んでいる」と断言します。 それだけ、大連工場はモノづくりの技術、品質管理、効率化のノウハウなどすべての面でベストプラクティスといえる工場であり、そのノウハウがアメリカ、フランス、オランダなど各拠点の工場へと展開されています。

アイリスオーヤマの「アイデア」を支えるマザーファクトリー・大連工場。この生産拠点があるかぎり、私たちの想像を超えた「アイデア」がこれからも形となって、私たちの生活を便利に、豊かにしてくれることでしょう。

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