「人の業務の代替」ではない、
ロボット活用による「新しい店舗運営」の確立
~成功事例にみる、お客様、従業員 双方にとっての活用メリットと意義~
2022.4.26

株式会社ケイノーツ 代表取締役
ホットペッパーグルメ外食総研・研究員
竹田クニ
写真:大阪王将 広島大町店 様
“人の業務の代替”ではない「新たな店舗運営のあり方」が問われている
コロナ禍によって、人々の消費行動・価値観が変化し、様々な産業で進むイノベーションは「未来の加速」と言われています。今、外食産業に必要なのは、人口増加、経済成長、潤沢な労働力を前提とした成功モデル「20世紀の成功体験」から脱却し、大きく変化した社会情勢、市場動向に適合した「新たな店舗運営」を確立する事だと考えます。本稿では、テクノロジーを活用した成功事例をいくつか取り上げながら、これからの「新たな店舗運営」について考えていきたいと思います。
20世紀とは“真逆”の世の中に対応した、変化のテーマ
世の中を取り巻く、様々な指標で比較してみると、20世紀と現在は各要素で全くと言ってよいほど逆の世の中だと言うことがわかります。
そして現在、必要性が叫ばれている飲食DXは、コロナ禍に対応するための「対策」ではなく、生産性向上やデジタル化の遅れなど、コロナ禍以前から指摘され続けてきた課題への対応なのです。
こうした外食産業がもともと持っていた諸課題に対応するという視点で見た際に、テクノロジーの活用事例は、少し違った見方になるのではないでしょうか?
人の業務をロボットに置き換えるという発想ではない
こうして事例を見ていくと、配膳ロボットの導入のきっかけは省人化、効率化にあり、現在の経営環境からむしろそれは当然です。
しかしながら導入し検証していく中で、「人がやるべき業務は何か?」「大切にしなければいけない価値は何か?」という、店本来の価値の向上を解析することに繋がり、結果、どの事例もQSCの向上、顧客体験価値・従業員体験価値の向上に繋がっています。
目的設定の曖昧さと説明不足が招いた失敗例
店名は伏せますが失敗例もあります。
とあるカジュアル寿司店は、将来的な人材不足を見込み配膳ロボットをテスト導入しました。提供と下膳業務の効率化を意図したのですが、ロボットと一緒に勤務するスタッフからは、
ロボットに料理を乗せるのは結局“人”がやらねばならず、たいして業務削減にならないのでは?人が持って行った方が早い場合も多々あり、導入効果に疑問を感じる
といった反応が返ってきました。
「人が運ぶ」という業務を代替する機能をロボットが持っていることは、子供でも分かります。
問題は、導入の目的にあります。人手不足対策、コスト低減ではなく、前述の成功事例に見たように、従業員の負荷を軽減(=従業員体験価値の向上)し、お客様の体験価値を向上(=顧客体験価値の向上)させる。この「目的」を明確にし、かつ従業員が理解・納得、共感する説明をすることが非常に大きな成否のポイントになることが理解いただけると思います。

特定の課題に対する部分最適でなく、「新しい店舗運営」をどう設計するか
配膳ロボット以外のキャッシュレスにしろ、セルフオーダーにしろ、デジタル化による効率化は様々な業務で可能です。
勿論、その対象業務自体で「部分」の効率を上げることは可能ですが、新たな機械、ツールを使って、店に訪れる「お客様にとっての体験価値」そして「働く従業員の体験価値」を向上させる「新たな店舗運営」を“総合的に”創り上げる発想が大切だと思います。コロナ禍による「未来の加速」は、未曽有の苦難を飲食店に与えた一方で、「20世紀の成功体験」を過去のものにし、これからの時代の競争環境に適合した経営イノベーションを進める契機となっています。
この経営イノベーションを進めることは、逆転して「チャンス」になり得るのです。今回ご紹介した配膳ロボットの導入事例は、多くの飲食店にとって参考に、そして勇気を与えるのではないでしょうか?
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