「多面的評価(360度評価)」に「3車線人事」——アイリスオーヤマの「チーム経営」を支える人事制度

「多面的評価(360度評価)」に「3車線人事」——アイリスオーヤマの「チーム経営」を支える人事制度

家電や食品など多様な分野で事業を展開するアイリスオーヤマ。現在、グループ国内外の各拠点で、約14,000名の社員が商品企画や開発、営業、EC、品質管理など幅広い業務に従事しています。同社が創業以来大切にしてきたのが、「個」ではなく「チーム」で成果を生み出すチーム経営です。今回はそのチーム経営の根幹を支える「多面的評価(360度評価)」や「グランプリ大会」「3車線人事」などの人事制度について、管理本部 人事部の紺野聡氏と油木玲於奈氏に話を聞きました。

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「多面的評価(360度評価)」に「3車線人事」——アイリスオーヤマの「チーム経営」を支える人事制度

+1 Day 編集部

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▼お話を聞いたのは…
管理本部 人事部 部長 紺野聡

管理本部 人事部 部長 紺野聡

2007年入社。東日本エリアでのリテール営業を担当後、調理家電事業部の副事業部長に就任。その後、家電量販店営業のマネージャーやアイリスホールディングス営業企画室室長などを歴任し、2024年に人事部に異動。2025年から人事部部長を務める。
管理本部 人事部 新卒採用課 統括リーダー 油木玲於奈

管理本部 人事部 新卒採用課 統括リーダー 油木玲於奈

2019年入社。BtoB事業グループに配属され、九州エリアのLED照明を中心とした法人向け営業を担当。2024年には同事業部の大阪営業所に異動し、所長に就任。2025年7月から現在の人事部新卒採用課に異動し、統括リーダーを務める。

平均15人が1人を評価! 徹底した「多面的評価(360度評価)」が納得度を高める

アイリスオーヤマの360度評価

――今回はアイリスオーヤマの人事制度や採用に焦点を当ててお話を伺います。まず、アイリスオーヤマの人事制度の代名詞とも言える「多面的評価(360度評価)」について教えてください。

紺野:この制度は2003年に導入され、20年以上にわたって続く、当社の文化の一つです。アイリスオーヤマでは、創業以来「チーム経営」を大切にしてきました。個人の成果だけで評価するのではなく、組織としての強さを高めるために、上司に限らず同僚や部下、関連部署のメンバーなど、社内の関係者から多面的に評価を受ける仕組みとしてこの多面的評価(360度評価)を実施しています。

――他社でも多面的評価(360度評価)の導入例はあると思います。アイリスオーヤマならではの特徴は何でしょうか。

アイリスオーヤマ 人事部 紺野部長
紺野:最大の特徴は、「人事評価に反映している」という点です。企業によっては、本人への「気づき」を促す参考資料として活用し、人事評価には直接結びつけないケースもあります。しかし当社では、個人の実績がどれだけ良くても、多面的評価の結果が伴わなければ昇格できない仕組みになっています。

評価者の数も、1人あたり平均15人、多い場合は30~50人に及びます。人が人を評価する以上、どうしても感情やバイアスが入りがちですが、できるだけ多くの視点を取り入れることで属人性を抑え、公平・公正で納得感のある評価を実現しています。
油木:フィードバックでは、自己評価と他者評価の差が一目でわかるチャートや、同等級内での順位などを本人に開示しています。

私自身の経験を話すと、福岡から大阪へ異動した直後は、新しい環境で人間関係やマネジメントに悩み、「うまくいっていない」と感じていました。しかし評価結果を見ると、周囲は思っていた以上に前向きに見てくれていて、安心したことを覚えています。異動直後など孤独を感じやすい時期でも、公正な視点で見守られていると実感できることは、社員の安心感や自信につながっていると思います。

結果だけでなくプロセスも評価する「グランプリ大会」

アイリスオーヤマ「グランプリ大会」受賞者記念写真

――最近では上司との相性や評価の公平性を気にする求職者も多いですが、多面的評価(360度評価)はそうした不安を和らげる要素の一つとも言えますね。

紺野:おっしゃるとおりです。加えて、それ以前に「配属」の段階からきめ細かい配慮を行っています。新入社員の配属先は、約2カ月間の研修期間中、本人の適性や各部門の社員からのフィードバックを詳細に分析した上で決定し、研修の最終段階で発表します。「この社員の特性なら、あの上司の下が伸びるだろう」といった相性まで人事目線で深く考えており、ミスマッチを最小限に抑えられるように努めています。

――評価制度に関連して、半期に一度開催される「グランプリ大会」についても伺います。これはどのようなイベントなのでしょうか。

アイリスオーヤマ グランプリ大会のイメージ
紺野:グランプリ大会は、いわば全社的な成果発表のプレゼンテーションの大会です。まず、各部署で“予選会”に当たる評価会が行われ、全部署合わせて1,000人を超える社員が参加します。

この評価会では、営業、開発、EC、管理部門など、それぞれの部署の社員が、自分の業務についてどのような戦略を立て、どう実行したかを発表します。そこで選抜された各部門の優秀者(約40〜50名)が、グランプリ大会へと進みます。最終的にグランプリ大会の発表者の中からグランプリ、準グランプリ、特別グランプリ、新人グランプリの受賞者が選定されます。
油木:私も北九州の部署にいた頃に、このグランプリ大会に出場した経験があります。若手社員にも、自分の仕事に対する考えや成果を経営陣や全社員に直接伝えられる場が与えられます。そこがアイリスオーヤマならではの魅力だと感じています。それに、実績だけで判断されるのではなく、工夫や努力のプロセスを見てもらえることは、大きなやりがいにつながります。グランプリ大会の後は、仙台の秋保温泉で一泊二日の懇親会も開催され、社員同士の結束を高めるモチベーションの向上につながっています。

キャリアパスを柔軟に変更できる「3車線人事」

インタビュー中の様子

――続いて、アイリスオーヤマの人材育成について伺います。新入社員研修で最も重視していることは何ですか。

紺野:最も大切にしているのは、アイリスオーヤマの「歴史」と「企業理念」を理解してもらうことです。特に、2011年に当社自身が東日本大震災で被災した経験と、そこから生まれた「ジャパン・ソリューション(ビジネスを通じて日本の課題を解決する)」の志については、時間をかけて伝えるようにしています。LEDや精米、ロボティクスなど当社の事業の多くはこの「ジャパン・ソリューション」の考えから生まれていますからね。

スキルや知識の前に、なぜ私たちがこの事業に取り組むのか。その根幹を理解してもらうことが、今後のキャリアで困難に直面した際の指針になると考えています。

――キャリア形成においては、「3車線人事」というユニークな仕組みがあります。これはどういった制度ですか。

紺野:「3車線人事」とは、社員のキャリアパスを高速道路の車線になぞらえた概念です。成果を挙げている社員には、新たなポストを与える「抜擢人事」を行っています。結果を残した社員や、将来のチームリーダーや幹部候補になりうる社員は、昇格のタイミングを待たずに、組織を変更してチームリーダーや幹部社員としての役割に抜擢するものです。

一方で、後者の成果を挙げきれなかった社員には「イエローカード」という制度があります。誤解のないように言うと、これは社員を罰したりレッテルを貼ったりするものでは決してありません。イエローカードを配布された対象者の上司とすり合わせを行った上で、必要に応じて人事部がマンツーマンで助言を行いながら、適切なフィードバックを与え、目標に向けて再チャレンジできるようにするのが目的です。このイエローカードがきっかけとなり、その後に大きな成果を挙げる社員も少なくありません。

能力が高く実績を挙げている社員には、「追い越し車線」で一つ上のポストに抜擢する。壁に直面している社員には「登坂車線」に移って少しペースを落としながら力を蓄えてもらう。これが、アイリスオーヤマならではの「3車線人事」の考え方です。

「スポーツイベント補助」まで! 豊富な福利厚生が「チーム経営」を支える

スポーツを楽しむ会社仲間

※画像はイメージです。

――福利厚生の面で、アイリスオーヤマならではのユニークな制度はありますか。

インタビュー中の様子
油木:社員から特に人気が高いのは、公式通販サイト「アイリスプラザ」での社員割引制度です。自社製品はもちろん、食品なども割引価格で購入でき、日常的に活用している社員が多くいます。新入社員には入社時に「IRIS Join Bonus(アイリスジョインボーナス)」として5万ポイントが付与され、新生活の準備などもフォローするようにしています。

また、懇親会費用の補助も手厚く、部門の達成会や社員同士のボウリング大会、フットサルなどのスポーツ活動にも補助が出ます。「スポーツイベント補助」という制度が本当にあるんです(笑)。

そのほか、地域のスポーツ文化振興を通じて宮城を元気にしたいという思いからスポンサーをしている、楽天イーグルスやベガルタ仙台、仙台89ERSなどのスポーツ観戦チケットの配布など、業務外での交流を深める機会も積極的に支援しています。
紺野:当社には、その日に起こったことや気づき、アイデアを300字以内の文章にまとめ、社内システムに投稿する「ICジャーナル」という独自の“日報”があります。このICジャーナルは全社で共有されるので、部署を超えてコミュニケーションと共感(エンパシー)を深めるツールになっています。そこから派生して、「JE会(ジャーナル・エンパシー会)」というランチ会を開催する文化があり、この費用の補助も行っています。

「奨学金の代理返済」で入社後も安心して働ける環境づくりを

アイリスオーヤマ 人事部 新卒採用課 統括リーダー 油木玲於奈さん

――最後に、採用について伺います。アイリスオーヤマの採用方針や、ユニークな取り組みがあれば教えてください。

油木:2025年度は新卒採用(大学・高専・専門・短大卒・高卒)で391名を採用しました。今後は特に「グローバル人材」と「理系職(開発・ロボティクス・品質管理・IoTなど)」の採用を強化していきます。
紺野:グローバル展開を加速させるため、語学力や異文化適応力を持つ人材はもちろん、海外現地での採用や海外の拠点との人事交流も積極的に行っています。私たち人事部にも中国からのスタッフが加わっていますが、異なる文化や視点を持つ人材が交わることで、組織に新たな刺激と強みが生まれていると感じています。
アイリスオーヤマで活躍する人材
油木:また、新卒採用促進の新たな制度として、2026年入社の方から奨学金代理返還支援制度(条件あり)も導入しました。近年、大学進学率の上昇や教育費の高騰などの理由から奨学金受給者が増加しており、現在では、学生のおよそ2人に1人が奨学金を受給していると言われています。日本学生支援機構(JASSO)が定める「企業等の奨学金返還支援制度(代理返還)」などを利用し、企業が従業員に代わり奨学金を返済することで、入社後の経済的負担を減らし、安心して働ける環境づくりを推進します。

――採用や人事においては、女性の活躍推進も重要なテーマですね。

油木:採用において、男女で区別することは一切ありません。重視しているのは「人柄・意欲・能力」、そしてアイリスオーヤマの理念への共感です。その結果として、多くの女性社員が活躍するフィールドが広がっています。特にアイリスプラザのEC事業の部門では、従業員の約9割を女性社員が占めています。
紺野:現在、管理職に占める女性比率は約20%に達しており、将来的には30%を目指しています。その一環で、先日も女性社員との座談会を実施し、現場の声を吸い上げてフレックスタイム制や時間単位有給休暇の導入検討を進めるなど、働きやすい環境づくりを常にアップデートしています。

――アイリスオーヤマに関心を持っている学生や求職者の方にメッセージをお願いします。

アイリスオーヤマ管理本部 人事部の紺野さんと油木さん
油木:アイリスオーヤマというと「家電の会社」のイメージがいまだに強いかもしれませんが、実態はアイデアとスピードで課題を解決する「企画・開発型企業」です。変化を恐れず、世界規模での「ジャパン・ソリューション」に共に挑戦してくれる方をお待ちしています。
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