【アイリスオーヤマのジャパン・ソリューション】日本の未来を照らし続ける、アイリスオーヤマのLED照明
公開日:2023.03.06
最終更新日:2024.02.21
アイリスオーヤマは、さまざまな社会課題を解決するためのソリューション提供を行っています。事業の柱となるのは、「家電事業」「LED事業」「精米事業」「ロボティクス事業」「エアソリューション事業」の5つ。今回は、「LED事業」について紐解いていきます。最近は家庭でもオフィスでもよく見かけるLED照明。ところが、たった数十年前までは金額も高く、あまり普及していませんでした。その状況を大きく変えたのがアイリスオーヤマです。アイリスオーヤマのLED事業のこれまでの歩みと現在の取り組み、今後の展望などを、ライティングソリューション事業部長の江藤氏にインタビューしました。
INDEX
- LED電球を日本で広めるまでの道のり
- ―まず始めに、基礎知識として「白熱電球」と「LED電球」の違いを教えてください。
- ―アイリスオーヤマがLED照明事業に参入したきっかけはありますか?
- ー低価格を実現できたヒミツはなんでしょうか?
- ―アイリスオーヤマのLED照明が普及したのは、価格以外にもなにか要因があるのでしょうか。
- 明るさの「マネジメント」という新たな節電ソリューション
- ー2022年12月にも電力需給がひっ迫し、政府から節電要請もありました。現在のLEDへの切り替え状況はいかがでしょうか。
- ―節電需要が見込まれる中で、現在どのような提案をしているのですか。
- 照明の機能を超えた「ライティングソリューション」へ
- ー最後に、LED事業の今後の展望について聞かせてください。
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LED電球を日本で広めるまでの道のり
日用品、ペット用品、園芸用品や家具、食品にいたるまで多種多様なアイテムを扱っていますが、実はLED照明の大幅なコストダウンを実現したのはアイリスオーヤマなのです。
東日本大震災で発生した、福島原発事故による電力不足を始めとした節電が日本の社会課題となり、震災直後にLED照明の生産能力を3倍に増産。その後、製品のラインアップを拡大し、現在はオフィスや商業施設、スポーツ施設、公共施設など法人向けに、LED照明を中心とした節電対策のソリューション提案を行っています。
東日本大震災で発生した、福島原発事故による電力不足を始めとした節電が日本の社会課題となり、震災直後にLED照明の生産能力を3倍に増産。その後、製品のラインアップを拡大し、現在はオフィスや商業施設、スポーツ施設、公共施設など法人向けに、LED照明を中心とした節電対策のソリューション提案を行っています。
▼お話を聞いたのは…
BtoB事業グループ ライティングソリューション事業部 事業部長 江藤 優
2016年に入社し、2023年からライティングソリューション事業部の事業部長を勤めている。
―まず始めに、基礎知識として「白熱電球」と「LED電球」の違いを教えてください。
一般的な白熱電球は、「フィラメント」という金属コイルに電流を流すことで発熱し、白く発光します。2000度以上というかなりの高熱を発するのでエネルギー効率が悪く、寿命は1~2千時間程度、蛍光灯でも1~2万時間です。
それに対して、LED電球はLEDチップに内蔵された半導体が発光するので、白熱電球ほど高熱にはなりません。そもそもの光源が白熱電球とは異なります。その寿命は4~6万時間と、白熱電球や蛍光灯に比べて圧倒的に長持ちします。蛍光灯からLEDへの替えると、70~80%の消費電力を削減することができます。これがLED電球の最大の特長です。
それに対して、LED電球はLEDチップに内蔵された半導体が発光するので、白熱電球ほど高熱にはなりません。そもそもの光源が白熱電球とは異なります。その寿命は4~6万時間と、白熱電球や蛍光灯に比べて圧倒的に長持ちします。蛍光灯からLEDへの替えると、70~80%の消費電力を削減することができます。これがLED電球の最大の特長です。
―アイリスオーヤマがLED照明事業に参入したきっかけはありますか?
2009年に開かれた国連気候変動サミットがきっかけです。鳩山由紀夫首相(当時)が、「2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減する」ことを宣言しました。この宣言を受け「節電がより重要な課題になる」と考え、本格的にLED照明の開発を進めました。
当時のLED電球は1個あたり1万円~1.2万円が相場でしたが、現会長の大山健太郎から社員に与えられたミッションは「2,500円以下の価格を実現すること」でした。
なぜ2,500円以下なのか?と思う方もいらっしゃると思いますが、当時の試算だと、一般的な家庭で白熱電球1つの年間電気代が約2,400円だったそうです。そのため、「2,000円台のLED電球であれば1年間で電球代の元が取れ、かつ長く使うことができる。そうすればより多くの人々に受け入れられるはずだ」という現会長の考えがありました。
なぜ2,500円以下なのか?と思う方もいらっしゃると思いますが、当時の試算だと、一般的な家庭で白熱電球1つの年間電気代が約2,400円だったそうです。そのため、「2,000円台のLED電球であれば1年間で電球代の元が取れ、かつ長く使うことができる。そうすればより多くの人々に受け入れられるはずだ」という現会長の考えがありました。
ー低価格を実現できたヒミツはなんでしょうか?
当時の開発者はだいぶ頭を抱えたそうですが(笑)。最初は回路の構造や部品を一から見直したそうです。試行錯誤してたどり着いたのは、長年アイリスオーヤマが強みとしてきたプラスチック成型技術でした。
金属製の筐体(電球の外側の部分)をプラスチックに切り替えればコストを下げられると考え、業界初のプラスチック製の筐体を開発しました。さらに、目標としていた価格よりも安い1,980円のLED電球を発売することができました。
金属製の筐体(電球の外側の部分)をプラスチックに切り替えればコストを下げられると考え、業界初のプラスチック製の筐体を開発しました。さらに、目標としていた価格よりも安い1,980円のLED電球を発売することができました。
―アイリスオーヤマのLED照明が普及したのは、価格以外にもなにか要因があるのでしょうか。
大きなきっかけは、2011年の東日本大震災です。当社も宮城に本社を置く、被災企業でもありました。当社としても電力は工場を稼働させるために重要なインフラで、この電力不足は大きな打撃となりました。そんな電力需給がひっ迫する中でも「照明を売るのではなく、節電という『ソリューション』を販売しよう」という目的を設け、震災後すぐに生産体制を大幅に拡大しました。
2010年にLED事業に本格参入し、中国・大連にある当社の工場の一角にLED照明の生産ラインを導入して、筐体の加工・電源基盤実装・ランプ点灯試験など、半導体の製造以外をワンストップで内製化する生産ラインを構築しました。2012年には佐賀県鳥栖市の国内工場が稼働し、供給体制が更に強化されました。このタイミングで世の中の節電ニーズも徐々に高まっていき、受注数がどんどん伸びていきました。
その他にも、多くの販売チャネルを持っていたため、ホームセンターや家電量販店、自社ECサイトなどさまざまな販路を通じてお客様にご購入いただいています。
その他にも、多くの販売チャネルを持っていたため、ホームセンターや家電量販店、自社ECサイトなどさまざまな販路を通じてお客様にご購入いただいています。
また、現在のBtoB事業にもつながってきますが、お客様のニーズに応え続けてきたことも大きな要因だと思います。
「お客さまのニーズ」と一言でいっても、そもそも照明というのは明るさや色、形状など膨大な種類があります。たとえばホテルだけでも寝室・浴室・ベッド、さらにはレストラン・エントランスも含めるとその数は40~50種類に上ります。物件に合わせて特注を頂くことも多く、それに応えているうちに、現在では1万種類以上ものラインアップを揃えるまでになりました。
「お客さまのニーズ」と一言でいっても、そもそも照明というのは明るさや色、形状など膨大な種類があります。たとえばホテルだけでも寝室・浴室・ベッド、さらにはレストラン・エントランスも含めるとその数は40~50種類に上ります。物件に合わせて特注を頂くことも多く、それに応えているうちに、現在では1万種類以上ものラインアップを揃えるまでになりました。
LED事業では、全国に約60の営業拠点を持っています。地方でも、営業担当が地域密着で、お客さまの声を直接伺いながら課題解決に取り組んでいます。
私が入社当初、初めて受注できたのが個人経営のクリーニング店でした。LED照明に切り替えたことで大きく経費が削減され、非常に喜んでいただいたのを覚えています。また、営業を経験した当社の社員なら必ず1個は、自分が特注で手がけた商品があるのではないでしょうか。このように「お客さまのニーズ」に寄り添い、共に課題解決に向けて取り組むのがアイリス流のソリューションです。
私が入社当初、初めて受注できたのが個人経営のクリーニング店でした。LED照明に切り替えたことで大きく経費が削減され、非常に喜んでいただいたのを覚えています。また、営業を経験した当社の社員なら必ず1個は、自分が特注で手がけた商品があるのではないでしょうか。このように「お客さまのニーズ」に寄り添い、共に課題解決に向けて取り組むのがアイリス流のソリューションです。
明るさの「マネジメント」という新たな節電ソリューション
ー2022年12月にも電力需給がひっ迫し、政府から節電要請もありました。現在のLEDへの切り替え状況はいかがでしょうか。
引用元: 2022年アイリスオーヤマ調べ
「一般社団法人 日本照明工業会」の調査によると、照明全体に対するSSL率は約54パーセント。同会では2030年までにSSL化率(※)100パーセントを達成する目標を掲げているところですが、まだ道半ばという状況です。
※SSL(Solid State Lighting):LED、有機EL、レーザーなど半導体照明の総称
※SSL(Solid State Lighting):LED、有機EL、レーザーなど半導体照明の総称
その内訳は施設の用途・業態によって異なり、たとえば小売店などでは7割程度まで普及しています。一方、学校施設やオフィスビルでは4割以下にとどまっています。
ただ、今後はSDGsなどのトレンドに加え、オフィスビルに対しても「ZEB認証(※)」が環境省の主導で動き出しており、省エネに対する気運が高まっていくと考えています。
※ZEB(ゼブ):Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物のこと
※ZEB(ゼブ):Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物のこと
―節電需要が見込まれる中で、現在どのような提案をしているのですか。
LED照明の技術も日々進化しており、照明そのものの効率改善は限界値に近づいています。
そこで、アイリスオーヤマが新たに提案しているのが、明るさの「マネジメント」による新たな省エネ。それが「LiCONEX(ライコネックス)」です。
そこで、アイリスオーヤマが新たに提案しているのが、明るさの「マネジメント」による新たな省エネ。それが「LiCONEX(ライコネックス)」です。
LiCONEXは、無線センサーを内蔵した、アイリスオーヤマ独自の照明制御技術です。照明一つひとつに無線モジュールを内蔵しており、あらかじめ制御スケジュールを登録しておくことで、時間帯や用途に応じて全体の明るさや配色といった調光を自動で行います。
さらに、「電力の見える化機能」も付いており、今、どの部屋でどのくらい電力を使用しているのかを、スマートフォンやタブレット上のアプリで確認することができます。
さらに、「電力の見える化機能」も付いており、今、どの部屋でどのくらい電力を使用しているのかを、スマートフォンやタブレット上のアプリで確認することができます。
さらに、このLiCONEXでは遠隔での操作が可能で、施設に管理者がいなくてもホテルやオフィスビルなどの照明を遠隔で制御することができます。飲食チェーンなど多くの店舗・施設などを持つ業態では、より戦略的・効率的に節電対策を進めることができますし、省人化による管理コスト削減にも寄与できます。
これまでは従来の白熱灯、蛍光灯からの切り替えニーズに対応していたのですが、ここ数年は新規のオフィスビルや商業施設、公共施設、ホテルなどにおいても、アイリスオーヤマのLED照明に興味を持っていただくケースが増えてきました。その際に、節電効果にとどまらないLED照明の魅力をお伝えしています。
たとえば、学校の体育館などは地域の避難所として利用されますが、従来の水銀灯では調光・調色ができなかったので、避難時には照明が明るすぎるなどの問題がありました。それがLED照明を導入することで、色や明るさを用途に合わせて調整でき、スポーツをするときには明るく、避難所として使用するときには暖色系のリラックスしやすい空間にするなどの配慮ができます。自治体などのお客さまには、このようなLEDの利点もご説明しています。
LED照明のフレキシブルな調光技術は、近年では高級ホテルなどでも支持されています。ヒルトングループの「RUKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts」や、「ホテルグランバッハ東京」など外資系ホテルでは建築化LED照明シリーズ「LIDIO」を導入いただきました。LIDIOはデザイン性を持たせたLED照明ブランドで、意匠性の高いベースライトや間接照明などにも対応し、ラグジュアリーな空間づくりをお手伝いしています。
照明の機能を超えた「ライティングソリューション」へ
ー最後に、LED事業の今後の展望について聞かせてください。
照明は、「空間を明るくする」という機能を超えた、ひとつのインフラになる可能性を秘めていると考えています。
LiCONEXは照明一つひとつに無線モジュールを内蔵しているため、一つのネットワークを形成しています。いわば建物全体が通信機能を搭載しているようなもので、照明制御だけでなく誰がどこにいるかが把握できたり、室内の温度・湿度、CO2濃度なども計測することができます。
LiCONEXは照明一つひとつに無線モジュールを内蔵しているため、一つのネットワークを形成しています。いわば建物全体が通信機能を搭載しているようなもので、照明制御だけでなく誰がどこにいるかが把握できたり、室内の温度・湿度、CO2濃度なども計測することができます。
さらに、そのネットワークを外部のアプリケーションとAPI連携することで、さまざまな機能を実装することもできます。現在は、このLiCONEXをIoTソリューションのプラットフォームシステムとして共に成長させていくパートナー企業の募集も行っています。
このように、LED照明を「照明」の機能を超えた「ライティングソリューション」へと進化させ、省エネにとどまらない施設の価値向上に貢献していきたいですね。
このように、LED照明を「照明」の機能を超えた「ライティングソリューション」へと進化させ、省エネにとどまらない施設の価値向上に貢献していきたいですね。