

サッカーがつなぐまちづくり|女川町とプレミアリーグU-11が取り組む震災学習プログラム
公開日:2025.09.03
最終更新日:2025.09.03
宮城県女川町は牡鹿半島の付け根に位置する小さな港町です。2011年3月11日、最大20m近い津波に襲われ壊滅的な被害を受けました。あれから10年以上、町は再生への歩みを続けています。その象徴が「スポーツによるまちづくり」です。全国から少年サッカーチームが集う「プレミアリーグU-11チャンピオンシップ」では、震災の記憶と教訓を伝える学習プログラムが実施されています。サッカーを通じ女川に集った子どもたちは何を見て、聞き、感じたのか。今年の大会を通じてその思いをお届けします。
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各都道府県の代表チームが女川町に集結

宮城県女川町に、全国の少年サッカーチームが集まりました。夏空の下、子どもたちは声を掛け合いながら全力でボールを追いかけます。
2025年7月31日から8月1日にかけて、女川町総合運動公園では「アイリスオーヤマ 第10回プレミアリーグU-11チャンピオンシップ2025」が開催されました。2015年に創設されたこのリーグは、年間5,000試合以上が行われる小学生年代の全国大会で、各都道府県の代表チームが決勝大会に集います。2022年からは女川町が主会場となり、今年で節目の10回目を迎えました。
2025年7月31日から8月1日にかけて、女川町総合運動公園では「アイリスオーヤマ 第10回プレミアリーグU-11チャンピオンシップ2025」が開催されました。2015年に創設されたこのリーグは、年間5,000試合以上が行われる小学生年代の全国大会で、各都道府県の代表チームが決勝大会に集います。2022年からは女川町が主会場となり、今年で節目の10回目を迎えました。
女川町とU-11チャンピオンシップとの「出会い」

なぜ、少年サッカーの最高峰の大会が女川町で開催されているのか。その背景には、女川町ならではの熱い思いがあります。
同大会はもともと関東地方で開催されていましたが、参加チームの増加に伴い新たな開催地を模索。その候補地として名乗りを上げたのが女川町でした。複数のグラウンドや宿泊施設を備えるだけでなく、震災からの復興を「スポーツによるまちづくり」と重ねる町の姿勢に、実行委員会は共感したのです。
同大会はもともと関東地方で開催されていましたが、参加チームの増加に伴い新たな開催地を模索。その候補地として名乗りを上げたのが女川町でした。複数のグラウンドや宿泊施設を備えるだけでなく、震災からの復興を「スポーツによるまちづくり」と重ねる町の姿勢に、実行委員会は共感したのです。

プレミアリーグU-11実行委員長 幸野健一さん
実行委員長の幸野健一さんはこう語ります。
「復興にかける町の強い思いがありました。全国大会を行うなら、地域に歓迎され、応援される場所であることが重要だと考えました」
「復興にかける町の強い思いがありました。全国大会を行うなら、地域に歓迎され、応援される場所であることが重要だと考えました」

プレミアリーグU-11東北実行委員長 隅田翔さん
また、女川町議会議員であり、プレミアリーグU-11東北実行委員長を務める隅田翔さんにもお話を伺いました。
「女川町は震災前からスポーツ観光、スポーツ振興に力を入れてきましたが、震災でその歩みを止めることを余儀なくされました。ですが、グラウンドなどのインフラ整備が進むにつれて、再び『スポーツによるまちづくり』を進められるようになったのです」
この取り組みを支えているのが、宮城県に本社を置くアイリスオーヤマです。2019年から大会のメインスポンサーとして参画し、地域や次世代を育む活動を後押ししています。被災企業として震災の経験を胸に刻む当社にとって、この大会は単なるスポーツ支援ではなく、子どもたちを通じて震災の教訓を全国へ伝える取り組みでもあります。
「女川町は震災前からスポーツ観光、スポーツ振興に力を入れてきましたが、震災でその歩みを止めることを余儀なくされました。ですが、グラウンドなどのインフラ整備が進むにつれて、再び『スポーツによるまちづくり』を進められるようになったのです」
この取り組みを支えているのが、宮城県に本社を置くアイリスオーヤマです。2019年から大会のメインスポンサーとして参画し、地域や次世代を育む活動を後押ししています。被災企業として震災の経験を胸に刻む当社にとって、この大会は単なるスポーツ支援ではなく、子どもたちを通じて震災の教訓を全国へ伝える取り組みでもあります。

「全国的な知名度と信頼を持つ企業がスポンサーについたことで、リーグ全体のブランド価値は大きく向上しました。特に、宮城県に本社を構える企業が女川町での大会を支援することに、単なる協賛を超えた意義を感じています」(幸野さん)
子どもたちが語り部から聞く「震災の記憶」

大会と並んで大切な柱となっているのが「震災学習プログラム」です。全国から集まった子どもたちが女川町の震災遺構や語り部の話に耳を傾け、命の尊さと防災の大切さを学びます。震災を経験していない世代に、命の尊さと防災の大切さを伝える取り組みです。

一般社団法人「健太いのちの教室」代表理事の田村夫妻
今年の震災学習プログラムで子どもたちに語りかけたのは、一般社団法人「健太いのちの教室」代表理事の田村夫妻です。夫妻は、2011年の東日本大震災で当時25歳だった息子・健太さんを津波で亡くされた体験をもとに、「命を守る行動」の大切さを伝えています。

講話では、震災当日の銀行での状況が語られました。地震直後、高台までは走れば1分の距離にあったものの、上司の判断に従って屋上へ避難。その結果、津波にのまれ、行員12人とともに命を落としました。「自分の命を守るのは自分。指示を待つのではなく、自ら判断して動く勇気を持ってほしい」と夫妻は強調します。
さらに、「命は自分だけのものではない」というメッセージも子どもたちに伝えられました。家族や友人、地域とつながる命だからこそ、一人ひとりが大切にしなければならない。その思いは「日常は当たり前ではない」という気づきへとつながります。
さらに、「命は自分だけのものではない」というメッセージも子どもたちに伝えられました。家族や友人、地域とつながる命だからこそ、一人ひとりが大切にしなければならない。その思いは「日常は当たり前ではない」という気づきへとつながります。

田村夫妻の言葉は、単なる防災教育を超えて「自分はどう生きるか」「社会とどう関わるか」を考えるきっかけを与えます。実際に講話を聞いた子どもたちからは、「震災は自分が生まれる前の出来事だけど、学んだことを家族や友達に伝えたい」といった声も寄せられました。
震災の教訓から生まれた「女川町のまちづくり」

また、同プログラムでは、女川町観光協会の阿部さんから「まちづくり」についての話もありました。

女川町観光協会の阿部真紀子さん
女川町は震災後、住まいを高台へ移し、にぎわいを海辺に集約する“コンパクトシティ型”を採用。「住む場所は守り、商業は再生できる」町を再構築しました。

女川駅から続くプロムナードは“日の出”を正面に望む設計。再生と希望の象徴として人々を町の中心へ導きます。ここでは毎年3月11日に「幸せの黄色いハンカチプロジェクト」が開催されており、訪れた人々が書いたメッセージ入りのハンカチが掲げられ、町全体を希望の色で彩ります。今回参加した子どもたちも思い思いの言葉をハンカチに記し、未来への願いを託しました。

阿部さんは「防災は特別なことではなく日常の延長にある」と強調。実際に津波警報での避難経験を通じ、家族や仲間と「どこに逃げるか」を話し合う大切さを伝えました。悲しみの記憶を伝える一方で、「女川に来て楽しかった、また訪れたい」と思ってもらえるように――。命を守る学びと、未来への希望を重ねた女川の挑戦は今も続いています。

10周年を迎える2025年には、記念としてスペインタイル絵付け体験も実施。各チームのエンブレムタイルを作成し、焼きあがった作品は商店街に飾られる予定です。

エイドステーションでは、駅前商店街の協力で地場産の揚げかまぼこやかき氷が振る舞われ、参加者は思い思いに味わいながら地元との交流を楽しみました。
震災を全国各地に「語り継ぐ」大会の価値

このプレミアリーグU-11という大会には、ユニークな特徴があります。それは、1試合に必ず全員が出場するという「補欠ゼロ」の特別ルール。SDGsの理念でもある「誰一人取り残さない」社会を目指す観点から、試合に出られない子がいない仕組みにしているのです。保護者からは「この大会で息子が初めてピッチに立つことができて、本当に喜んでいます」といった声も多く届いており、その子どもたちの笑顔が大会の原動力にもなっています。

震災の悲しい記憶に触れるだけでなく、サッカーを通して存分に自分を表現し、「楽しかった!」「また来たい!」という体験を持ち帰ってもらうこと。それも、大会関係者が大切にしている思いです。女川町で過ごした時間が子どもたちの心に温かい記憶として残り、家族、友達、学校の先生に、その記憶を自分の言葉で伝えてくれることを願っています。
アイリスオーヤマも震災で被災し、その教訓を胸に歩んできました。だからこそ、命の尊さと防災を次世代へ伝えるこの取り組みに共感しています。
女川町と「プレミアリーグU-11」のパートナーシップによる挑戦は、これからも続いていきます。子どもたちの声援と笑顔を力に変えながら、未来のいのちを守るための大切なメッセージを発信し続けていく。アイリスオーヤマも、その取り組みを支援し続けていきます。
アイリスオーヤマも震災で被災し、その教訓を胸に歩んできました。だからこそ、命の尊さと防災を次世代へ伝えるこの取り組みに共感しています。
女川町と「プレミアリーグU-11」のパートナーシップによる挑戦は、これからも続いていきます。子どもたちの声援と笑顔を力に変えながら、未来のいのちを守るための大切なメッセージを発信し続けていく。アイリスオーヤマも、その取り組みを支援し続けていきます。