アイリスLED照明インフォメーション Vol.19

  • 変化対応できる 体制づくりを

  • 大山健太郎 アイリスオーヤマ株式会社
    代表取締役 社長
    大山 晃弘

1978年、宮城県仙台市出身。2003年、アイリ スオーヤマに入社。執行役員ホーム開発部部 長、IRIS USA INC.チェアマンなどを経て2018 年7月に代表取締役社長に就任。現会長・大山 健太郎は実父。

新型コロナを振り返って

まず、1月に中国の子会社から新種の肺炎が中国国内で流行りつつあると一報を受けました。その情報を受けてマスクの需要が高まると感じ、大増産を始めました。ちょうど中国の春節(大型連休)を迎える時期 でしたが、中国政府の要請もあり当社では マスクの生産を行うことができました。そうしているうち中国でマスクの資材が不足する状況を迎えました。この状況下で中国のみでの生産は一定のリスクがあると感じて いたところ、3月に日本政府から「日本での生産はできませんか」と要請があり、助成金も利用できるとのことから国内でのマスク生産に着手しました。日本国内でのマスク生産の開始、中国工場での大増産を経 て、日本国内へのマスク供給数増という面 では、日本社会に一定の貢献ができたと考えております。新型コロナ第一波で得た教訓として、やはり日ごろからアンテナを高く張って情報を収集する、大きな変化・危機 に際しては即断即決が重要ということを改 めて感じました。

過敏になりすぎず 変化対応できる体制を整える

今年、さまざまな情報が錯綜しました が、判断で大切にしていたことは何でしょ うか。

ニュースではさまざまな情報がありまし たが、基本的にはエビデンスがある情報を 取得していくこと、あまり過敏に反応しすぎないことを大切にしました。たとえば社員の働き方では、当社もリモートワークを導 入しましたが、社員全員がずっとリモート ワークするというのは行きすぎだろう、かと いって満員電車で通勤し続けるのも良くな いと考え、部署ごとにリモートワーク率を定めるなどして、社会がどう変化しても対応で きるような対策を心掛けました。

常に危機は訪れるつもりで 備えておく

今回のように経済の動きが滞り、生活 が一変したことは過去になかったと感じま すが、いかがでしょうか。

コロナ禍以前からですが、常に危機は訪 れるという心づもりでいます。振り返ってみれば、2008年のリーマンショックは経済の危機、2011年の東日本大震災は自然災害でした。今年の新型コロナウイルスは健康 面の危機で、今後どうなるのか予測は尽き ません。しかし何らかの危機は訪れるとい う考えのもと、日ごろから備えておくことが 重要だと思います。ですので、私はコロナ禍で価値観や暮らしの大転換が起きたとは感 じておりません。冷静に考えれば、以前から唱えられていたことがコロナ禍をきっかけに加速したと言えます。例えばリモートワークに代表される非接触型の経済活動は何年も前から唱えられていました。それが今回 のコロナ禍によって一気に普及したというこ とです。マスクの着用、時差出勤などもそう です。ある日突然、全く異なる価値観が異次 元からやってきて取って代わったということではありません。今回、当社はマスクの国内 生産や、映像解析で発熱者を検知できるAI サーマルカメラの発売など、早々にコロナ対策をすることができました。おかげさまで多くのお客さまにも喜ばれておりますが、これは新型コロナ発生後に開発しだしたのでは なく、それ以前から手掛けていたためにい ち早く対策を打てたのだと思いますし、普段 から業種業態にこだわらず事業を展開し、 リスクヘッジに取り組んでいたことが一定の成果を上げたのだと思います。

不織布マスクは2007年から事業を展開していたことで、 コロナ禍でも素早く増産・国内生産ラインの立ち上げに踏み切れた。

判断基準は 「生活に密着しているか」 「勝ち目はあるか」

新規事業への参入、新製品開発において は、当社は“生活提案型企業”として「生活に密着しているかどうか」を重要視しています。特に今回のような社会危機においては生活に密着している商品の需要が高まりま す。逆に、生活に直結していない不要不急な もの、高級品などは買い控えで需要が下が る恐れがある。当社が生活に必要なものに集中しているのはこうした狙いもあります。また、以前から可能性が叫ばれていたIoTや AIカメラなどの新技術の分野には積極的に投資をしていく方針です。コロナ禍以前から 着手していた分野ではありますが、当社ではさらにこの分野の技術開発・事業展開を推し進めていきたいと思います。

非接触で発熱者を検知するAIサーマルカメラ。2020年初 めからAIカメラ事業に取り組んでいたため、素早い商品 供給が可能となった。

もう一つの判断基準は、「勝ち目があるか どうか」。何でもかんでも新しいものに飛びつくのではなく、生活に密着しているか、当社の強みを生かせるかを考えて判断しています。たとえば、コモディティ化が進んでいる分 野入しても勝ち目が薄いのは目に見えて います 。まだ改良の余地があり、お客さまが 新しい 製品・サービスを適切に評価してくれ る。そ のような分野であるかどうかを大切にしてい ます。  た 、過剰な投資をしない。新商品開発に おいて も工場建設や製造ラインの立ち上げ に20億、30億円かかる事業がありますが、うまくリスクヘッジしながらあまり初期投資が掛からないようにしています。スモールスター トが切れる新規事業かどうかを注意深く選 んでいます。「すぐに着手できるか」、「その分 野で勝ち目があるか」を大切にしています。  そして、アイリスオーヤマの強みは、業種業態にこだわらないこと、それを支えるイン フラがあるということです。物流体制や開発 組織、中国の工場を中心とした生産能力など、他の企業に比べて多種多様なものづくりができる体制が整っている点が変化に対応できる当社の強みだと思います。

生活・顧客ニーズに必要な ものづくりを大切に

当社では家電製品や生活用品、LED照明、 IoT事業など多種多様な事業を展開しています。バランスを取るために大切しているのは、やはり「生活に密着しているか」ということです。世の中には、当社が取り組んでいる事業 のほかにも派手な事業分野はたくさんあり ますが、こうした分野はニーズの移ろいや浮 き沈みが非常に激しいという側面がありま す。当社はもともと生活用品を開発・製造していた会社ですので、これからも生活に根差 した事業を展開したいと思っています。法人 向け事業の領域であっても、顧客ニーズに即した商品・事業であることを大切にしています。LED照明であれば、どの施設の天井にもあるベース照明を中心に開発・販売していま す。ビジネス環境がどう変化しても必要とさ れる品揃えを中心にして、過剰な高級品を作 らないようにしています。

ビジネスと世論のバランスを 意識して情報収集

バランス感覚には情報収集が重要ですが、 メディアはどのように活用されていますか。

新聞はもちろん読みますが、SNSはトレン ドをつかむために活用しています。新聞は経営者として経済の動きやほかの経営者の方々の情報を得るために購読し、SNSは一般の方がどのようなことを考えているのか 把握するために利用しています。この2つの 流れのどちらか一方に偏ると、そちらが間 違っている場合に判断を誤るリスクが高ま ります。そのためには、さまざまなメディアに目を通すように心がけており、たとえば 書籍は、歴史など大きな流れをとらえる、ま たは現在活躍されている方の考え方を理 解するために使っています。

コロナ禍でネット通販が伸長。アイリスグループでは 20 01年から公式通販サイト「アイリスプラザ」を運営。 2万5千点を超える品揃えと柔軟な物流体制が支えます。

オフは一生活者として過ごす

オフの時間はどのように過ごしていますか。

運動は定期的にフィットネストレーニング などをしています。あとは家族と過ごすのがリラックス方法です。休日は家族と料理などを楽しんで過ごしています。また、なるべく家事はやろうと心掛けており、園芸やペットの 世話などをすることで、できるだけ生活者に なろうと過ごしています。その中で生活者視 点での気づきが得られることもあります。

社会が抱える問題を 解決するのが使命

おかげさまで、当社のブランド価値は年々 高まっています。裏を返せば社会的な責任が増しており、さらに社会全体に対する目配りが必要となります。そのため、社会が抱える問題を解決することがアイリスオーヤマ の使命だと感じています。社会全体が抱え る問題にこれまで以上に意識を高く持ち、 今回のマスク国産化や東日本大震災後の節 電需要に応えたLED照明事業のように、少しでも問題解決をお手伝いできるように尽力 していきたいと思います。社会や暮らしに何 らかの問題が生じたり曲がり角を迎えた時は、ビジネスチャンスととらえることもできますので、商品開発・供給、ソリューションなどを通して、みなさまの問題解決をお手伝いで きる会社でありたいと思っています。

予測できない変化に 対応するため 常に余力を残しておく

これから新型コロナウイルスがどうなる か、社会全体がどのように変わっていくのかは私にも分かりません。経営上の心構えとしては、常に情報を収集しながら社会がどう動いても即断即決ができるような体制を常 日頃から整える、このような状況に会社を導 くことが重要だと思います。そのために必要 なのが総合力で、変化に対応するために開 発、物流、製造などさまざまな部門で余力を残すことが大切です。常に100%フル稼働な ど効率ばかりを追い求めず、社会の変化に 直面したときにどれだけ余力を持って臨め るかが重要だと考えます。

これからの若い世代にもメッセージをお願 いします。

今後、日本は人手不足・働き手不足がさら に顕著になり、働き方はどんどん変わっていくはずです。これまでのような、仕事に100%力を注ぐという働き方ではもはや世界で通用しません。一人ひとりが社会人であり 家庭人であるという意識のもと、うまくバラ ンスを取って働いてください。上司や先輩を 気にしすぎず、個人として腕を磨いて成長し ていただきたいと思います。

予測できない変化に対応するポイント
常に危機が訪れるつもりで備える
アンテナを高く張って情報を収集
効率を優先せずに余力を残しておく
新規事業・新製品開発のポイント
生活に密着しているかどうか
勝てる分野・強みを活かせる分野か
過剰な投資はしない

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