写真:大阪王将 広島大町店 様
コロナ禍によって、人々の消費行動・価値観が変化し、様々な産業で進むイノベーションは「未来の加速」と言われています。今、外食産業に必要なのは、人口増加、経済成長、潤沢な労働力を前提とした成功モデル「20世紀の成功体験」から脱却し、大きく変化した社会情勢、市場動向に適合した「新たな店舗運営」を確立する事だと考えます。本稿では、テクノロジーを活用した成功事例をいくつか取り上げながら、これからの「新たな店舗運営」について考えていきたいと思います。
世の中を取り巻く、様々な指標で比較してみると、20世紀と現在は各要素で全くと言ってよいほど逆の世の中だと言うことがわかります。
そして現在、必要性が叫ばれている飲食DXは、コロナ禍に対応するための「対策」ではなく、生産性向上やデジタル化の遅れなど、コロナ禍以前から指摘され続けてきた課題への対応なのです。
こうした外食産業がもともと持っていた諸課題に対応するという視点で見た際に、テクノロジーの活用事例は、少し違った見方になるのではないでしょうか?
飲食DXの代表的な取り組みの一つでもある配膳ロボットの成功例をいくつか見てみると、その成果は大きく3つに分類できます。
①省人化、人件費削減
人材不足が再燃・深刻化する中、少ない接客スタッフでホール業務を回せる効果はやはり大きいです。特に大型店舗や接客スタッフ人数の多い業態では有効と思われます。
同店は比較的大型の店舗が多いですが、配膳ロボットを導入した結果、ピークタイムにおいてスタッフ人数を1名減員することが可能になりました。
また、ロボットは人の業務の代替という考え方ではなく、料理の提供はスタッフ=人が行なう、いわばスタッフがパートナーとして配膳ロボットを“使う”スタイルです。また下膳にも活用することにより、スタッフの接客時間が倍に増加したという成果も生まれています。
アフターコロナの人材不足、人件費高騰を予見した取り組みとしてのスタートとお聞きしましたが、省人化にとどまらず、スタッフの接客時間が増加したという成果も生まれていることは注目です。
◎北海道生まれ和食処とんでん 白幡店 様 事例紹介
https://www.irisohyama.co.jp/b2b/robotics/case-studies/servi/case007.html
②スタッフの負荷低減
一般的な飲食店のホールスタッフの業務中の歩数は約1万歩前後と言われていますが、提供と下膳業務でのロボット活用は、この肉体的な負荷低減に有効なようです。
回転寿司業態は、料理の提供業務はもともと機械が行いますが、皿数が多くなるため下膳業務の負担感が高いという課題がありました。
同店では、配膳ロボットを巡回させることで“中間バッシング”(客が自ら空いた皿をロボットへ投入する)を行い、退席後にスタッフが行なうバッシング業務負荷を低減させました。
また、下膳だけでなく清掃・消毒といった業務が次の客を迎えるために必要ですが、それらを含めた所要時間が短くなることによって、同店のお客様の平均待ち時間は4分18秒から2分30秒に半減することができています。
◎廻鮮江戸前すし魚魚丸 様 事例紹介
https://www.irisohyama.co.jp/b2b/robotics/case-studies/servi/case009.html
③接客業務への集中とお客様体験価値の向上
DXは手段であり、目的はCX(顧客体験価値向上)、EX(従業員体験価値向上)にあります。その観点で大変参考になる事例です。
同店はブッチャー併設の和牛専門店で、客単価も1万円前後の高級業態です。
チェーン店でも大型店舗でもない同店の導入事例は、中小飲食店にとって大変参考になるのではないでしょうか?同店のホール業務は、デシャップ、ランナー、サーバーに分かれ、各人が連携してサービスを提供しますが、ピークタイムはランナーとサーバーの業務を兼任する必要が生じてしまうが故、肉の調理のサポートやワインなどドリンクの提案・提供といった、同店が理想とするサービスが充分行き届かない課題がありました。
また、サーバーが動き回ることで“忙しない雰囲気”になることも、高級業態としては課題でした。
ランナーの業務を配膳ロボットで行うことにより、ピークタイムであってもサーバーは忙しく走り回ることなく接客業務に集中でき、結果、より落ち着いた、踏み込んだ接客を行えることから客単価向上という成果に繋がっています。「“雰囲気を壊す”ことは無かった」同店マネジャーのお言葉です。
配膳ロボットという“効率化機械”を入れると言うことに、多くの店長、経営者は「高級店らしい雰囲気を壊してしまうのではないか?」と懸念されることがあります。
しかしながら大切なのは、あるべき、その店が理想とする接客業務を実現することが重要で、その実現のための“機械”の導入は、価値の棄損に繋がらないということを同店の事例が証明しているのではないでしょうか?同店は配膳ロボット導入で、高級店らしい“ゆったりとした空気感”と“行き届いた接客サービス”を実現しているのです。
◎The INNOCENT CARVERY 様 事例紹介
https://www.irisohyama.co.jp/b2b/robotics/case-studies/servi/case003.html
こうして事例を見ていくと、配膳ロボットの導入のきっかけは省人化、効率化にあり、現在の経営環境からむしろそれは当然です。
しかしながら導入し検証していく中で、「人がやるべき業務は何か?」「大切にしなければいけない価値は何か?」という、店本来の価値の向上を解析することに繋がり、結果、どの事例もQSCの向上、顧客体験価値・従業員体験価値の向上に繋がっています。
店名は伏せますが失敗例もあります。
とあるカジュアル寿司店は、将来的な人材不足を見込み配膳ロボットをテスト導入しました。提供と下膳業務の効率化を意図したのですが、ロボットと一緒に勤務するスタッフからは、
ロボットに料理を乗せるのは結局“人”がやらねばならず、たいして業務削減にならないのでは?人が持って行った方が早い場合も多々あり、導入効果に疑問を感じる
といった反応が返ってきました。
「人が運ぶ」という業務を代替する機能をロボットが持っていることは、子供でも分かります。
問題は、導入の目的にあります。人手不足対策、コスト低減ではなく、前述の成功事例に見たように、従業員の負荷を軽減(=従業員体験価値の向上)し、お客様の体験価値を向上(=顧客体験価値の向上)させる。この「目的」を明確にし、かつ従業員が理解・納得、共感する説明をすることが非常に大きな成否のポイントになることが理解いただけると思います。
配膳ロボット以外のキャッシュレスにしろ、セルフオーダーにしろ、デジタル化による効率化は様々な業務で可能です。
勿論、その対象業務自体で「部分」の効率を上げることは可能ですが、新たな機械、ツールを使って、店に訪れる「お客様にとっての体験価値」そして「働く従業員の体験価値」を向上させる「新たな店舗運営」を“総合的に”創り上げる発想が大切だと思います。コロナ禍による「未来の加速」は、未曽有の苦難を飲食店に与えた一方で、「20世紀の成功体験」を過去のものにし、これからの時代の競争環境に適合した経営イノベーションを進める契機となっています。
この経営イノベーションを進めることは、逆転して「チャンス」になり得るのです。今回ご紹介した配膳ロボットの導入事例は、多くの飲食店にとって参考に、そして勇気を与えるのではないでしょうか?
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