写真:100本のスプーン 立川店 様
外食市場は、人口減少からくる市場規模の漸減と、コロナ禍による行動変化による「需要減」。
一方で、労働人口減少、ウクライナ情勢、円安などの要因による「供給コスト上昇」。
これらが同時に起きる環境下にあります。
さらに加えて、消費者の主役となる世代が移り変わることによって、飲酒に対する考え方やSDGsなど「食に対する価値の感じ方」も大きく変わってきています。
今回は「消費の主役世代交代」によって飲食店の経営はどう変わっていくのか?について考えてみたいと思います。
本コラムvol.3では、「需要の減退」と「供給コスト増大」による経営課題について、組織のあり方、テクノロジーの活用について考えました。
外食産業が向き合う市場では、「需要の減退」と「供給コスト増大」に加えてさらに「消費者の価値観・行動変化によるニーズ・ウォンツの変化」が同時に起こっています。
これがコロナ後の市場の新たな構造であり、飲食店は、この三重の構造に対して新たな取り組みをしていくことが求められます。
では、その消費者ニーズ・ウォンツの変化はなぜ起きたのでしょうか?
食ビジネスは大きく「外食」「中食」「内食」に分かれますが、近年「ボーダレス化」が進んでおり、中食のイートイン形態や外食のデリバリー・テイクアウト、ミールキットなど、垣根を超えた取り組みはコロナ禍でより一層多様化したと考えられます。
このことを消費者側から見れば、多様化するCX(顧客体験価値)に対し、便利で使いやすい選択肢が大きく増えたことになります。
一方、飲食店にとっては、こうした多様化は“ライバルが増えた”という解釈ができ、多様な食の選択肢の中で「いかに選ばれる店になるか」「飲食店ならではの価値をどう創るか」が課題となってきます。 コロナ禍の営業自粛要請の中、飲食店はデリバリー、テイクアウト、通販など商品提供のカタチを多様化させました(“提供態”と筆者は呼んでいます)が、そのことが食の多様化をさらに加速させ、消費者に多様な選択肢を認識させたことは間違いないと思われます。
―「時代」と「世代」
「世代」が消費に与える影響は大きい。
図は「世代」による仕事・生活、メンタリティー、食の行動について、キーワードをまとめたものになりますが、今の市場では下記の大きく3つのブロックで考えることが有効と考えています。
①団塊世代、ポスト団塊世代、バブル世代
社会人として好景気の時代を謳歌することが出来た世代で、消費で幸せが買えた時代を生きてきました。人口増加、経済成長のもと、大企業や有名ブランドといった世の中が認知する“良いもの”が比較的はっきりしており、皆がそこを目指し、エネルギッシュに働き、消費をしました。
②団塊Jr、ミレニアル世代前期→(まとめて氷河期世代とも呼ぶ)
社会人となる頃には景況が急転悪化(氷河期世代と言われる所以)停滞する経済は格差を生み、将来不安からの自己投資も盛んになった世代。①の先輩達が謳歌しすぎたバブル的消費にアンチテーゼと憧れを両面持ち合わせており、堅実消費とご褒美消費を賢く使い分ける、インターネットによる情報収集は皆が普通に賢くこなし、ブログ、SNSといった自己表現手段で個を発信し、“多様性”を認める価値観が育ちました。
③ミレニアル世代後期、Z世代
物心がついた頃には日本の景気は停滞しており、またグローバルな情報が日々あふれる中育った彼らは、“多様性”を重視し、ソーシャルグッドに高い関心を持っています。
デジタルネイティブ世代とも言え、デジタル化に対するリテラシーが高く、あふれる情報から必要な情報を得ることに長け、DXなど合理的な考え方に共感度は高いでしょう。
―SDGs 若い世代になるほど高いソーシャルグッドに対する意識
SDGsは環境問題だけではく、平等や他者支援など多くのキーワードを持っていることはご存知の通り。
外食においても、商品だけでなく、マネジメント、PRなど企業活動全般においてSDGsの考え方に則った取り組みが重要となってきています。
若い世代になるほどSDGsへの関心は高く、消費者としてだけでなく従業員としても関心・問題意識は高いと思われ、ますます重要度が増すといえるでしょう。
―過去の歴史に見る大きな影響
こうした「世代」は過去にも外食市場に大きな影響を与えてきました。
図は過去に起きたブームやトレンドを、その当時の消費者の世代・年齢と比較して表したものです。
これを見ると、ファミレスがブームとなった1970年代後半では、人口のボリュームゾーンである団塊世代が「若いニューファミリー」、1990年台の居酒屋ブームでは団塊世代が40歳代、バブル世代が若手社会人、団塊Jr世代が大学生…といったように飲酒人口が多いという背景がありました。
2008年のリーマンショック以降の景気低迷下、居酒屋ブームを支えた世代は年齢を重ね、インディペンデントな食シーンを求めるようになりました。
このように食の市場と世代は密接な関係を持っていることが、過去の考察からもわかると思います。
では、これからの市場の主役となる世代は誰なのでしょうか?
―これからの消費の主役 団塊Jr、ミレニアル世代、Z世代~デジタル技術へのリテラシーが高く、合理的~
これからの「消費の主役世代」は「団塊Jr」「ミレニアル世代」「Z世代」になることは間違いありません。
彼らは、リテラシーが高く情報の感度と選別に優れ、デジタル技術を使ったサービスをすぐに使いこなし、合理的なサービスを受容する世代。
こうした消費の主役世代に向けて、飲食店オペレーションのあり方も変わっていくべきであり、順番待ちシステム、セルフオーダー、キャッシュレス、セルフレジ、配膳ロボットなど飲食店DXに対する理解度、受容度は高いと考えられるのです。
外食産業側の変化はどうでしょうか?
外食産業から少し視点を広げてサービス業=「toCビジネス」で起きていることを見てみましょう。
図はtoCビジネスで今起こっていることをまとめたものになりますが、予約や注文、オンラインでの購買・コンテンツ提供、顧客接点、バックヤードシステム、物流など、様々なビジネスの工程でデジタル化が進み、消費者も急速にこうしたサービスのあり方に順応してきているはずです。
また、従業員もこうしたテクノロジーを活用した“合理的な”やり方に対し順応し、期待を持っていると考えられます。
―「本当に人でやることが価値なのか?」
これまで従業員=“人”によって行ってきた業務に対して、それが「本当に人でやることが価値なのか?」という問いをすることが必要になってきているのではないでしょうか?
「♪今は従業員で問題なくやれているからよい」という店も、5年後、10年後、本当にそれが良いのか?こうした問いを改めてすることが飲食店の未来を創っていくことに繋がります。
予約、注文、配膳、下膳、会計。「合理的に」考えたら、例えば、「早ければ」「機械でやれれば」「客が自分でやれば」その方が良いという業務はあるかもしれません。
―消費者の価値観変化=従業員の価値観変化
消費の主役世代交代は、イコール“働く人々の世代交代”とも言えるでしょう。
日々、SNSでコミュニケーションし、SNSで商品サービスの評判や評価を見て、ネットモールやアプリでモノを買い&飲食店や美容院を予約、ネットで最新のニュースに触れる。こういう生活が40代以下では当たり前。彼らが従業員として「この仕事は機械でやったら楽なのに、効率が良いのに…」と考えることは容易に想像ができます。
従業員の共感、納得感という意味でも、改めてテクノロジーによるオペレーション改善を検討することに意義はあり、その検討の結果を従業員が共感する形で説明しきることがさらに重要となるでしょう。
「需要」減少×「供給」コスト増加×消費者の価値観変化
いわば三重の構造で、外食産業の競争環境は変化しています。
業態や価格帯によっても「価値」の在り方は異なりますが、構造的な課題に直面した今こそ、「価値」を再検証し、過去のやり方、成功体験から脱却し、デジタル技術を活用した新たな店舗運営モデルを検討すべき時に来ていると思います。
「世代」は「時代」によって育まれ、「時代」は「世代」によって創られます。
「世代」に適した店舗運営を検討すべき「時代」に入ってきたのではないでしょうか?
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